怖がりな俺は何も出来ない
今まで俺は至って平凡な人生を過ごしてきた。
親から愛され、友達にも、恋人にも恵まれ、何一つ不自由のない暮らしをしてきた。
それなのに俺は何をとち狂ったのか、同級生の男を好きになってしまった。
好きだという気持ちを必死で否定し、『そんな訳ない。第一俺には可愛い恋人がいるのにありえないだろ…』と自分の気持ちから目を逸らした。
だけど知らんぷりしたはずの気持ちは自分の意思とは反対に徐々に大きくなってしまい、気付けば自分じゃどうしようもないほどに気持ちが膨らんだ。

あいつの事が朝から晩まで頭から離れず、少しでも喋れただけでも頭がとろけそうになる。
自分のことで精一杯で、ほったらかしにしてしまっていた彼女からは愛想をつかされ、別れを告げられた。
それなのに俺は全く悲しまず、むしろ足枷が無くなったと心の端で喜んでいたことに気付き、ハッとした。
自分が自分じゃなくなるようで怖くて仕方がない。
怖い。怖い。怖い。俺は女の子が好きなんだ。あいつなんか好きじゃない。俺はホモなんかじゃない。

自分を否定すればするほどもう一人の自分が『もう素直になってラクになっちゃえよ』と悪魔の囁きをかけてくる。
もう自分ではどうすることも出来ず、自身の秘めていた気持ちを吐露して友達に相談すると「別におかしいことじゃない。好きなら好きでいいじゃないか」と背中を押してくれた。
目の前の靄が消え、そこでようやく自分の気持ちを認めることができた。
背中を押してくれた友達にからかわれつつも、自分の気持ちに素直になった俺は積極的にあいつと一緒に過ごし、あいつの言動に一喜一憂した。
フレンドリーに接してくれるあいつに俺はいつしか期待していたが、その期待はただの俺の勘違いだった。
あいつは誰も好きにならない。あいつは誰も見ていなかった。
あいつが見ているのは昔死んだ恋人だけ。

この気持ちは報われない。絶対に。そう気付いた瞬間我に帰り、また怖くなった。
好きだった気持ちを前以上に殺して、誰も見ていないあいつの背中を追いかけることもやめて、全部全部なかったことにして、
苦しくても辛くても、ただ自分がラクになりたいがために全部を捨てて逃げ出した。



一番の怖がりは俺自身






解説
語り手と『あいつ』は絶対にくっつけません。

男を好きなった自分を否定して、ずっと悩み続けていたが、やっと素直になることが出来て前へ踏み出したが、相手は誰も見ていない事に気付き絶望して『この恋は不毛なんだ』と逃げ出した。


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bkm
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