任務帰り。
アジトの近くまで来た私とイタチさんの間に会話はない。
別に気まずくもなく時は過ぎていく。案外、イタチさんと組んだのは間違いではなかったなんて思っていることは秘密だ。

結界をすり抜けてアジト内に入る。
同時に、バタンと荒々しい音がし、次いでドタドタとなにかがこちらに向かってくる音がした。
軽く顔をしかめる。
こんな無遠慮な走り方、あの女しかいない。

久遠は私達がいるのに驚いたのか、口を半開きにして立ち止まった。
目に溜まっていた涙が、するりと彼女の頬をすべって落ちる。
慌ててそれを拭った久遠は、取り繕うように笑顔を浮かべた。


「久遠、来い」
「、え、あ、いやあの・・・はい・・・」


おずおずと近づいてきた久遠の手を引き、イタチさんはそのまま彼女の背中に手を回す。
私も無意識に、久遠の頭を撫でていた。
笑う久遠は見慣れていても、涙を流す久遠は見たくない。
久遠はバカみたいに笑っている姿の方が似合っているのだ。
理由がなんであれ、私の私欲でしかないが、泣いている久遠は見たくない。
だが、泣くのを堪える久遠はもっと、見たくない。


「っ、く・・・!」
「泣いておけばいい。お前は無理をしすぎる」


イタチさんの低い声が、さらに久遠の涙腺を刺激するのだろうか。
久遠はイタチさんの胸に顔を押し付け、私の服を握りしめながら声を押し殺して泣いた。

久遠が泣くなんて気持ち悪いですねぇ、とわざといつも通りの口調で言えば、小さく黙れ鮫と嗚咽混じりに返された。
珍しく、怒りは沸いてこなかった。
ただ、あまりにも小さい久遠に、何故か笑みがこぼれた。


「・・・とりあえず、部屋に行こう。話したいのなら話せばいいし、嫌なら何も言わなくて構わない」
「それはイタチさんにお任せします。私は疲れました」


服をつかむ久遠の手をやんわりとほどいて、自室に向かう。
小さくありがとうと呟いた久遠に、また笑みをこぼしながら。

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