「ねーえ黒羽丸ー、トサカ丸?」

「は、はい、なんですかなまえ様。」


とある休日の昼下がり、縁側でくつろいでいた俺とトサカ丸の元へなまえ様が近づいてきた。いつにも増して満面の笑み。ああ今日もお可愛らしいなあ、頬が緩むのをぐっと堪えて平静を保ちながらあることに気付いた。なんだか今日のなまえ様の笑顔は、黒い。


「あんたたちねー、謝ることってない?」

「…なまえ様、俺なんかしましたっけ?」

「トサカ丸、自分の胸によーく聞いてごらん?」

「…わかんねえんですけど…。」


なまえ様の笑顔が怖い。俺は恐怖に駆られて自分が何をしたかなんて考えられなかった。それほどに威力のある笑顔だ。黒ささえなければいつもの可愛いなまえ様なのに、そんなことばかり考えている俺はもしかしたらもう末期なのかもしれない。


「捩目山でさ、お風呂…覗いたでしょ?」


ゆらちゃんたちのだけど。そう言ってニッコリと笑い俺とトサカ丸の心臓を跳ねあがらせた。いや、あれは事故だ。馬頭丸があの場にいたから俺たちもあそこに行ったわけであって、決してやましい思いがあって行ったわけじゃない。それにあの場にはささ美もいたしな。俺は決して何も見ていない。ましてや人間の小娘になどこれっぽっちも興味がない。俺が興味あるのはなまえ様だけだし、いやあの、興味っていうかゾッコンっていうかまあうまく説明できないけれどもそんな感じなんだ。だから決してやましいことはない。


「…え?…人間の小娘にゾッコンだって?」

「兄貴、声がダダ漏れだぞ…。」

「ふーん、黒羽丸はそういう趣味なんだ…。」

「えっあっ、いや、違いますってなまえ様!」


なんで重要な部分だけ聞こえてなくて妙な部分だけピックアップされているんだ。ちょ、ちょっとなまえ様?その可愛らしいお手に持っている禍々しいブツは一体なんですか。そんな西洋の武器を持ち出されても困ります。ちょっ、そんなもの持って追いかけてこないでください。追いかけてくれるならできればもっとかわいらしく「待って〜!」って砂浜でじゃれ合う恋人達のような描写がよかったんですけど、この状態はシャレになりませんよ。うわっ危ないってなまえ様!当たる!当たるから!


「やっと捕まえたー。もう逃がさないんだから!」

「いやあの、誤解ですってなまえ様!」

「なにがどう誤解なのさ!人間の小娘にゾッコンなんて、そんな黒羽丸見たくなかった!」

「だーもう違いますって!俺はなまえ様にゾッコンって言ったんです!」

「私にゾッコンなんて言う黒羽丸見たくなかっ…え?」


しまった、つい口が滑った。俺の上で禍々しいブツを振り上げるなまえ様の顔はみるみるうちに赤くなっていっていて、俺もきっと同じ状態に違いない。咄嗟に口を手で抑えたが、時すでに遅し。何をしても無駄だった。


「えーっと、ほらアレです!ゾッコンっていう言葉はそもそも…」

「えーいやかましい!そうやって私から逃げようったってそうはいかないんだから!」


ごまかすつもりだったが、なまえ様はさっきの言葉が俺の本音だという事に気付いていないようだった。良かったと言えば良かったのかもしれないが、なんだか俺は複雑な気持ちになった。まったく、なまえ様は鈍感なんだから。そういうところが可愛いんだけどなぁぁぁぁああああどうしてまた俺は追い回されているんだろう。そういえばトサカ丸はどこに行ったんだ。まあいい。今はなまえ様と命がけの鬼ごっこを楽しむことにしよう。


















だから、違うんだってば!
―いや、違わないんですけど、えっとその。


















「兄貴って可哀想だよなー。な、ささ美?」
「変態兄貴なんかになまえ様は渡さない…。」
「いや、まあ確かに変態だけどさ…。」







***


黒羽丸はいつもこう。
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