「雨だねー、馬頭」

「やまないねー、なまえ」


縁側には外を眺める馬頭丸となまえの姿があった。いつも馬頭丸となまえは仲良く外で遊んでいるのだがこの日は雨が降ったため外に出ることができなかった。


「おうちの中だと暇だよねー、暇暇暇ぁ!」

「馬頭、うるさいぞそんなに暇なら鍛錬しろ。なまえもまた来てたのか。お前もそうとう暇人だな。」

「「牛頭!」」


ふぅ、とため息をつく牛頭に遊んでもらえるのではと期待し、キラキラと目を輝かせる馬頭となまえ。なまえは捻目山付近の民家に住んでいる人間であるが、捻目山に入り、迷ってしまった時に馬頭丸に助けられたようでそれ以来ここに遊びにくるようになった。最初は渋った牛頭丸であったが牛鬼がなまえを気に入ったことと、なんだかんだで自身がなまえを気に入ってしまったことから遊びに来ることを許している。


「ねぇ牛頭遊んでよー!」

「俺は暇じゃねぇんだよ!」

「馬頭、なまえよ。ならば、私が代わりに相手をしてやろう」

「「わー牛鬼さまぁ!」」


ニコニコと普段見せないような表情で三人の前に現れたのは牛鬼組の頭である牛鬼。牛鬼は勝ち誇ったような顔で牛頭丸に微笑むと、ちょっと待ったと牛頭丸が口を挟む。


「牛鬼さま、たった今!たった今暇になったのでこいつらは俺が相手しますから!」

「無理はせんでいいぞ牛頭丸よ。馬頭となまえの相手は私がしよう。」

「どうせならみんなで遊ぼうよー」

「そーだよ、仲良く遊ぼうよ!」


馬頭となまえの一言でそれもそうだな、と表面上は幕のおろされた言い合いだが静かな睨み合いは続いていた。


「ねー牛鬼さま」

「なんだ、なまえ。」

「どうしたら雨、止むの?」

「うーん…そうだな、では皆でてるてる坊主を作ろうか。」

「てるてる坊主?」

「あぁ、こうしてな…」


ティッシュを丸め、てるてる坊主を作り始めた牛鬼。それを食い入るように見つめる馬頭となまえを気に入らない顔でさらに牛頭丸が見つめる。


「これで、雨止むの?」

「ああ、きっと止む。これは雨が止むまじないだ。」

「へー!牛鬼さま物知り!」

「でもこの子、のっぺらぼうで可哀想じゃない?」


可哀想、と言ってシュンとするなまえを見てじゃあこうしたらどうだと牛頭丸が筆を握り、のっぺらぼうのてるてる坊主に表情をつける。


「顔ができたー!でも牛頭へたっぴだね!」

「う、うるせぇ!」

なまえの笑顔が自分に向いているのをよしと思い、牛鬼の顔色を伺うと、獲物を横取りされたとムッとしていたのでフフンと微笑む。


「さ、馬頭、なまえ。今度はそれを吊すんだ。」

「どこにですかー?」

「縁側がいいだろう」


キャッキャと縁側にてるてる坊主を吊しにいく馬頭となまえを後ろから牛鬼と牛頭丸は見守る。なんとも、微笑ましい。


「頑張れ馬頭、もうちょっとで届くよ!」

「うー…もうちょっと、もうちょっと…うわぁっ!」

「あっ 馬頭!」


てるてる坊主を吊そうと縁側で背伸びをしていた馬頭が、バランスを崩して縁側の下へ落ちてしまった。幸い高さはなかったため怪我はないようだが、いかんせん、雨が降っていたためビチャビチャになってしまっていた。また、馬頭を追って縁側から降りたなまえもまた雨に濡れてしまっている。


「馬頭!なまえ!大丈夫かっ!」

「「牛頭ぅ、濡れちゃったよう」」

濡れちゃったようなんてまぁ、なんともいやらしい言葉に牛頭丸は固まった。その隙に牛鬼が2人を家の中に入れてやる。


「2人とも、私が拭いてやろうこちらへきなさい」


そこへやっと正気に戻った牛頭丸がもちろん口を挟んでくる。

「牛鬼さまの手を煩わせるまでもないです、俺がやりましょう」

「あんなことで固まる輩には任せられんな、フフ」

「…っ、ではお手伝いをしましょう!なまえは俺が拭きます!」

「いやいや、なまえはまだ嫁入り前の身だ。若い男には任せられん」

「お言葉ですが牛鬼さま、世間は牛鬼さまのような人をロリコンと呼ぶんですよ」

「ほう、ならばお前も同じだろう。」








「寒いねー、なまえ」

「そうだねー、馬頭」

「僕が拭いてあげるね」

「じゃあ私も拭いてあげるね」


そう言って、馬頭丸となまえはかわりばんこに互いをタオルで拭きはじめたがなまえをめぐる口論を激しく行う牛鬼と牛頭丸がそれに気付くことはなかった。


「ラチがあきませんね!こうなったらじゃんけんしましょう!」

「臨むところだ!それ、じゃーんけーん…」



ぽんっ、と2人が出したのはパーとチョキ。チョキを出したのは牛頭丸であり、また勝利したのも牛頭丸であった。「よっしゃ!」と、うなだれる牛鬼をよそにさあなまえを拭こうと振り向いた時には既になまえの髪は乾き、着物も馬頭丸のものを着せられて、あろうことか布団まで敷いて眠っている。思わず無言になるが、目の前にはすでに眠っている馬頭となまえ。なんとも愛らしい光景にうなだれる牛鬼も顔をあげその様子を大切そうに見る。


「我々も、横になろうか牛頭丸よ」

「そうですね、牛鬼さま」




















雨の日のおまじない
―みんな仲良くなりますように!


















その後、どちらがなまえと添い寝するかをめぐって再び口論が始まったのは言うまでもない。


















***


海神さまキリ番リク、
牛鬼組でほのぼのでした!

こ、これってほのぼの!?
ちょっとわかりません。
海神さま、すみません!

今回得たこと。
とんまはほのぼの向いてない!

大人気ない牛鬼さまに
苦戦する牛頭。
2人を書くのは楽しいです。
牛鬼さまがロリコンだったら
激しく萌えるのは
私だけではないはず…!


リクエストしてくださった
海神さま、
本当にありがとう
ございました!


海神さまのみ
お持ち帰り可能です。