あるのは終わりだけ
オレよりちっちゃくて、よく笑うやつはなんだか新鮮で、妹がいたらこんなのなんだろうと柄にもなく考えたのは、久遠に出会ってからほんの数日。数日しか経ってねぇのにそれを感じさせられた。
久遠は可愛かった。
変態なとこも含めて、オレはこいつが、いとおしいと感じた。
笑顔を守りてぇと思った。そんなのははじめてで、よくわかんねーけど。
オレなりに、バカな頭を働かして行動したつもりだ。
賞金首を狩った。
三尾を封印した。
久遠に見せたらいけねぇ。わかってた。でも久遠は無表情に、首を横に振った。
そのときの久遠が最高級に可愛くなかったのは、一生忘れねぇ。
あんな面にしたのがオレ達だってのは痛いほどわかっていても、だって、止められねぇ。止めちゃいけねぇんだ。
歯車は、狂わされることなく、回らなくちゃいけねぇ。
オレだってそれくらいわかってる。どうしようもねぇことはこの世にいくつも存在するんだ。
「飛段と角都は不死身コンビだから、死なないよねぇ」
「あ?つーか殺せるなら殺してほしいぜホント」
「案ずるな。そのうちオレがお前を殺してやる」
鷹が青空を舞う。
オレと角都の手を握っている久遠が、空を仰いだ。
何人も裁いてきたオレの汚ねぇ手を、久遠は包み込むように握り直す。
「久遠はじっとしてろよぉ?」
「オレ達の傍から離れるな」
オレは死なねぇ。
オレに"死"はねぇ。
あるのは、"終わり"だけだ。
影が、動いた。