不思議な関係
小話



自分で言うのは少し恥ずかしいが、俺達は自他ともに認めるバカップルだったと思う。
最初は社内ではバレないようにこっそりと逢引をしていたが、俺のバレバレな行動に周りの奴等にはよく茶化された。



馴れ初めは会社の飲み会で、酒に酔った彼女を介抱してあげたのがキッカケだった。

ほんのりと赤くなっている頬を手で押さえ
「今日はいっぱい飲みすぎて、酔っ払っちゃったみたい…」と言う彼女の志穂を気遣いながら俺はタクシーを呼ぼうとした。
だけど志穂は「岡部さん…。私、まだ帰りたくないの…」と言い、有無を言わさず近くのホテルへと俺を連れてきた。
そこでようやく彼女の意図はわかったが、酒の勢いで致すのは俺の道徳心が許さず、結局何もしないまま志穂と同じベッドで一夜をすごした。
それが志穂にとって余程意外だったのか次の日の朝
「まさか何もしてこないとは思わなかった…。」と驚かれ、そのあと直ぐに「実はずっと前から岡部君のことが好きだったの。ねぇ、付き合って」と言われた。
特に断る理由も思い付かず、結果的には志穂に流され、俺達は付き合い始めた。
あれからもう3ヶ月も経ち、最初は流されて付き合い始めたが、今じゃ俺は志穂にベタ惚れで毎日が楽しみで仕方がなかった。

こんな俺のような冴えない男を『ずっと前から好きだった』と言い、告白をされたが、志穂は俺と違ってとっても美人だ。
そして見た目も申し分ない上に人柄もよく、色んな人に頼りにされている。
『こんな素敵な女性が何故俺なんかを?』と何度も思ったが、その度に俺は深く考えないようにしてやり過ごしてきた。
だからこの状況は予想していたという訳ではないが、心の何処かで『あぁやっぱりな…』と思った。

「初めして…岡部昇さん、ですよね?僕は相川幸也です。皆木志穂の…婚約者です」
「えっ?あっ…は?」
突然弁護士と名乗る人から『皆木志穂さんについてお話があります』と電話がかかり、電話で指定された場所に行くと志穂の婚約者だという長身の爽やかなイケメンさんがいた。

「突然の事で驚いているでしょうが、簡潔的に言いますね。僕は志穂と3年前から付き合いがあり、数ヶ月後には結婚の予定も入っていました…」
「…3年前?結婚?志穂とあなたが…?」
会った時から何故か眉毛をハの字にさせている相川さんは、確かに俺のような冴えない男より断然イケメンで、素直に志穂とはお似合いだと感じた。
しかも3年前から付き合いがあり結婚の予定まであった相川さんと違って俺はまだ3ヶ月。これはどー考えても俺の方が遊びなんだと一目瞭然。

「最初はどんな奴であろうが絶対相手も社会的に潰してやろうと思っていたんです。だけど調べてるうちに岡部さんは何も知らずに騙されていた被害者だと知り、なんとお詫びしたらいいか…」
「お詫びなんて別に…むしろ謝るのは俺の方ですよね。知らなかったとはいえ、人様の恋人とその…浮気していたなんて…」
悪いのはどう考えても自分なのに『すいませんでした』と言う相川さんに俺も『いや、こちらこそ本当にすいませんでした』と謝りあっていると、ハの字にして申し訳なさそうな顔をしていた相川さんは顔を緩め
「これじゃあ埒が明きませんね」と初めて笑った。

相川さんの笑った顔にさっきよりは幾分か緊張がほぐれ
「不躾な質問ですが相川さんは今後どうするんですか?俺は相川さんの話を聞いて、志穂の事あんなに好きだったのになんかもう冷めてきちゃいました」と聞くと、相川さんはまたさっきみたいに眉毛をハの字にさせ、寂しそうに微笑んだ。
「僕は志穂が浮気してるって知った時点で結婚はやめました。ただ復讐はしたいなって思ってたんですけど、それもどうでもよくなりました。…虚しいだけですからね」
そんな相川さんを見た瞬間、何故か俺の胸の奥はキューンと突然苦しくなった。



後から聞いた話だが相川さんは結構な御曹司らしく、このままうまくいけば志穂は玉の輿に乗れていた。
だけど無事玉の輿結婚も決まり、余裕の出てきた志穂は最後に遊んでおこうという軽い気持ちで手当たり次第に男を漁り、遊んでいたらしい。
詳しく調べてみると俺以外との関係も出るわ出るわで目も当てられない結果だったらしい。

婚約が破綻になった原因を知った志穂の両親は、わざわざ新幹線で2時間の距離も厭わず来て、相川さんに何度も頭を下げて謝ったが『きっと志穂さんには僕よりいい人がいますよ』と相川さんは遠回しに復縁はもうないと告げた。
その返事に『もう無理なのか…』と悟った志穂の両親は、志穂を連れて実家へと戻って行った。
話合いでは始終志穂は俯き『ごめんなさい。ごめんなさい。』とだけ小さく呟いていたらしい。

最後に仕事場にある私物を志穂が取りに来た時、俺に気付いた志穂は
『今まで騙しててごめんね。…あとありがとう。』とだけ言い、俺の前から去って行った。
最後まで俺は志穂に声をかけられず、ただただ志穂の後ろ姿を見つめることしかできなかった。

あの日から同じ被害者として相川さんとは連絡を取り合い、今も仲良くしている。
最初はお互い傷の舐め合いで、お互いがお互いを慰めあった。
だけど志穂が完全に目の前からいなくなってから少しずつ俺達の関係は奇妙ながらも変わっていき、今はお互いよくわからない関係になってしまった。
友達とは言えない距離の近さや過干渉。
自分達でもこの関係に名前が付けられず困っている。






解説
付き合って3ヶ月の彼女には恋人がいた。しかも自分はただの間男で、本命はイケメン御曹司だった。そこから落ち込むイケメン御曹司を慰めてほのぼの。
という予定で書いたのですが色々あり、この話はボツにしようとしてたんですが、勿体無いので無理矢理完結させました。
なので訳わからない部分などが多いと思います。すいません。
岡部昇 25 皆木志穂 24 相川幸也 28


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bkm
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