――――なまえ…


んー…なんなのよ


―――おい


まだ眠いんだっつの




「起きろっつーの」






この時間にしては非日常な声に驚き重たい瞼が静かに開く。目の前には牛頭がいて。なぜか私の上にまたがり腕をくんで偉そうにしている。確かに今日は牛頭とデートする約束だが、なぜうちにいるのだろう。というか、なぜそこに?意識がまだはっきりしない中いろいろな疑問が湧き起こる。おーい、と目の前で手を左右させる牛頭。私は自分がぼーっとしていたことに気づき、ハッとする。ようやく寝ぼけタイムが終わったようだ。


「…おはようございます」

「おう、おはよ」

「牛頭さん、なぜそこに?」

「お前を起こすためだ」

「ではなぜうちに?」

「それはな、雨が降ってるからだ」


窓の外を見るとたしかに雨が降っている。今日は公園でもいこうかと予定していたがこの天気では行けない。だからうちにきた、と。


「それにお前はどうせまた寝坊してくると思ったから起こしにきてやったんだ」


感謝しろよな、と牛頭は得意げに言う。牛頭とは3ヶ月程前に出会った。着物を着てスーパーで買い物をしてる牛頭がとても珍妙で、私から声をかけた。それから仲良くなって彼が妖怪だと知った。少し驚いたが、私はその類のものは必ずいると信じてたのでむしろ嬉しかった。牛頭はかなりツンツンしてる。私はなぜか惹かれていって想いを伝えたところどういうわけか牛頭も私の事を気に入ったらしく、2ヶ月前、晴れて恋人、という関係になったのです。


「なまえ」

「なあに」

「早く起きろ」

「牛頭がそこどかないと起きれないんだよ」

「頑張って起きてみろ」

「いや 無理だからね牛頭さん、なんなら起こしてください」

「ったく サービスだぞ!」


牛頭が私の両脇に手を入れぐいっとひっぱる。上半身だけ起きた状態。牛頭と私の顔はかなりの至近距離にある。牛頭がじっと見つめてくるもんだから私もじっと見つめ返す。数秒見つめあったあと牛頭は少し顔を赤らめてフン、と視線をそらした。


「ほ、ほら顔洗ってこい…」

「あっれー牛頭、顔が赤いよ熱があるのでは?」

ニヤリと笑いながら言うとバシッと叩かれた。とりあえず言われた通り洗面所へ足を運ぶ。顔を洗い終わり、鏡をみると旋毛付近に寝癖があった。まあいいか、とお母さんが用意したおやつを持ってそのまま部屋へ引き返す。


「おまたせおまたせー」

「お前なぁ、寝癖くらい直せっていつも言ってるだろ」

「嫌だよ面倒くさいねぇ、牛頭がなおして!」

「お前は世話がやける奴だよな…」


ほら、こっちこいと手招きされ、牛頭の近くに腰をおろす。そして牛頭はすぐそばに転がっていた櫛とスプレーを拾い、私の髪をとかしはじめる。彼は世話好きな面があり、こういうことをよくしてくれるのだ。それがわかっているから、彼にやってほしくて私は寝癖をわざと直さない。牛頭に髪を触られると、くすぐったいがいい気持ちになる。ふと足元に目をやると昨日買ったばかりの雑誌が転がっていて、私はそれを手にとり読み始めた。読み始めると、止まらないのが雑誌だ。そのまま読みふけった。


「なまえー、それってそんな面白いのか?」

「……んー、」

「そいつら顔が妖怪みたいだな」

「……うん」

「お前話聞いてっか?」

「……あぁー、ん」

「聞いてないだろ?」

「……うん」


牛頭の動きが止まった。あ、やばい、変なとこで返事しちゃった?


「…ほら終わったぞ」

「あ、ありがと…」


牛頭は一瞬私を睨んだかと思うと立ち上がってテレビの前へ向かい、ドスっと大きな音を立てて座った。そして腕をくみそのままテレビを見始める。あちゃー、怒らせちゃったか。今月三度目のケンカです。でもまあ、ほっとけばなおるかななんて思ってまた私は雑誌に目を向ける。数十分後、雑誌を読み終わりそっと牛頭に目を向けるとさっきと変わらない格好でテレビを見続けていた。少しイラっとしたが、どう考えても私が悪いので謝ることにした。


「牛頭ー、ごめんー」

「…ああ」

「まじ、ほんとごめんって」

「…んー」

「ごーずー…」

「……」


なんだかすごく悲しくなる。ああ私同じこと牛頭にしちゃったんだと深く反省した。あまりの悲しさに耐えられず牛頭のほうへ歩み寄る。それでも牛頭は体制を少しも変えない。


―ギュッ


私は牛頭の背中に抱きつく。


「牛頭さん。」

「なんだ」

「ごめんなさい」

「…わかりゃいんだよわかりゃ」


牛頭は体をこちらに向け、泣きそうな私をみてやれやれ、と頭を撫でる。


「お前は本当に世話がやける奴だ」


そう言うと、牛頭は顔を近づけてくる。数秒見つめ合い、牛頭が私の唇に軽くキスをした。そして、そのまま私の体は牛頭に包まれる。


「なまえ…」


ギュッ、と力強く、でもどこか優しい抱擁。切なく発せられる牛頭の声に胸が苦しくなる。いつも、ケンカのあとはこうだ。何度も何度もキスを重ね最後のキスの後に彼は恥ずかしがりながら小さな声で、でもしっかりと私の目を見て言ってくれるんだ。


「愛してる」って。


















きっとずっと。
―お前がいるだけで幸せなんだよ


















「牛頭、もっかい言って」
「何をだよ」
「愛してるって」
「ばっ////言うか!!!!」











********
じゃれあいリクだったのですが
なんだかゲロ甘に
なってしまいましたorz
依緒璃さま、すみません…
そこまでじゃれあって
ないじゃんか!
ほんとすみません。。
とんま的に
じゃれあい=激甘
なわけでして。
しかしゲロ甘になるという
なんたる失態/(^o^)\


親愛なる依緒璃さまに
捧げます!