男前長身平凡×泣き虫会長
リクエスト



「オイ、新入生歓迎会の書類どうなってんだよ。まだ風紀にきてねぇぞ」
「今やってんのが見えねぇのかよ。テメェの目は節穴か?しっかり見ろよクソ」
ワザと大きい音をたてて入ってきた風紀を睨み、もう少しで終わろうとしていた書類を見えるように掲げた。

「チッ…さっさとしろよ。こっちの仕事にも響くんだよ」
「うるせぇな。あと少しも待てねぇのかよ早漏野郎」
こちらを睨んでいるだろう風紀を無視し、ひたすら俺は手を動かす。
その間副会長が風紀に茶を出していたが、別にあんな奴なんかに茶を出さなくていい。

やっとこさ仕上げた書類を無言で風紀に押し付け、俺は帰った。
今日が期限の仕事はこれで終わりだ。あとの書類はまだもう少し時間がある。
後ろでグチグチと言っている声が聞こえたが、聞こえない振りをして無視をした。

生徒会室を出てすぐはゆっくり歩いていたが、徐々に歩くペースを早め、最終的には走ってある場所へと向かった。

「…ヒック…うう、…んっ…」
目的地に着いた頃にはボロボロと俺は涙を流し、ある部屋のインターホンを連打した。

数秒してからガチャリと扉は開かれた。
「はいはい聞こえてまーす。…うおっ…会長?」
出てきた相手にガバリと抱き着くと、最初は驚きながらも直ぐに俺の背中を優しく撫で、扉の中へと入れてくれた。

ソファーにつくと俺を抱っこする形で向かい合い、抱き締めて座った。
トンットンッと俺の背中を小刻みに叩いて落ち着かせてくれる。
「会長?どうしたんですか?」
「今は…んっ、プライ、ベート…名前…」
相手の首に手を回し、肩に顔を埋める。

「慎、少しは落ち着いた?」
「…ん。落ち着いた。ありがと、和泉」
ギュッと腕の力を強め、さらに和泉に密着する。

「っで、今日はどうしたの?副会長に怒られた?それとも書類ミスした?…あっ、もしかして会計にセクハラでもされた?今から会計のこと殴ってこようか?」
和泉の問いに全部頭を横に振る。
だけど今日も会計にセクハラにされたなと思い出し、アッと思ったが、それはまた今度でいいやと流した。

「あと少しで書類が終わるって時に風紀のやつが来た。ウザい…また文句言われた」
そう言うと状況を理解したのか和泉はハァーとため息つき『本当にあの人は…』と呟いた。
「それは災難だったな…。あの人は思考がガキだから好きな子をいじめて、構ってほしいだけなんだよ」
許してあげてとは言わないけど、イチイチあの人に構ってるとめんどくさいよ。だから流せるようになろっか と俺の頭を撫でながらクスリと笑った。

「ホント困る。俺の事が好きとかはどーでもいいけど、ああいうことやめてほしい。」
プクッと頬を膨らませながら言うと『あらら委員長可哀想』と和泉は笑った。
「だって別に和泉以外はいらないし、他の人からの好意なんてどーでもいい」
「ありがとう…嬉しいな。好きだよ、慎」
「ん。俺も…」
和泉の肩から顔をあげ、目の前に顔を持っていき目をつぶる。
和泉の顔が徐々に近付いてくる気配を感じながらドキドキしていると、ブーブーっと遠くの方から携帯の鳴る音が聞こえた。

「ごめんちょっと待ってて」と俺を和泉の膝から降ろし、和泉はソファーから立ち上がって携帯を取りに行ってしまった。
タイミングの悪い携帯に、誰からだよとイラつきながら俺も和泉についていった。

「はい。…あっ、委員長。どうしました?」
携帯に出た和泉の背中に抱き着きながら聞き耳を立てていると、相手は風紀からだった。
さらにイラつき今すぐにでも和泉から携帯を奪い、通話を切りたい衝動に駆られる。

「えー…、今日俺休みですよ?嫌ですって。…いやぁだからそんなこと言われても…」
俺より7cmも高い和泉の背中は広くてデカイ。
いつもは凄く頼り甲斐のある大きな背中だが、もしかしたらあのクソ風紀のせいで和泉は俺に背中を向けたまま何処かへ行ってしまうかもしれない。
そう考えていたら知らず知らずのうちにまた涙が出てきてしまっていた。

和泉の服の裾を掴み、息を乱しながらも一生懸命涙を止めようとするが、いつもは和泉が俺の涙を止めてくれるので、自分での涙の止め方がわからない。
どうしようと泣きながら考えていると、和泉の服の裾を掴んでいた俺の手を和泉に掴まれ引っ張られた。
なんだ?と思っているとポスンと和泉に空いている片手で抱き締められた。
驚いて顔を上げ和泉を見ると、携帯を耳に当てながらもニコリと笑い、口パクで『大丈夫だよ』と言った。
その瞬間さっきまで流れ続けていた涙が嘘のようにピタリと止まった。

「俺が風紀副委員長だからといってなんでもかんでも仕事を押し付けないでください。あなたも仕事が出来るんですから自分でしてください。…はぁ?めんどくさい?知りませんよ。それにわざわざそんなので休みの日に電話しないでください。…はいはいわかりましたから。切りますよ。…それでは」
和泉が携帯を耳から離し、電話を切ったのを見届けてから俺は上を向いて目をつぶった。
ちゅっ と唇に軽く触れる感触を感じ、ゆっくりと俺は目を開く。
目の前には申し訳なさそうな顔をしている和泉がいた。

「ごめんね。また泣いちゃったのか…あらら、泣きすぎて目が赤くなっちゃってるな」
そう言いながら俺の目元に和泉は軽くキスを落とした。
それにくすぐったさを感じながらも気持ち良く、もっとと言うように和泉の首に手を回した。
それを和泉はわかったのか『はいはい』と言いながら顔中にキスして『しょっぱいな』と笑った。






解説
風紀副委員長をつとめる長身平凡と、泣き虫会長のお話。

外ではカリスマ会長だが中身はただの甘えん坊泣き虫。
風紀委員と生徒会同士なので部屋の階は一緒。いつもは和泉からもらってるマスターキーで扉を開けていたが、今回は余裕がなくてインターホンを鳴らした。

風紀委員長は会長の事が好きすぎていじめる、いじめっ子。
ちなみに副委員長と会長が付き合ってることは知らない。


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