「牛頭ー、馬頭ー!
朝だよ起きて起きて!」


今日は土曜日!
学校はお休み!
YES!お休み!


お休みの日はなぜか
早く目が覚めてしまう。
なんでなんだろう。




「んぅ〜…、名前おはよぅ」

「馬頭!おはよっ!
顔洗ってきたらご飯にしよ♪」

「うん!」



馬頭は元気に返事をすると
洗面所へ小走りでいってしまった。



「元気だなぁ…!
ん、あれ?」


なんか、おかしい。
今のはいつもの光景じゃ
ない気がする。なにか足りない。


あ…、


「馬頭が牛頭より先に
起きてくるなんて…」


いつもは牛頭が先に起きて
いつまでも起きない馬頭を
引っ張り出してくるはずだ。


だけど今日は違う。


「牛頭どうしたんだろ…」


少し心配になった名前は
牛頭丸の部屋へ向かった。



「牛頭〜?入るよ?」


ん、返事がない。
いないのかな…




スパンッ!!



刹那、名前の目の前で
勢いよく障子が開く。

と同時に、目の前には
牛頭丸がいた。



かかかかか顔が近いです
牛頭さん…!!!!/////



ん、あれ あれれ?



「牛頭…?」

「…ぁ?名前か…」


なんだか顔が赤い気がする。
それに息切れをしているし
目がとろんとして
もしかしてこれって…


わたしは牛頭の額に
自分の手をあてる。


やはりそこは熱かった。
間違いなく牛頭は熱がある。


「牛頭!熱がある!
寝てなきゃダメだよ!」

「俺は妖怪だから
大丈夫なんだよ
これは平熱だ」

「どういう言い訳だよ!
とりあえず、寝て!」


ね?と一度だけ言うと
よっぽどつらいのだろう、
あの強情っぱりな牛頭が
素直に布団に戻っていった。


「鴆さんに薬もらってくるから
おとなしく寝てるんだよ?」



んー、と唸るような返事を聞き
わたしは急いで本家へ出かけた。
牛鬼さまによると鴆さんは
今本家にいるらしいから。




***


「ありがとう鴆さん!」

「礼には及ばねえよ
名前の頼みなら尚更な!
まあ名前、酒の一杯でも
飲んでいきな…

「ありがとう鴆さん!
じゃあ失礼します!」


わたしは薬を受け取ると
鴆さんにお礼をしてすぐに
おもてへ出る。
鴆さん、なにか言ってた
気がするけど、今は牛頭が
心配でたまりません!
ごめんね鴆さん!



って雨!?雨が降ってる!!

「どうやって帰ろう…」

「名前か?何をしている
濡れてしまうぞ。」

「あ…黒羽丸…」

三羽鴉の黒羽丸。
わたしが濡れないように
翼で雨を凌いでくれている。

「ありがとう黒羽丸。
だけど休んでる暇ないんだ
わたし走ってくから!
大丈夫!そいじゃ!」

「お、おい!走ってくって
捻目山までか!?」

「そう。牛頭が熱出しちゃって
薬を早く届けてあげたいの!」

「牛頭丸が…」


一瞬、黒羽丸の眉間に
シワが寄った気がしたが
なんでだろう。
まあ今はそんなこと
気にしてられない!
行かなきゃ!


「名前!待て。
俺が連れて行ってやる。」

「え?いや、悪いよ!
黒羽丸も濡れちゃうし
仕事あるでしょう?」

「いや、いいんだ。」

そういうと、半ば強引に
わたしを抱き上げた。

こ、これはお姫様抱っこ…!
不覚にも少しドキドキ
してしまった。



***


牛鬼組への入り口が
見えてきた。

「もうすぐだぞ。」

「うん!」

「牛頭丸…」

「へ?」

門を見ると、牛頭が
門の下に立っていた。


あ、あの馬鹿たれ…!!
熱があんのに雨にうたれて
なにがしたいのよ…!!


黒羽丸は門の近くに
降り立つ。

「ありがとう、黒羽丸!」

「ああ、早く薬飲ませてやれよ」

そういうと、黒羽丸は
飛び去っていった。


「…チッ お目付役かよ…」

「牛頭っ!何やってんの!
なんで外なんか出て…」

「って…から…」

「なに!?聞こえない!
てか早く部屋に…」

「雨降ってきたのに名前が
いつまでも帰ってこねーから
心配で出てきたんだよ!!!!///」


ったく、いくぞ///。

とわたしの手を引っ張る
牛頭の手は
とても熱かった。
顔も赤かった。
きっと熱のせいだよね…?









赤く、火照る。
―それは全部君のせい。








「早く薬飲まなきゃね!」
「…ぃゃ…治ったから…」
「治ってないでしょ!
飲まなきゃだめ!」
「…どーしてもって言うなら
飲ませてみろよ、
口移しで。」
「…んなっ///!!はぁ!?///」