見せたくなかった。聞かせたくなかった。
残酷で血塗れた忍の世界を。残忍なオレ達"暁"の冷酷な言葉を。

黒い布を久遠にかぶせてその体を引き寄せる。片耳をオレの胸板に押し付けて、もう片方の耳もオレの手で塞いだ。
こいつは、なにも言わずにされるがままでオレの服を握り締めた。
片手だが、ヒルコは十分に操れる。

久方ぶりに再会したチヨバアは、すっかり老いぼれていた。
だがそんなババアでもこのオレを赤砂のサソリと謳われるまでの腕に仕上げた、れっきとした忍だ。手は抜けないし、抜くつもりもない。

そう思い繰り出した仕込みも、たやすくかわされてしまった。


「チィ、小娘まで避けるか・・・」
「サソリさん、それ、ヒルコの尾にチヨバアさんのチャクラ糸っ、ぎゃあ!」
「、!」


気づいたなら早く言いやがれこのバカが!と言いながら小娘の渾身の一撃を避ける。
絶対防御を誇ってきたヒルコが一撃で静められ、若干の苛立ちが募った。
腕の中にいる久遠が、粉々になったそれを見て小さく震える。殺意がわいた。

オレが見てぇのはこんな震えるこいつじゃねぇ。バカみたいに笑う、あの屈託のない笑顔だ。それを奪うってんなら・・・


「さーて・・・そう簡単にいくかな?チヨバア様よ」


それがオレの肉親だろうが弱っちい小娘だろうが、容赦なんてしねぇ。

歳を取っていないオレの外見に、チヨバアが息を呑むのがわかった。
いつも通りの手順で人傀儡に仕立て上げる。永久の美こそが芸術だ。


***


オレの傍から離れんなよ。

サソリさんはそう呟いて、完全に足手まといなあたしを庇いながら戦った。
二対一、それも足手まといのあたしというオマケつきで、それでもチヨバア+サクラに引けをとらないサソリさんは、やっぱりすごい。

場違いにも興奮してよだれが出そうになったのをなんとかこらえながら必死でサソリさんにしがみつく。

離れないよ。離れません。何があっても絶対に、離すものか。
サソリさんと過ごした日々を、思い出にしないために。
サソリさんが本当に、冷たくなってしまわないように。
アジトに帰ったとき、笑顔でただいまが言えるように。


「・・・終わりだ」


毒が回って動けないサクラに向けて、サソリさんは「使うことはない」と思われた三代目の人傀儡が牙を剥く。

刹那、それはヒルコ同様粉々に粉砕された。

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