拝啓誰か様へ
元拍手


拝啓 今は暑いですか?寒いですか?
僕の住んでいる場所はとても暑いです。
突然暑くなったり、寒くなったりと日によって気温の変化も激しく、体調を崩さないように心掛けるだけで精一杯です。
この手紙を読んでる方も、体調管理には十分に気を付けてください。

さて、勝手ながらも少し僕の話を書かせてもらいます。
僕は、物心ついた時には、異性より同性に目が行っていました。
その事がおかしいと気付いたのは小学生の頃
周りは『○○って可愛いよな』『俺、実は○○の事が好きなんだ』と、こそこそと友達同士で異性について話しているのに、僕は何一つ共感することができませんでした。
そして『○○ちゃんより、○○くんの方が僕は好きだな』と何も疑問に思わず言うと、周りからは『何言ってんだよ』『嘘だよな?』『おかしい』と言われ、そこでようやく僕は自分がおかしいんだと気付きました。
それからは自分のおかしさがバレないように口先では『○○さん可愛いよね』と偽るようになりました。
そのおかげで周りから不審に思われることもなく、友達もそれなりに出来ました。
だけど中学3年の春、僕はとうとう友人を好きになってしまいました。
自分がおかしいと気付いてからは、なるべく友達とは一線を引いて接し、好きにならないようにしていたのに、ふとしたキッカケで今までの努力は意味がなくなりました。
本当に些細で、何故こんなことで好きになったのか自分でもわからないが、ただ『お疲れ様。待ってたよ』と
委員会で遅くなった僕を数時間も校門の前でずっと待っていてくれていた友人のことを、僕は好きになってしまいました。
同性を好きになっても報われるはずないなんて最初からわかっていたのに、それでも好きになってしまったら、その想いを止めることができず、ただただ想いが加速する一方でした。

今思えばキッカケはそれでも、元々人を好きになりたくなくて距離をとっていた僕に、その人だけはいつも僕が保っている一線を越えてこようとしてきました。
『明日空いてるか?空いてるなら二人で遊びに行こうぜ』『記念としてお揃いのものなんか買うぞ』『手…、冷たいな。俺の手であっためてやるよ』などなど、キッカケはほんの些細なことだけど、その前から僕は彼を、少しずつ好きになっていたんだと思います。

この想いを彼に伝える気は全くありません。
もし告白して、彼に『気持ち悪い』と拒絶され、二度と口を効いてくれないようになったら、僕は今以上に同性を好きになってしまう自分のことが嫌いになりそうです。
だからこの想いは彼にも周りにも、誰にも言わず、僕が同性が好きだということもバレないように、墓場まで持って行くつもりです。

僕はこの先、異性と付き合い、結婚し、子どもを授かり、他の人と何ら変わりのない人生を歩んでいきます。
まだまだ短い人生ですが、僕は異性を愛することは絶対に出来ないと思います。
けれど、それでも僕は僕のために異性と結婚し、幸せな家庭を作っていかなければなりません。
だからこの手紙に本当の気持ちを全て詰め込み、明日からは何もなかったように、また彼とは一線を引きながらも友達としてやっていこうと思います。

まことに身勝手ながら、貴重な時間を割き、僕の話を聞いて下さいましてありがとうございました。
敬具
平成×年○月△日
×× ××
誰か様






解説
だいぶ過ぎてしまったんですが、5月23日が『恋文の日』と聞いて、甘めの恋文を書こうとしたんですが、甘さの無い質素な恋文?が出来上がりました。

この手紙の行方はどうなるか私自身もわかりません。
誰かに届くかもしれないし、届かないかもしれない。


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bkm
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