悪くはなかった
不死身ってのも、考えもんだな。
首が胴体から離れても死にゃしねぇ。いつもならなんとも思わない、オレ自身の手が有り得ないところにある、それを目に留めて、久遠はこんな光景を見て大丈夫なのかよと思う。
きっと大丈夫じゃなくても、あいつは笑ってるんだろうな。
バカみてぇに、へらへら、苦しくても哀しくても。
「オレが信じてんのは"火の意志"だ」
手から視線を外して木ノ葉の男がいる地上を見る。
雨が降っているのか、頬に雫が落ちた。逆光で、もうひとつの影の顔が見えねぇ。
ぽた、ぽた。
雨がやまねぇ。
"飛段と角都は不死身コンビだから、死なないよねぇ"
バーカ。わかってたくせによぉ。
んな哀しそうな顔で言われたら、バカでもわかっちまうだろうが。
けど、死なねぇよ。オレはお前が言うとおり、不死身だからな。
「・・・飛段、」
ぽたり。
だから、いい加減泣き止めって。な?
オレお前の涙にだけは弱ぇんだよ。笑ってろって。
どーせサソリにも言われたんだろ?笑えって。
「・・・笑えよぉ?」
「っ、ん・・・!」
ああ、見えねぇ。
どーせなら最期くれぇ、あいつの笑顔を見て終わりたかったんだけどなぁ。
こうなったら意地でも這い出て、またあいつのもとに戻ってやるしかねぇよなぁ。
まあ、待ってろって久遠。
こんなもん、オレの強靭な歯にかかれば大したことねぇからよ。
岩が降ってくる。
小さな久遠の影が見えなくなる。
最後に岩と一緒に落ちてきた雫が、オレの目尻をつたった。
んー、まぁ、悪くねぇ終わり方だな。
「久遠ーーーっ!!!」
「っ、飛段!」
「またなぁーーーっ!!!」
真っ黒になった視界が開けたとき、次に見るのはあいつの笑った顔がいい。