見える…俺には見える…大丈夫、やりゃあできる子だ見える…見える…見える…。心の中で永遠とそれを繰り返すがもちろん服の中が透けて見えるとかそんな夢のような能力は残念ながら俺にはなく、なまえの華奢な背中だけが俺の目にうつりつづける。ああ、暇だ。すっげえ暇だ。そもそもこんな変なことをし始めたのはなまえが俺をほったらかすから。馬頭の服が破れたとかでさっきからずっとちくちくちくちくと裁縫をしている。


「そんなん後にしろよ。俺にかまえ。」

「それこそ後でいいじゃんか」


かまってくれと珍しく俺が頼んでいるのになまえは見向きもしない。だから、あんな変な呪文唱えて暇潰してたんだよ。もうこいつと恋人になってどのくらいたつのだろうか。かなりたっていると思うのだがこいつはガードが固い。岩より固い。下手すりゃダイヤモンドより固い。キスまではなんなくたどり着いたがそれ以上はまださせてもらえない。がっついてるわけじゃねーよ?ただやっぱり俺だって男だしそういう気が起きるときだってあるし。まあ、なんだ。要するにそろそろいいんじゃないか。なあ、なまえさんよ。


「牛頭」

「なんだよ」

「そんなにしたいの?」


な、なんだなんだ。俺の心が読めるのかっていうか恥ずかしくないか読まれてるとかこれかなり羞恥ものじゃないのかああうああ。裁縫をやめて、なまえがこちらに体を向ける。きて?と言われその言葉に従い俺はなまえの前に体を移動させた。なまえが己の着物に手をかける。少しずつ、少しずつ。なまえの白い肌が露わになる。ああもどかしい。今俺どんな顔してるだろう。真っ赤だったらかっこわりいな。肩まで着物を下げると胸元を隠すものはブで始まってジャーで終わる、女子特有の下着のみとなる。淡いピンク色のその下着の下にはふんわりとした、でもしっかり張りのある陶器のような、いやマシュマロのような、まあとにかく、アレだ。素敵なものが俺を待っている。さあどうぞ?と言われ俺は唾をゴクリとのみ、その未知なる膨らみに触れた。ああ、なんて素敵な…素敵な…あれ、なんだ意外と固いな…それになんか見た目よりゴツゴツ…ゴツゴツ?なんだかがっかりだ…


「なにががっかりだって?」


あ?と目をあけるとなまえが俺の顔を上からのぞき込んでいた。膨らみを触っていたはずの俺の手の中には石ころ。俺、夢見てたのか。夢でよかったような、残念なような。まあ、ゴツゴツが現実でなくて安心したほうが大きい。俺、溜まってんのかね。


「なんでここに石ころがあんだよ」

「さっき馬頭が綺麗だって言って私にくれたから牛頭に持たせてみた」

「意味わかんねえ」


お前が俺に石ころを持たせたからあんな夢みたんだぞこの野郎。


「なんの夢見てたの」

「教えねーよ」

「ケチ」

「なあ」

「なに」

「お前今日下着何色だ?」

「まだ寝ぼけてるのか」

















ゆめうつつ
―デジャヴ、プリーズ!


















「とりあえず、脱げ」

「そっか、死にたいのね?」











***


寝ぼけてない!
俺はいたって真面目だ!
BY牛頭丸


牛頭丸だって、お年頃だもの。
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