小話
15歳離れた兄は、俺が物心着いた頃には、もう我が家には居なかった。
唯一写真だけはあり、
『この人は誰なのか』と母さんに聞くと『これはお前のお兄ちゃんだけど、絶対に関わっちゃダメよ』と言われた。
その時は、その意味が俺にはわからなかった。
ふと目が覚めた時、外はまだ少し明るく、下から何か物音が聞こえた。
まだ父さんも母さんも帰ってくる時間ではなく、そろりそろりと足音をたてず、音のする部屋へと行き、覗いてみた。
中には父さんと写真で見た兄が裸で絡み合っていた。
ハッと両手で口を抑え、慌てながらも音をたてず、俺は自分の部屋へと戻った。
数時間して下に降りると、今度はしっかりと服を着た父さんと兄がいた。
先ほどとは違いニコリと笑った顔は、写真で見るより優しそうだった。
その後、帰ってきた母さんは半狂乱になりながら家の物を壊していった。
『なんであんたがいるの?』『帰って来ないでって言ったでしょ』『あなたももう、出て行って』
その日、母さんと父さんは離婚した。
そして僕はあの日見た、父さんと兄さんの光景を思い出しては、何度も自分を慰めた。
過労が祟って母さんは俺が19になった頃に、この世を去ってしまった。
母さんの遺言は『あの子とは絶対に関わらないで』というものだった。
それなのに母さんの葬式をしてから半年後『母さん、亡くなったんだって』と言って兄が我が家に来た。
「俺の事覚えてるか?あの時、お前小さかったから……」
「今更何しに帰ってきた訳?…帰って…」
「兄に対してそれは無いだろう…」
「…母さんに『兄さんとは関わるな』って言われた」
「律儀に死んだ相手の言うこと聞くなんて、良い子だな」
「っ!…触んな」
触らないで、俺はあんたのことが…
『今日から俺もここに住むから。こんなデカイ家に1人は寂しいだろ?』
来ないで…
『小さい頃遊んでやれなくてごめんな』
これ以上俺に近付かないで…
『今度どっか二人で出掛けようか』
やめて、やめて、やめて…
「もう、やめて。俺に…近付くなよ。今更戻ってきて、兄貴面すんな。…お前が全部全部いけないんだ。お前が、家に帰って来なければ…」
「落ち着けよ…」
「触んな!!!…お前のしてることはただの自己満なんだよ。その自己満に俺を巻き込むな。…ようやく母さんの事が落ち着いたのに、これ以上掻き回さないでくれよ」
「…」
「帰れ…帰れよ」
「俺はお前の兄ちゃんだか「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!いいから帰れ。お前の顔なんて、俺は一生見たくないんだよ」」
自分の気持ちに気付きたくない…
母さんがなんで兄を追い出したのか、なんで俺に関わるなと言ったのか…
母さんは俺が兄をどう思っていたのか薄々気付いていた。
だから最後に『関わるな』と言った。
俺は兄さんを、一生恨み続けるよ
完
解説
ある商業誌を見てムカついたので、衝動で書いた。後悔はないがよくわからない結果になってしまった。
兄はゲイ。弟はバイ。弟は兄の事が好き。
『弟のことが好き(家族愛)だから、弟には幸せになって欲しい』と母親が亡くなったと知って、家へやってきた。兄は自己満のお節介野郎。
母親にゲイだとバレて勘当された。
弟に会いたくて家に帰ってきたが、たまたま早く帰ってきた父親に迫られ、合意の上でヤッた。