「ありがとうございましたー」
現在時刻20:55。1人暮らしの為、お金を稼がなければならない私は放課後、21:00までコンビニでバイトをしている。このコンビニは私の通う学校のすぐ目の前にあるため、学生が多く出入りする。今日も、部活を終えた学生たちがアイスやお菓子を求めてコンビニにやってきた。そんなもんばっか食ってないでご飯たべなさい!と、思わず言いたくなる。ほうら、噂をしてたらまた学生がやってきた。コンビニ独特のチャイムと共に自動ドアが大きく開いた。
「いらっしゃいま…あれ、牛頭」
「あ?…なまえか、
え、お前バイトしてんのか?」
「あーうん、そうだよ。」
入ってきた学生…、それは同じクラスの牛頭丸だった。お弁当袋だけ手にさげて、勉強道具らしきものはまったく見当たらない。しかもお弁当袋にはプーさんがプリントされていて、すごく滑稽だった。
「…何見てんだよ」
「えっ いや、プーさんかわいいね」
「うっせ!見んなアホ!」
『なまえちゃーん、もうあがっていいよー』
「はーい、お疲れ様でしたー」
店長の声に遮られ、私たちの会話は途中で途切れてまった。そのままあがるのはなんだか間が悪いため、牛頭に一言かけてから更衣室に向かおうとした。
「じゃあ、私帰るから…」
「…誰か迎えにくんのか?」
「?いや、歩きだけど。」
「家どこだよ」
「五丁目あたり」
「は!?遠っ!」
私の家はここから歩いて一時間弱ほど。この間まで自転車を使っていたのだが自転車登校許可願いを出さずに学校に通っていたら没収されてしまった。まったく、今時そんなことで自転車を没収する学校なんて他にあるのだろうか。
「しゃーねー、送ってやるよ」
「いや、いいよ!遠いし!もう遅いし!」
「だからだろーが。女子がこんな時間にほっつき歩くな。」
学校で最近不審者が出るから注意しろと言われたばかりだったし、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。急いで更衣室で制服に着替えると裏口から出て、牛頭の待つ駐輪場へ向かった。
「ごめんごめん、お待たせー」
「ほれ、さっさと乗れ」
牛頭はすでに自転車にまたがってコンビニで買ったであろうパピコを頬張っていた。私が自転車の荷台にまたがるとやるよ、と言ってパピコを半分譲ってくれた。自転車のハンドルを上げて(いわゆる鬼ハンってやつ)制服を着崩してるいかにも不良な彼がこんなに優しいなんてだれも思いもしないだろう。私だって、今日知ったもん。掴まった背中がとても温かかった。
「てゆーか牛頭、アンタ部活やってたっけ?」
「やってる、帰宅部を。」
「そーゆーの求めてない。なんで今日こんな遅いの?」
「委員会だよ、委員会。」
「へー、何委員会?」
そう尋ねると、はあ?と返事が返ってきた。何か変な質問したかなあ、と少し考えたが、失礼な質問はしていないはずである。
「テメー同じ委員会だろーが」
「へ!?せ、整備委員?」
「同じクラスなのに忘れんな」
「だって私召集されてないよ?」
「男だけ集められたんだよ、机の整備とかで」
なるほど、それで私にはお呼びがかからなかったのか。こんな夜遅くまで委員会活動をするという目の前にいるちょい悪不良のGAPに少しやられた。
「こんな時間までバイトして親怒んねーの?」
「私1人暮らしだから」
「はぁ、何から何まで危ねえ奴…」
「え?なに?」
「いや、なんでもねえ…」
それから毎晩、牛頭はコンビニにきて私を家まで送ってくれた。パピコを半分ずつ食べながら、適当な会話をして。それが日常化していた。なんで毎日コンビニにくるのか牛頭に尋ねたらパピコが食べたいからだって。本人曰わく、甘すぎなくてちょうどいいらしい。いや、結構甘い気もするけど。
『なまえちゃーん、あがっていいよー。』
「はーい、お疲れ様でしたー。」
21:00ぴったり。いつもなら雑誌コーナーで立ち読みをして私を待っている牛頭が今日は来ていなかった。今日はパピコ買いにこないのかな。最近はいつも送ってくれていたため、牛頭がいないのはなんだか寂しい気がした。だからといってわざわざ呼ぶわけにもいかないし、私はさっさと着替えを済ませコンビニを後にした。
コンビニから出て少し歩いた所で空を見上げてみた。今日は雲がかかっていて月がよく見えない。なんだか急に不安になって先ほどよりも少しだけ速い足取りで自宅へ向かう。
―ヒタヒタヒタ…
さっきから、誰かにつけられているような気がする。何気ないふりをして振り返るとサラリーマンだろうか、スーツを着た男が私の少し後ろを歩いていた。お化けだったらどうしようとか、もしかしたら噂の不審者かも、とかそんなことを考えている間にも段々、その距離は縮まっていく。
「あのぅ、すみません」
「は、はい!」
近づいてきたその男はどうやらお化けではないようだ。私に何か尋ねようと、話しかけてきた。私は、疑ってごめんなさい、と心の中で謝罪をする。
「えっと、なんでしょうか?」
「実は、僕…」
刹那、目の前の男にギュ、と抱きしめられた。男は不気味に笑いながら、私の体をあちこち触ってくる。しまった、油断した。こいつ不審者だった。
「ちょっ、と!離して!」
私がジタバタと暴れ抵抗しても所詮女の力であって男の力には適わない。段々私の思考が恐怖で固まりうまく働かなくなった。声をあげることすらままならない。嫌だ、嫌だ…っ!!誰か助けてー…!!
―ゲシッ
「痛っ!」
「オッサン、そいつ離せよ。」
「ぁ…牛頭…!!」
いつの間にか目の前には牛頭が立っていて。不審者に蹴りを入れ、私を助けてくれたようだ。男は私をすぐに離すと、顔を隠しながらそそくさと走って逃げてしまった。私はそれを見て気が抜けてしまい、その場にへなへなと崩れ落ちる。
「なまえ!大丈夫か!?」
「牛頭ぅー…、怖かった…!」
「わり、もっと早くきてたらな…」
そう言って私に手をさしのべその場から立たせようとする。私はその手をとり、足に力を入れて立ち上がった。
「…送ってく、乗れよ」
「うん…」
そうして、今晩も結局牛頭が送ってくれた。さっきは気が動転していて気づかなかったが、今日の牛頭は制服ではなくジャージだった。
「なんで今日はジャージ?」
「家に一旦帰ったから。風呂で寝ちまってコンビニ行く時間過ぎてた。」
「へー、そうなんだ。」
謎が解けたことだし、そこで会話を終わらせようと話を区切ると、牛頭がため息をついてもう一度口を開いた。
「お前さぁ、なんで俺が毎日コンビニ行くか分かってんの?」
「…パピコ?」
「…まぁいい、じゃあなんで俺が毎日お前を送ってるかわかるか?」
「…!心配してくれてるの?」
「…。じゃあなんで俺がお前を心配してると思う?」
「…なんで?」
「はぁ…。お前って奴は…。」
好きだからだよ―いい加減気付けアホ!
「ま、俺が守ってやるよ」
「牛頭、それ告白?」
「…気づくのおせぇーよ、アホ」
***
はっはっは!ゲロ甘!
ゲロ甘できたゲロ甘!殴
バイトから帰るとき、
暗い道嫌なんでいっつも
牛頭と一緒に帰るという
妄想してます。
そこで思いついた妄想が
この作品です。(/・_・\)
どこまでも鈍い夢主に
少し素直で男らしい牛頭。
いやぁ、たまらん!
学パロは、最高に楽しいです。