今朝は青と白のコントラストがなんとも美しい綺麗な青空だったが昼近くになると、その面影は消え去り灰色のグラデーションがかかった雲が空を厚く覆っていた。やがてポツリポツリと小雨が降りだし今ではザアザアと激しい豪雨が地上に住む生き物たちを襲っている。


「どうする牛頭、止みそうにないね」

「やっぱ小雨のうちに走ればよかったな」


住処である捩目山に帰宅する途中豪雨に襲われた牛頭丸となまえはもうすぐ家だというところで雨宿りをしていた。牛鬼と馬頭丸が本家に出かけると留守番を任された二人は食事の買い出しに出て行ったのだが突然降り出した雨に身動きがとれなくなってしまった。「きっとすぐ止むよ!」と自信満々に言うなまえの言葉を信じ一緒に雨宿りをした牛頭丸だったがやはりこいつのいうことはデタラメだったと半分呆れていた。雨のせいで空気の温度は低くなり、服も若干濡れてしまっているのでなまえが風邪をひかないか心配だ。なまえと恋人同士である牛頭丸は決して口に出したりはしないが心の中ではなまえの心配をしていた。そして雨も一向にやむ気配が見えないので牛頭丸はなまえの手を取ると「走るぞ」と言ってなまえの了解を待たず走り出した。





* * *




「ばか牛頭ぅ!思いっきり濡れちゃったじゃんか!」

「あのままあそこにいたって雨やまなかったぞ。引っ張り出した俺に感謝しろよ。」

「うぅ…。さ、寒い…。」

なんとか家にたどり着いた二人だったが互いに上から下まで濡れてしまっていた。それに気温が下がっているとなると体感温度はさらに下がることだろう。なまえは寒がり細かく震えていた。それを見た牛頭丸は乾いた手拭いで軽く足元の水気を拭き取ると囲炉裏のある居間へ歩んでいった。


「火ぃつけてくるからお前は着替えてこい」

「いや、私つけてくるから牛頭が着替えにいきなよ」


なまえのその言葉に対して俺の部屋の方が居間に近いからと言うとなまえはそれに納得し、自分の部屋にパタパタと小走りで向かった。なまえの通った道に沿って床が濡れているのを見てあれもあとで拭かねーとな、俺が。とため息をついた。囲炉裏に火をつけた後、牛頭丸は部屋へ着替えに行く。洗濯に出してしまい衣服が少なかった為適当な着流しと羽織を着用し居間へ向かう。途中、髪も濡れているということを思い出して少し大きめのタオルを求め風呂場へ寄り道もした。居間の襖を開けると既にそこにはなまえがいて、囲炉裏の前で火に手をかざし、体を縮めて丸くなっていた。なまえは寝巻の浴衣を着ている。牛頭丸はなまえの横に腰をおろすとなまえの頭に先ほどとってきたタオルをのせた。


「それで髪拭いとけ」

「牛頭拭いて」

「はぁ?なんで俺が!」

「今手あっためてる途中だから」

「俺だってあっためたいわ!ったく、ほんとに世話のやける…。」


なんだかんだ文句を言いつつ奉仕をするのが牛頭丸である。なまえがそれを利用したのかそうでないのかは不明だが、タオルを牛頭丸に渡すと拭きやすいよう体を牛頭丸のほうへ向けた。


「雨、さっきより強くなったね」

「走って正解だったろ?」

「悔しいけど礼を言おう。」

「素直に感謝しろよな…。」


ワシャワシャとタオルでなまえの髪を拭くと、シャンプーの良い香りがしてなんだか抱きしめたい衝動に駆られた牛頭丸だったがいかんいかんと首を激しく横に振り自分を落ち着かせていた。今抑えないと、きっと理性が保てなくなってしまうからだ。つくづく男というものは面倒だと心の中でため息をついた。なまえはまだ寒いようで、寒い寒いと何度も呟きながら両腕で二の腕を握りしめていた。着流しの上に羽織を着ている牛頭丸でさえ若干寒気をかんじるというのに、浴衣一枚で寒くないはずがない。


「羽織着ればいいじゃねえか。」

「全部洗濯しちゃったからこれしかなかっ…あ!マズイ!」


何を思い出したのか、なまえは突然スクッと立ち上がるとすごい勢いで部屋から出て行ってしまった。なまえの髪の毛を拭いていた牛頭丸は突然立ち上がられたものだからびっくりしてしまって口を開けて茫然としてしまっている。我に返った牛頭丸は、なまえが一体何を思い出して走って行ったのか予想を立てていた。おそらく、外に干しておいた洗濯物の事を思い出したのだろう。この雨だ、洗濯物は見るまでもなく悲惨なことになっているだろう。今更とり込んだところで悲惨なことに変わりはない。なまえが濡れた洗濯物をこの部屋に持ってこないことを祈りつつ、一つ心配事が頭に浮かんだ。外に出たってことはアイツ…。


「牛頭〜…」

「…やっぱり…。」


牛頭丸の心配は的中した。考えなしに外へ飛び出したなまえがまた濡れて戻ってくるのではないか、と思っていたが、期待通りにそれをやらかしたなまえを見て呆れつつもそんななまえが可愛いのだといわんばかりの表情でなまえを見つめた。唯一の救いは、濡れた洗濯物は玄関先に置いてきたという事だけだった。さすがのなまえもそれはわかったらしい。


「テメー俺がせっかく拭いてやったのにまた濡らしてんじゃねーぞ!」

「仕方ないじゃんか!そんなことより、大変だ。着替えがない。」


今度は自分で髪を拭きながら現在の悩みを相談するなまえ。自分の持っている衣服はすべて洗濯してしまったので着替えがないという。牛頭丸も衣服のほとんどを洗濯に出してしまっていた為なまえに服を貸そうにも現在着ているものしかなかった。牛頭丸は自分の着ていた羽織を脱ぐとそれをなまえに向かって差し出した。


「これ着とけ。前閉めりゃ着れるだろ」

「あ、ありがと!」

「おいばかっ!ここで着替えんな!」

「いいじゃんか今更そんな固い事言うなよ」

「よくねぇ!」


なまえがその場で着替えだした為目のやり場に困った牛頭丸はとりあえず反対方向を向くことでその現場を見ないようにした。恋人同士であるし、実際何度も裸は見ている。が、しかし、今はまだ昼間であってもしそんな気が芽生えようものならところ構わずなまえを襲ってしまうだろう。今はまだ昼過ぎであるしそんな時間ではないということを己に何度も言い聞かせ心を落ち着ける。着替え終わったよ、という声を聞き振り返った牛頭丸の目に映ったのは羽織を丈の短いワンピースのように着たなまえの姿だった。予想よりも刺激の強かったその姿に対抗できる理性など持ち合わせているはずもなくプツンと何かが切れたようになまえに襲い掛かる牛頭丸であった。


















狼さんにご用心
―可愛いすぎるお前が悪い!


















「あーあ、着るものなくなっちゃったね。牛頭が汚すから。」
「あー、その、悪い。」
「寒いからくっついてようよ!」
「〜///っ!(全部コイツが悪い…!)」




















***


那智さまリク牛頭丸で甘夢でした。エロ要素とちょっとギャグちっくにとご要望をいただいたのですが、甘夢というよりはだいぶ後者の二つに近いのではないかと自負しております!ムッフー!死 彼氏の服着て、ダボダボ!みたいなの、大好きです。そしてそれに欲情する牛頭丸、愛おしいと思います。那智さまはよく変態牛頭さんのご感想くれるのですけど、私とものすごく話が合うのです。(笑)牛頭はきっと万年発情期!これ、満場一致なハズ!あれ?違いますか;;;?汗 リクエストしてくださった那智さまどうもありがとうございました!お持ち帰りは那智さまのみです。
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