当たり前の事。 「祐希、朝だよ」 「ん…、もう少し…」 「遅刻するよ」 「大丈夫…」 こんな感じで俺達の朝は始まる。小学生の頃から続いているけれど、祐希は一度も自分で起きた事がない。 ギリギリに起きて、もたもたと朝ごはんを食べる。 「祐希、早く食べないと間に合わないよ…」 「んー…」 「後、パン屑こぼし過ぎ…」 「んー…」 言った所で直らないから、落ちたパン屑を拾ってあげる。祐希は俺がやって当たり前だと思ってる。 だらだらとご飯を食べて結構時間も危ないのに、歯磨きだってのんびりしてる。 「悠太、この歯磨き粉、美味しくない…」 「仕方ないじゃん、母さんが安かったって言ってたんだから」 「次に買う時は安さより味を重視してもらわないと」 「ていうか、喋ってないで早く磨きなよ。時間ないよ。後、寝癖」 「あー、じゃあ、俺は急いで歯磨きするから、寝癖は悠太やって…」 「…………」 確かにこのまま歯磨きと、寝癖直しを待つ時間はない。仕方ないからヘアスプレーを吹き掛けて髪を梳かす。 遅いのは祐希なのに、当然のように自分の身支度を手伝わす。自由で我儘な弟。 別に嫌ではないけど、もっとしっかりして欲しいと思う。 歯磨きを終えて寝癖も直して、鞄を持って靴を履く。 「祐希、踵踏んじゃダメだよ」 「あー、うん…」 面倒臭そうに靴を履き直す。そんな顔をするなら始めからちゃんと履けばいいのに。 少し不機嫌になったかと思えば、歩道にでると俺の肩に縋ってくる。 「重いよ、祐希」 「いーの、いーの」 「早く歩かないと遅刻するよ」 「悠太くん、頑張って俺を引っ張って下さい」 「もう……」 歩き難いし重いけど、何度言ってもやめてはくれない。 その上遅刻しそうなのに、俺に急いで引っ張って行けって結構無茶ぶりだと思う。 そんなこんなで、やっと学校に着いて、なんとかHRにも間に合った。 「お前、朝から疲れてなんな」 「まあ、手のかかる弟がいますから…」 「だろうな。噂をすればお出ましだぞ」 「悠太ー…、国語辞典貸してー」 「昨日準備しときなって言ったのに…」 「だって、漫画入れたら入らなかったんだもん」 「学校では勉強して下さい……」 一時間目が始まる寸前、要との会話に割って入ったかと思えば忘れ物。 俺がいるから大丈夫だって何時もそう思って平気で何でも忘れてくる。 辞書がないと困るだろうから、とりあえずロッカーから辞書を取り出して貸してあげる。 でも、その辞書は昼休みになっても返ってこなかった。 「祐希、辞書は?」 「あー、引き出しの中」 「5時限目、使うんだけど」 「じゃあ、後で取りにきて」 昼食と食べながらの会話。借りた癖に、取りに行くのは俺なんだと思う。 要が「お前が返しに来いよ」なんて言ってくれてるけど多分無駄だろう。 食べ終わって放ったらかしの祐希の弁当箱を自分の分と一緒に片付けながら溜息を零す。 「なんだか、悠太くんって祐希くんのお世話係ですよね」 「あー、俺も思う!ゆっきーってゆうたんいないと何にもできないって感じじゃん」 「ちょっと、千鶴、それは心外です。俺だってやる時はやりますよ」 「お前がやる時って漫画とゲームの事くらいだろうーが!」 「えー、悠太ー、要がいじめるー」 「でも、本当の事だよね」 「うっわ…悠太まで…」 「とりあえず、辞書返しに来て下さい」 と、話の流れで少しお灸を添えてみけど、やっぱり辞書は返ってこなかった。 仕方無く祐希の所へ出向いて辞書を返してもらう。 5時限目、6時限目の授業も無事に終わって、放課後になる。 要や春、千鶴はそれぞれ用事があるとかで帰りはバラバラだった。 「悠太、本屋に寄ってもいい?」 「え、また?昨日も行ったばっかりでしょ…?」 「今日は別の新刊とアニメージャの発売日なの」 「…いいけど、お金貸さないよ」 「えー、悠太、今月お小遣い余ってないの?」 「まだ、余ってますけど…祐希に貸す為に余ってるわけじゃないし」 「俺なんて余ってすらいないないんだよ…」 「自業自得でしょ」 「悠太つめたーい」 「…………」 俺が悪いわけではないと思うけれど、どうして文句を言われなくてはいけないのだろう。 辞書もそうだけど、祐希に貸して返ってきた試しがない。と、いうか、お礼すら言われた事がない。 俺がやって当たり前。俺がして当たり前。春が言っていた「お世話係」本当に祐希はそう思っているんじゃないかと不安になる。 「祐希……」 「ん…?」 「危ないっ!!」 「え…」 祐希に本音を訪ねようとした所で、大きな叫び声が聞こえた。その声に振り返った時には校庭から飛んできた野球のボールが俺の目の前に迫ってきていた。 避けられない。当たる事を覚悟した。そしたら、次の瞬間…バシッと鈍く当りの強い音が響く。ボールは祐希の差し出した手に握られていた。 かなりの豪速球だったのに、素手でキャッチするなんて、何を考えているのだろうか。 「ちょっと、祐希、手!」 「え?あー、いいよ。それより、早く本屋行こう」 キャッチしたボールをその辺に放り投げ、何事も無かったかのように俺の手を引いて歩きだす。 ボールを掴んでいた手は痛むに違いない。少しだけ手をぶらぶらとさせて痛みを紛らわしているから。 「祐希…大丈夫なの?」 「うん、悠太こそ大丈夫?」 「俺は大丈夫だけど、祐希が…」 「そう、良かった。悠太の綺麗な顔に怪我なんてされたら、俺、嫌だし」 「…………」 振り返りもせずに、当たり前のように俺の手を引きながら言ってくる台詞。 何、かっこつけてんの、なんて思うけど、なんとなく顔が赤い気がしてそれを隠すように祐希の背中に頭を預けて歩く。 「そう言えば、さっき何か言いかけた?」 「…別に、なんでもありません」 何時も当たり前のように俺に頼りっぱなしの祐希の癖に、当たり前のように俺を守ってくれるから、なんの文句も言えなくなった。強いて言うなら自分の心臓に向かって「煩いよ」って一言だけ。自由で我儘で…ちょっとだけかっこいい、そんな弟だから、きっと明日も俺は祐希の面倒をみてしまうんだろう。 ---------------------------------- えいき様へ捧げます。相互感謝文です。 この度は当サイトのリンクを貼って下さってありがとうございます! *普段うにゃうにゃな祐希の珍しいくカッコいい姿にドキっとする悠太。 というリクだと解釈して書かせて頂きましたが如何でしょうか?;; 祐希がカッコいい事をしているように見えるかが少々不安ですが、悠太は何時もさり気なく祐希に守られているのではないかと書かせて頂きました> < 文章力の無さ、会話文のおかしさは目を閉じて頂けると助かります;; もう、話が成り立っているのかさえ不安なので書き直し、修正はお気軽にお申し付け下さい! こんなつたない文章ではありますが相互として捧げさせて頂きますので受け取って頂けたら幸いです^^ えいき様の素敵なサイト【 イーヴンとオッド 】 申し訳ありません。自分的に少しラストが気に食わず訂正させていただきました。未熟な作品で本当にすみません。 <<戻る |