そんなに大きくないあたしの体が、これでもかというくらいの力で抱きしめられる。
勝手にいなくなんな心配して気が狂うかと思ったじゃねーかこのブス、バカ、アホ、ドジ、おたんこなすがぁ!!と言いながらぎゅうぎゅうとあたしの体を締め付ける飛段に、あたしは一言ごめんと謝った。まさかこんなに心配してくれてたとは思わなかったから、素直に嬉しい。
そしてあの角都までもがあたしの頭を撫でてくれたものだから、調子に乗って角都にも抱きつけば案の定調子に乗るなと今度は頭をぶたれた。地味に、いや盛大に痛い。
殴られたところをさすっていると、グンッと腕が引っ張られて悲鳴を上げる暇もなくまた飛段の腕の中に収められてしまった。
過保護な飛段おにーちゃんは、それはそれは心配して人の目も気にせずにあたしの名前を叫び続けながらそこら中を探しまくった、と角都が思い出すだけでも嫌になったのか、眉間にしわを寄せながらため息混じりに教えてくれた。
マジかと半信半疑な眼差しを角都に送るけど、この骨が折れそうなくらいに締め付けられるのが証拠なんだろうなとすごく嬉しくなってついにやけてしまった。
すかさず鬼鮫が気持ち悪いですよとつっかかってきたのを軽くスルーして、もう一度飛段にごめんと謝っておいた。
ずっと傍観役に徹していたイタチ兄さんがなにを思ったのか、あたしの頭を撫でてくれたからびっくりしたのと嬉しいのとで顔を綻ばせていたとき、地面からにょきにょきとアロエ・・・ゼツが現れた。
ピンポイントで今日は白のパンツかと呟いたゼツの顔をそのまま踏み潰す。
巻き添えをくらった黒ゼツがなにかブツブツ言っていた。ごめん黒ゼツ。
心配したんだよ〜と全然心配してなかったような口調だったからそのまま意を伝えれば、バレたかとてへぺろしたゼツの顔を今度は白い方だけ踏み潰した。けど、どうあがいても一心同体な黒ゼツも地面とご挨拶する形になってしまう。ごめんよ黒ゼツ、君に罪はない。
あんまり足上げないほうがいいよ、パンツ丸見えだからと嘯くゼツにそろそろこいつ本気で殺そうかと飛段の背にある鎌に手を伸ばそうとしたとき、見慣れた赤と黄色がこっちに向かってくるのが見えた。
察したイタチ兄さんが、角都の助けを借りて飛段を引き剥がしてくれる。
あたしはそんなふたりにお礼を言って駆け出した。


「サソリさんっ!!デイダラ!!」
「っ!」
「久遠っ・・・!!」


突進する勢いで抱きついたにも関わらず、あたしをしっかりと受け止めたサソリさんが飛段に負けないくらいの強さで抱きしめてくれた。
そのすぐ横でデイダラがあたしの髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
嬉しくて嬉しくて、嬉しくて嬉しすぎて、あたしは少し泣きそうになった。
そして思い出した。デイダラの肩に深く刺さったクナイ。
サソリさんの腕の中で見えたデイダラの肩口は、血は止まっているものの思わず目をそらしたくなるような深い傷になっていた。
あたしの視線に気づいたのか、デイダラが珍しくこんくれー忍なんだから日常茶飯事だ、うんときゅん死にしそうな勢いの笑顔を見せてくれた。デレか、とうとうデレきたのかっ!!?っていうノリは空気を読んでやめておいた。せっかく生きて帰れたのにここで殺されたら笑えないしね。

なかなか離してくれない(めちゃくちゃ嬉しいけど)サソリさんの腕から名残惜しいけど抜け出して、傷が痛まない程度にデイダラにも抱きつく。
怪我をしてない方の腕で、デイダラもおそるおそる抱きしめ返してくれた。やっぱりデレてるよね今のデイダラ。くっそう写真撮りたいこの貴重な光景!!!
心底悔しかったのは秘密だ。

そのうちもういいだろ戻って来い久遠とあたしを呼んだ飛段だけどすぐに任務が入っただらなんだらで、泣く泣く角都に引きずられながら消えていった。ぐっない。

ふいにサソリさんと目が合った。
頭を二回くらい叩かれて、あたしは心からサソリさんに感謝した。

明日にはアジトの場所を変えるらしい。

みんなと居られるならどこでもいいや。

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