せかせかとたくさんの
妖怪たちが宴会の
準備を進めている横で
私は牛頭と共にそれを
ぼうっと眺めていた。
牛鬼さまは
総大将さんのところへ、
馬頭はどこかへ
遊びに行ってしまったようだ。
猩影くんは…えっと、
どこに行ったんだろう。



手伝うと言ったのだが
客だからと見事に断られ、
することもないので
とりあえず座っている。


「暇だねー」

「暇が一番だ」


しばらくすると、
少し遠目に見たことのある
姿が映った。
向こうもこちらに気づき、
小走りで向かってくる。


「名前!久しぶりですー!」

「氷麗ぁ!」

私の目の前できらきらと
目を輝かせ、元気に
あいさつをしてきたのは
雪女の氷麗。
相変わらずかわいいなあ。

「あっちいけ雪んこ」

「ゲッ 牛頭丸もいたの…」

「いちゃわりーのかよ」

「悪いわよ!」

「んだとコラ」



そして相変わらず
この2人は仲が悪い。
まあケンカをふっかける
牛頭が悪いのだが。



…なんとなく、
なんとなくだが、
牛頭は氷麗と話しているとき
なんだか楽しそうに見える。

それがちょっと
嫌だなあと感じるあたり
私も一丁前に嫉妬を
しているんだろう。

でもそんなこと言えない。
少しもやもやした気持ちになる。

はぁ、私嫌な女なのかな。
なんだか牛頭にも氷麗にも
申し訳ない…。


「名前!」

「…えっ?な、なに!」

いけない、ぼうっと
していたようだ。

「もし暇なら、先に
お風呂に行ったほう
いいですよ!」

「え?でも…」

「逆に今行かないと、
今夜はもう入れないかも
しれないですぅ!」

「そうなんだ、
でも牛頭もいるし…」

「それなら大丈夫ですぅ!
こいつには他のこと
手伝わせるので!」

「なんで俺だけ
手伝わされんだよ!!!!」

「そ、そっか…」

「じゃあ牛頭借りていきますねー!」

「おいコラ!引っ張んな!」


ズルズルと氷麗に
引きずられ、部屋から
出て行く牛頭。



あぁ、なんかタイミングいい。

すごくもやもやする。


本当は牛頭を追いかけたかったが
そうするわけにもいかず。
私は氷麗に言われたとおり
風呂場へ向かった。











「ふぅ…」

風呂から出るとすぐに
さっきまでいた場所に戻り
牛頭の姿を探す。
しかし見当たらない。
どうやらまだ戻って
いないようだ。


「どこで何やってんだろ…」

女の嫉妬ほど、
恐ろしいものはないと思う。
今私が考えている
あんなことやそんなことが
起こっていたら…
いや、こんなの有り得ないね!
牛頭と氷麗だよ!?
有り得ないよね、うん!
有り得ない、有り得ない…。


嫌な想像を振り払いながら、
2人を探す。
どこに行ったんだよもう!


「名前?」

急に後ろから声をかけられた。

「あ 猩影くん」

なにしてんだよ?と尋ねられ、
2人を探していることを教えると
一緒に探してくれると言ってくれた。


「ははーん、名前、
ジェラシーだろ!」

「ち、違うよ!
…とも言い切れないけど」

「ほらやっぱりな!
ったく罪な男だねぇ
牛頭丸くんは。」



猩影くんにからかわれながら
廊下を歩く。
目の前にはいつの間にか
階段があり、
一段一段登っていく。

最後の一段に足をつけた
その時―



「きゃあああああ!!!!」



「「!」」


何やら大きな悲鳴が聞こえた。

これは…氷麗の声だ!

私と猩影くんは顔を見合わせ、
急いで声のしたほうへ向かう。

どうしたんだろう、氷麗…!



「氷麗っ!?」

バンっと勢いよく襖を開けた。


刹那、開けなければよかったと
後悔させる光景が
私の目に飛び込んできた。


「名前…!」

その部屋にいた牛頭が
目を見開いて私の名を呼ぶ。

その牛頭の下には
氷麗がいて。
牛頭に押し倒されたような形で
そこに2人がいた。



「っ…!!!!」

「あ おい!名前!」

「名前!」

牛頭と氷麗が私を呼ぶが
その声はすでに遥か遠く。
私はその場から
逃げ出してしまった。






















嫉妬【しっと】
―愛する人の心が他へ移るのを憎むこと。


















なんで、なんで、なんで…?



わけがわからなくなった私は
何も考えられなくなり、
ひたすら走った。








***


牛頭!氷麗!
一体何があったんだ!
浮気か!許さんry
/(^o^)\

次話、乞うご期待!