放課後は、綾や他の子、男子数名のいつものメンツで遊んでから帰る。わたし青春してます!JKしてます!いつものようにわたしたちのたまり場であるモクドナルドでおしゃべり大会。
「でさー、しちゃったわけ!」
「まじで!?ちゅうしたの〜!?」
「やたらかっこいいよねー」
どうやら今日は恋バナのようだ。こういう類の話はわたしは苦手だ。
「で!名前は?」
「え?へ!?」
「だーかーらー!好きな人!いるだろ!俺の目はごまかせんぞ!」
好きな人…か。牛頭のことが頭によぎる。その一瞬を友人は見逃さない。
「その顔はすっごく大好きな人がいる顔だな!ほれほれ白状せいっ」
「う…あーいや、その。」
わたしは返事に困った。そのときプルル、と足元の鞄の中から音が聞こえた。
「あ ちょっとごめんね!」
タイミングよくわたしの携帯に電話がかかってくる。助かった!ありがとう!電話をくれた誰かありがとう!そしてその誰かと話をすべく電話にでた。
「はーいもしもーし」
「もしもーし、じゃねーよさっさとそっからでてこい30秒以内ださもなくば蹴る」
「ごごごごご牛頭っ」
タイミングいいー!!!!なにこれ或る意味今日は本当にタイミングいいね!!!!最悪だよもう!!!!あたりを見渡すとモクドナルドの外、ガラス越しに牛頭がこっちをみている。というより睨んでいる。あわわ、なんか怒ってらっしゃる…すぐ帰らねば。
「ごめんみんな!わたしそろそろ帰るよ。」
「えーまだいいじゃん!」
「帰ってこいって言われちゃって」
そう言って、私は店から出ようとした。
「あっ 名前ちゃん!待って送ってくよ!」
あ 田中くん。いや、それはまずいから。
「あ 大丈夫だよ!近いし」
「近くないだろ!危ないから送ってくって!」
はやくいかないと牛頭に蹴られるんですが!!!!はやく帰してください!!!!願いむなしく、田中くんはわたしの手をつかんだ。あわわ、どうしよう…このままじゃ蹴られるっ!
「痛っ…」
てか痛い!田中くん痛いよ!強くつかみすぎだよ!
ガシッ
あれ 痛くなくなったってあれごごごごご牛頭さん!あなた田中くんになにしてるの!いつの間にか牛頭がわたしと田中くんの間に入り込み、わたしの手をつかんでいた田中くんの手をぐりっとひねっていた。
「ちょっ…牛頭!」
「テメー遅いんだよいくぞ。」
わたしは田中くんに一言謝り、牛頭のあとについていった。
「ちょっと牛頭!」
「…チッ なんだよ」
チッて言ったよこの人!いやこの妖怪!怒ってるよなぁそりゃあ30秒とっくにすぎてたもんねまた怒らせちゃったよ…。たまには素直に謝らなきゃね…。
「牛頭ごめんね」
「わかりゃいんだよ」
あれ あっさり許してくれた。
「でも30秒は短いよせめて一分…」
「あ?なんの話してんだ?」
はい?逆に牛頭さんはなんの話?
「わたしが30秒以内に店出なかったから怒ってるんでしょ?」
「はぁー…」
大きなため息をつく牛頭。え、なに。違った?また怒る?あーなんなのさ!
「それ以外に思いつかないのですが…」
そう言うと牛頭がいきなりわたしのほうを向いた。びびびびっくりするよ!!!!
「な、なに…」
「ヤローと茶ぁ飲んでんじゃねーよ。手まで握らせてなに誘惑しちゃってんだか」
「なっ…誘惑…!!!!してませんよー!!!!」
「フン…ほら帰るぞ」
そういって手をさしのべる牛頭。あれ、これって…
「牛頭さん、」
「なんだよ」
「手繋ごってこと?この手は」
「…それ以外に何があんだよっ!!!!早くしろカス名前!!!!」
つまり牛頭はやきもちをやいていたってことらしい。なんか、嬉しいな。
「おい名前」
「なあに?」
「お前のもんは俺のもんだ」
「はい?」
「つまりお前の手は俺のもんだ」
「わたしの手?牛頭の?ん?」
「もう他の男誘惑すんなよ」
「してないー!!!!ってか他?誰の他?どうゆうこと?え?」
「…はぁ お前はほんとに…」
お前(のもの)は俺のもの
―誰にも触れさせねぇよ
「待って牛頭、」
「あ?」
「よく考えたらわたしの手はやっぱりわたしのものだよ!」
「……はいはい」