「寒いから羽織るもの持てよ」

「あ、うん」


牛鬼さまと馬頭に
原っぱへ行くことを伝え、
私たちは家をでた。


今日は本当に冷える。
そろそろ雪が降る季節だ。
もういつ降っても
おかしくはないだろう。


寒いのは嫌いだが、
寒いほうが星がよく見える。
だから私は冬が好き。

外にでると、
冬独特のにおいを
感じることができた。

そのにおいをたくさん
体に取り入れたくて、
大きく長く酸素を吸う。
冷たい空気が勢いよく
体に侵入し、肺が痛くなる。


手足がとても冷たい。
私の手足はロボットのような
動きしかできなくなった。

自然と、歩くのが
遅くなってしまう。


先を行く牛頭は
私を気づかってだろう、
ちらちらとこちらを
見ながら前へ進む。



「大丈夫か?」

「うん、多分」

「多分、ってお前なぁ…」

「だって手足がもう…
凍っちゃってるよー」

「俺がみたところ
まだ凍ってはいないけどな」



私は牛頭について行くのが
つらくなり、はぁはぁと
軽く息をもらす。
息をはくたびに
周りの空気が白くかわり
寒さを際だたせた。


牛頭と私の距離が
少しだけ開く。


「お前絶対大丈夫じゃねーだろ」

「ちょ…もう少しゆっくり…」

「名前のペースでいったら
夜が明けちまうぞ」

「そこまで遅く
ないんですけど…」



牛頭はくるっと
私のほうに向きをかえ、
こちらに歩み寄ってきた。
そしてなぜか私の後ろに
まわりこむ。



「…お前何キロある?」

「へ?な…って
うわあっ!!!!//////」



絶対乙女に聞いてはいけない
質問をされたと同時に、
私の体が宙に浮かぶ。

上を見上げると、
牛頭の顔が見えた。



「ちょちょちょちょ、
牛頭!!!!//////」


私は自分がお姫様抱っこを
されていることに気づき、
心臓が飛び出しそうになる。



「このほうが速いだろ」

「だ、大丈夫だから!
おろして!重いから!////」


牛頭は無視して再び歩きだす。


「そう思うなら落ちないように
つかまってろ」


「…了解です…////」



重くないのかな、と
心配をしながらも
牛頭の衣服にしがみつく。



今日の牛頭はとても優しい。
なんだか王子様みたい。

そんなことを考えていると
牛頭がふと私を見た。

タイミングがよすぎて、
心を読まれたように思える。
私は思わず真っ赤に
なってしまった。
今日は月夜で、
もう原っぱが近く、
影になるものはない。
互いの顔がよく見える。


「なっなんでそこで
照れんだよ!!!!//////」


私が照れたのが
伝わったようで、
牛頭まで照れてしまった。


「だ、だって…!!!!////」



と、言いかけた所で
牛頭は歩くのをやめた。
どうやら原っぱに
到着したようだ。




「あ…牛頭ありがとね、
おろしてくれる?」

「だって、の続きは?」

「え…///なんでもない!!!!」

「言わねえと降ろさねえぞ」

「ぬー…/////」



牛頭が私を抱えたまま、
視線が重なり合う。


恥ずかしさから
私の顔は真っ赤になり、
少し涙が出そうになる。
しかし言わないと
降ろしてもらえないため、
言う覚悟を決めた。


「…今日の牛頭ね…、/////」

「うん」

「なんかね…、/////」

「うん」

「王子様みたいだなぁって
思って…/////!!!!」

「………」


沈黙が流れる。
なにも反応されないのも
それはそれで恥ずかしく、
私から再び口を開く。

「な、なんか反応してよ…///
てか、言ったから降ろし…」

降ろしてと言い終える前に
私の体は地上に降ろされる。




と同時に牛頭が私の体を
包み込んだ。
苦しいほどに強く
抱きしめられている。
















「…っ///ご、牛頭?」










「…好きだ。」







え?

牛頭の口から
何と発せられたのか
聞き取れたと思うのだが、
それが牛頭の口から
出たものだとは思えず
ポカンとしてしまう。





「…牛頭さん、今なんて…」

「だから、お前が好きだって
言ってんだよ」

「…す、好きって、like?love?」

我ながら、アホな質問だ。

「…異国語はわかんねえよ」



あたふたする私をよそに、
牛頭は話を続ける。
もちろん、体勢はかわらず
抱き合ったままだ。
そのため、牛頭の顔を
みることができない。



「俺はお前を小さい時から
ずっと見てきた。
いつからこの感情が
あったのかはわからねえが
もう抑えらんねえ。」




私は心の中でなにか
あたたかいものが
溢れ出したような気がした。




―私も、想いを伝えたい。






「あ、のね 牛頭…。」

「ん…」

ギュッと牛頭の
私を抱く力が強くなる。



震える手を
牛頭の首にそっと巻きつけ、
震える声で
牛頭の耳元でそっと囁く。




「私も、好き。大好き。」



とうとう、想いを伝えられた。
そして、ようやく繋がったのだ。


私は嬉しさのあまり、
涙が溢れる。



「…っふ、ぇ」

牛頭は私の肩をつかみ
顔が見えるくらいまで離す。

「…泣いてんじゃねーよばか」

「…だ、だって…ひぐっ…」

「…ありがとな、
ま、よろしく頼むわ」

「う…ん、」



頬を真っ赤にした牛頭と私。




「名前、こっち向け」


そう言われ、顔をあげる。

牛頭の真剣な眼差しが
私の瞳を見つめていて。

そして段々近づいてくる。



気づいたときには
私の唇に柔らかく
温かいものが重なっていて。
それが牛頭の唇であると
気がつくのに時間はかからなかった。



数秒で離れていく温もり。
しかし目の前で優しく微笑む
牛頭の顔をみると
心が温かくなった。





「さ、星みて帰るぞ」

「うん」


それから数十分程、
私たちは星を眺めた。
その間私たちは手を繋ぎ
目が合うたびにキスをした。


帰り際、さっきまで
憎らしくて
仕方なかった月に
ざまあみろ、と
叫んでやった。


牛頭はそれをみて
お前アホだな、なんて
言うもんだから、
不意打ちで頬に
キスをしてやった。



真っ赤になる牛頭が
かわいくて。
ああ幸せだなあなんて
しみじみ思いながら
来た道を引き返す。







帰ったら、牛鬼さまと馬頭に
今日のこと教えてあげよう。
きっと牛頭はあわてて、
また真っ赤になるだろうな。
















ありがとう
―ずっとずっと、何よりも大切






「名前、もしかして
『この間の奴』って」
「ん?ああ、牛頭のこと。」
「…っ(よかった…)//////」






END






***

あとがき




牛頭丸連載、
これにて完結です!

無事完結できたのは
応援してくださった
読者の方のおかげです。
本当にありがとうございました!
感謝しつくせません!


この連載は、とんまの
妄想から生まれ、
妄想だけでは収まりきらず←
形にしたいと思い、
書き始めた作品です。

キャラが違う!
と思われた方もいるかと
思いますが、
我が家の牛頭はこういう
キャラですのでご了承下さい。


実はこれからも、
牛頭連載は続きます!(爆)
パート2として
この主人公のままで、
付き合った後の2人を
書いていきたいな、と…!!!!

うははー!!!!や
おほほー!!!!な内容で
いけるように頑張ります!




それではこの物語を
読んでくださった方々、
応援してくださった方々に
深くお礼をいたしまして
あとがきとさせていただきます。



2011.03.05 finish