「そーいやなまえさぁ、」

「なーに?」

「いや、やっぱなんでもない。」

「そこまで言ったなら言ってよ!気になるわ!」

「んーと、最近太った?」

「…なっ…!」


衝撃的で、ある意味凶器となる言葉が猩影の口から私の乙女心目掛けて容赦なく発せられた。仮にも私は猩影の彼女であるし、それ以前に一人の女である。もっとオブラートに包んだ言い方をできなかったのだろうか。太ったと言われたことに思い当たるふしはある。最近のコンビニデザートはおいしくてついつい買ってしまうのだ。進化しすぎたコンビニデザートのせいで甘党の私はブレーキのかけ方を忘れつつあった。プリンとか、シュークリームとか、あの値段であのお味なら手を伸ばすのが普通じゃないだろうか。それに加えて大学のサークルでは新入生歓迎会やらなんやらで飲み会が多く行われていて、アルコールを大量に摂取する生活が続いていたから太ったと言われても仕方がないと思う。


「おーい、なまえ?なまえさーん?」

「どーせデブだもん…」

「誰もそんなこと言ってないだろ!女は少し丸い方が愛嬌があって俺はいいと思うけど。」


丸い、なんてひどいじゃないか。そういわれるとなんだか急に自分の顔の面積が広がったような妙な感じがして、それが嫌で両手で自分の頬を押さえつけた。


「ははっ、何その顔。ペンギンみてえ。」

「うるさい!決めた!私ダイエットする!」

「えー、別いいじゃんそのままで。ムッチリグラマーななまえもそれはそれでそそる。」

「そそるな馬鹿!絶対痩せるから!」

「はいはい…で、何ダイエットすんの?」

「そ、それは…」

さて、何のダイエットをしようか。断食ダイエットは続くわけないしジムに行ってる暇もない。無難に炭水化物ダイエットにしようか。いや、でも炭水化物とらないと私多分死んじゃう。頭をフル回転させて考えるが出来る出来ないの駆け引きばかりで一向に方法が決まらない。とその時、横になって私をじっと見ていた猩影が急に起き上がりニッコリ微笑んだ。


「いい方法教えてやろうか?」

「いい方法?」

「そ。まずな、ベッドに横になって」

「横になって?」

「服を脱…」

「却下。帰れ。」

「いや、ここ俺んち!ま、今のは冗談でー、やっぱダイエットは飴と鞭が必要だと思うんだよな。」

飴と鞭?そう聞き返すと猩影は私を手招きし、近くにくるよう指示する。そして体育座りをさせ、その足を猩影が両腕でおさえつけた。この体勢はきっとアレだ、腹筋運動。腹筋弱者な私には過酷な運動である。これが猩影の言う鞭ならば、飴は相応のご褒美にしてもらわねば。


「まず10回な。」

「え 無理!5回にしよ!」

「少なっ!ゆっくりでいいからまず10回やってみろ。」

渋々、それに試みることを承諾し床に背をつけ頭の後ろで手を組む。勢いをつけて一回目の腹筋運動にトライするが45度程起き上がった所で失速してしまった。この体勢が辛いのなんのって。おなかがプルプルと震える。く、苦しい…。10回なんてできるだろうか。


「ふ、ふぬぅぅうぅぅぅ…!」

「こりゃ重症だな…。ほれなまえ、もう少し!」

「や、やめろ!おなか触るな!」

「くくっ…プルプルしてる…」

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」


怒りと辛さに任せ最後の山場をなんとか越すと(最後と言ってもまだ1回目)ようやく上半身を起き上がらせる事ができた。途中猩影におなかを触られて阻害されなければもう少しラクにできたのに。


「よし、大変よくできました。」

「へ?終わっていいの?」

「いやいやダメだけど!なまえには一回一回飴が必要だと思って。」


一回一回ご褒美をもらえるなら頑張れる気がしてきた。一体、飴とはなんなのか。私は猩影がそのご褒美を取りに行くのを待ってみたが私の足元から一向に動く気配はない。


「猩影、ご褒美は?」

「今やるから。ほら、目瞑って」


既にご褒美は猩影の手中にあるのだろうか。何かもらえるのだと思い、猩影に言われた通り目を瞑って胸元でおねだりの手を差し伸べた。










―ちゅ














「…はい、ご褒美。」

「なっ…なっ!!!!」


猩影のくれたご褒美はモノじゃなくて軽い軽いフレンチキスだった。突然で意表を突かれた行為に私は口をパクパクさせてしまう。それを見た猩影は、してやったり!と言って無邪気な笑顔を無防備に見せた。


「ほれ、あと9回だぞ!」

「ちょ、待って!あと9回ちゅうするの!?」

「嬉しいだろ?安心しろよ、全部終わったら深く深ーくちゅうしてやっから!」

「…バカ猩影…っ」







あとから聞いた話。猩影は友達に借りたマンガで読んだこのシチュエーションをやってみたかったらしい。だから私が太ったって言うのも嘘だったし、私はそれを聞いてとても安心した。それにしてもこんなこと真似したがるなんて、猩影はロマンチストさんなんだと新たな発見をすることができた。今度は仕返しに猩影に腹筋運動させてやろうと企む私であった。


















俺流ダイエット
―頑張る君にご褒美を!


















仕返しはもちろん、とびっきりの飴つきで。



















***


葉さまリクエスト、猩影で甘夢でした!大学生設定なんですけど生かせませんでした。申し訳ないです…!猩影夢を書くとなぜかおうちデートに発展します!一人暮らしっていうイメージが強いせいですね。多分、猩影は漫画とかかなり読んでると思うんです。友達に借りたり、某レンタルショップで借りてきたり…。暇つぶし程度のはずだったのにいつの間にか夜が明けてるみたいな!少女マンガとかよんでたら最高にいいです。(吐血)で、今回はなまえさんと腹筋運動からのちゅうでいちゃこかせてみました。腹筋運動するだけで猩影のキスが頂けるなら何度でもします。殴 リクエストしてくださった葉さま、素敵な案をありがとうございました!お持ち帰りは葉さまのみです。
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