僕の主様の話
元拍手



代々僕の家は有栖川家の従者をしている。
そのため僕は物心付くずっと前から父様に『主様である日向様の幸せはお前が守るんだぞ』と言われ続けてきた。

僕の幼少期の全てを主様に相応しい従者になるための特訓に捧げ、やっと僕の主様である有栖川日向様に会えたのは僕が小学6年生に上がった年だった。

深く深く下げていた頭をあげ、初めて見た日向様はとても美しかった。
綺麗な黒い髪に同じく黒い大きな目、真っ白い肌とは対照的なそれは吸い込まれてしまうんじゃないかと感じる程僕は知らぬ間に見惚れてしまっていた。
どのぐらいの間そうしていたかわからないが、父様の『幸也、日向様に挨拶しなさい』という声でやっと我に返った。

『初めまして日向様。僕は野田幸也と言います。あなたの従者となるため日々特訓してまいりました。なんなりとお申し付けください。』
一歩前に出、再び日向様に頭を下げ挨拶をすると、
細く小さい声だが『…よろ、しく』という声が聞こえ、僕は頭を下げながら密かに顔を綻ばせた。


日向様は今まで奥様と一緒に海外で暮らしていたこともあり、僕と初めてあった頃はあまり日本語を喋ることができなかった。
だけどそれも最初だけで、1年も経てば人並みに喋れるようになった。
けれど日向様は無口なお方で、日向様の声を聞けるのは貴重なものだった。


中学からは日向様と同じ学校に通えるようになった。
僕は今まで私立の小学校に通っていたが、日向様はこちらに帰国してからは家庭教師を雇い、学校には通っていなかった。
そのため父様や旦那様に僕が日向様の学校生活の全面サポートをするよう頼まれた。

僕の通っていた私立学校は小中高大のエスカレーターの男子校で、外部生の日向様は目立ちまくり
変な輩によく絡まれていたが、僕に『手を出すな』と言い、日向様本人の手で返り討ちにしていた。
その姿に父様や旦那様にサポートするよう言われたが、僕はいらないんじゃないかと少し不安になった。


中学に通うようになってから放課後、日向様は他の私立の男子校に行き、こっそり影から校門から出る生徒を見つめるようになった。
『誰かを待ってるんですか?』と聞いても日向様は答えてくれず、僕も黙っていつも日向様の後ろをついて行った。

夏の暑い日も冬の寒い日も放課後は全国の私立の男子校に行き、こっそり影から生徒が帰るのを見守った。
今も日向様が誰を待っているのはわからないが、日向様の誰かを待つ横顔は何処か切なく、その顔を見るたびに胸が締め付けられる思いをし、早く日向様の探し人が現れて欲しいと僕は願った。





中学の卒業式の日、久々に僕達はお迎えの車で家へと向かった。

結局この3年間日向様の探し人は見つからなかった。
読み取れない表情で窓の外を見つめる日向様をボーッと見ていると
日向様は突然目を見開き『止めろ』と叫んだ。
僕も運転手も驚いていると、止まった車から急いで降り、来た道を走って戻った。
その後ろを僕も追いかけて走ると
ついた場所は近所の公立の共学中学校で、この学校も今日が卒業式だったらしく
胸に花を付けたたくさん生徒が校門から出て行っていた。

やっと日向様を見つけるとある1点を見つめ手で左胸を掴み『見付けた』と
今にも泣きそうな切なく、だけどどこか嬉しそうな声で呟いた。

その姿に自然と僕の目から涙が溢れ出した。
やっと、やっと、やっと、やっと…
日向様の探し人を見付けた。

気持ちをすぐに切り替え、流していた涙を袖で拭い日向様に声をかける。
「日向様帰りましょう」


ここからは僕の仕事だ。
日向様が見ていた人の顔も覚え、学校名も、胸に付いていた花で僕等と同じ卒業生だということもわかった。
任せてください。
日向様の幸せは僕が叶えます。





解説
あるアニメが今日最終回だったのでその記念?として書きました。


この話の主人公(語り手)は攻めの従者です。

昔に一度だけ会った受けに惚れ
日向様はずっとずっとその好きな人(受け)を探してました。

従者は日向様への恋愛感情はゼロです。ほぼ尊敬の念です。
でも身近に日向様の様な美しい人がいるので人並みにムラムラし、色々隠れてやってます。
色々の内容を1つあげると、日向様のパンツや体操服スーハースーハー。


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