ひとりの男は、小さく身じろぎしてまぶたを開けた。


「・・・よぉ。目ぇ覚めたかよ」


髪の赤い男が、ニヤリと笑いながら今しがた意識を取り戻した男を見た。
見渡す限りの闇の中で、その男の赤はよく映える。


「ここはどこだ、・・・"サソリ"」


赤髪の男―――サソリは小さく笑った。
つーかお前、服脱いだらそんなのだったんだな、と関係ないことを言う。
男はわずかに眉をしかめた。翡翠色の瞳がサソリを睨む。


「お前も強く願ったんだろ?―――"角都"」


角都はなにか思い当たることがあったのか、何も答えずに視線を外して辺りを見渡した。


「"飛段"はどこだ。あいつも死んだだろう」
「あいつは死なねぇよ。正真正銘の不死身だからな。てめーが一番よくわかってんじゃねぇか」
「・・・」


まぁ"終わった"がな。

サソリはひとりごちた。
角都はため息をつく。
あいつはいつまでも厄介者だ。"死にきれていない"飛段を、"こちら"につれてきてやらなければ、"二度目"はない。


「まぁ・・・それはオレの役目じゃねぇ。角都、お前だ」
「・・・最後まで世話をかかせるヤツだ」
「そんなあいつと長く一緒にいたのがお前だ。諦めな」


角都は黙って立ち上がった。


***


暗ぇ。
一生なれることはねぇだろう、暗闇の中で、それでもオレは目を閉じることができなかった。
いい加減暗闇にも飽きてきたな。
ウザくてもこーゆーとき、隣に角都がいればバカな言い合いのひとつやふたつ、できたのによぉ。


『いつまで寝てる。いい加減目を覚ましてとっとと死ね』


・・・あーあー。
なんか角都の幻聴まで聞こえてきやがった。クソ。こんなんオレが角都だいすきみたいじゃねぇかよ。
別に嫌いじゃねぇけど、まあ今さらどうでもいいか。


『バカが』


へーへー、その言葉は聞きあきたよ。
どうせオレはバカだよ。

あー久遠に会いてぇー。


『だからさっさと死ねと言っているだろう・・・!』


・・・はあ?
意味わかんねぇよ、オレは死ねねーんだよ、角都、お前が一番よくわかってんじゃねーかよぉ。
なあ?


『・・・願え』


願えってなにをだよ。
動けねぇオレにこれ以上なにしろってんだ。


『このまま終わるつもりはないだろう』
「・・・!」
『願え。わかっているのだろう?』


・・・なあ、久遠。
オレはよ、お前がオレ達の前に現れてから、幾度となく願ったぜ。
お前がこの世界のモンじゃねえって聞いて、ますますな。

オレがいた湯隠れの里、「戦を忘れた里」みたいに、平和な世界でお前といれたらってな。

こんなのオレが願うなんて、お前に会うまでは有り得なかったんだぜぇ?
だからよ、


『わかったらさっさと死ね』
「・・・・・ぉ、ぅ・・・」


まぁ、待っててやるからよぉ。
なるべく早く来いよな?

オレ、お前のこと、大好きだからよ。な?

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