負けず嫌い?×無表情
リクエスト



西野を嫌いになったキッカケはいつも俺より成績が上だったから。
周りからしたら些細な事だろうが俺には違う。
西野は何もかも俺より劣ってる癖に、俺が一番自信のある成績だけは、いつも俺より上にいた。
俺はそれがイラついてしょうがなかった。



西野は無表情で友達も居ない。
運動神経は悪いが、頭だけはすこぶるいい所詮ガリ勉ってやつ。
なのにそのガリ勉野郎に俺は一度も成績で勝てたことがない。

今までいつも学年1位は俺だったのに、高校に入ってからは西野がいるせいで1位になれない。
悔しくて悔しくてテスト2週間前はいつもより力を入れて勉強したのに、それでも俺は西野に勝てなかった。

西野からしたらなんのこっちゃと思われるだろうが、それでもこの言いようのない悔しさは消えてくれず、2位の位置に自分の名前があるのを見るたびに西野への憎しみが募った。

嫌がらせとして、ことあるごとに西野に突っかかっても、西野は無表情な顔して何のその。
嫌そうな反応すらしない。それが俺の中でさらにムカつき苛立ち、癇に障った。

2年に上がる頃には嫌いなやつは?と聞かれたら即答して『西野』と叫ぶほど俺は西野が嫌いになった。




それなのに…2年に上がってすぐ、俺は西野と一つ屋根の下で住むことになってしまった。

理由は簡単。
オヤジの再婚相手の女性には俺と同い年の子供がいて、それが西野だった。
最悪という言葉じゃ表せないぐらい嫌で嫌で仕方なかった。
だけど今まで男手一つで育て上げてくれたオヤジの幸せそうな顔を見ると『再婚なんてやめてくれ』という俺の身勝手な理由でそんな事を言える訳もなく、『大雑把なオヤジと生意気なガキですがよろしくお願いします。』と笑顔で答えるしかなかった。


再婚して西野の名前は俺と同じ姓になった。
そのせいで西野と呼べなくなり、下の名前の『裕』と呼ぶことに今も慣れないし、呼ぶたびに正直虫酸が走る。
だけどオヤジや友梨さんのいる手前『おい』やら『お前』なんて呼べなく、嫌々ながらもそう呼んでいる。
あいつの方も『賢くん』なんて呼ぶのでさらに俺の気分はだだ下がり
やはりというか、あいつとの生活は俺にとって最悪で苦痛なものだった。



「おはよ。賢くん」
「…はよ」
朝起きて一番最初に見る顔がこいつなのがムカつく上にわざわざ挨拶してくるせいで、返事をしなきゃならなくなるのがウザい。
二人きりの時に話し掛けられたなら無視するのに、こいつは俺が無視出来ないよう、オヤジや友梨さんがいる前を狙って話し掛けてくる。
本当に俺をイラつかせる天才だ。

「友梨さん、おはようございます。オヤジもはよ。」

だけどあいつの母親である友梨さんは本当にいい人で、俺はこの人が大好きだ。
今まで母親の居なかった俺に母親というのはこういう者なのだと態度で表してくれる。
嫌いな食べ物は率先して使い、俺が食べれるようになるまで味や料理の仕方を試行錯誤して作ってくれる。
他にもテストの結果が良かったり、友梨さんの手伝いをするとご褒美として『ノリさんには内緒よ?』とオヤジには内緒でデザートなどを差し入れてくれる。
時に厳しく、だけど優しい友梨さんは俺の理想の母親で、オヤジも友梨さんと一緒に暮らすようになってから前よりもっと笑顔が増え、俺達は笑顔が絶えなくなった。
友梨さんには感謝してもしきれない。
だから形だけは息子のあいつと良好な関係に見えるようにしている。


「おはよ賢一くん。今日から3日間ノリさんと留守にするけど本当に大丈夫?お金もっと置いといた方がいい?」
「いやいや3日間なんて家にあるもんで済むし、これ以上要りませんよ。友梨さんはオヤジと新婚旅行楽しんできてください。やっと休み取れたんですから」

オヤジも友梨さんも仕事の関係でなかなか休みが合わず、再婚してから3ヶ月経った今日、ようやく新婚旅行に行ける。
あいつと三日間も家に二人きりなんて嫌で仕方がないが、オヤジと友梨さんの幸せそうな顔を見ればそんな事も我慢しようと思える。



「じゃあ俺は学校行くんで、二人とも気をつけて旅行楽しんできてくださいね。あと、お土産楽しみにしてます」

そう言い家から出ると、あいつも俺に続いて家から出た。
同じ場所から出て同じ所に向かうので、必然的にあいつは俺の数歩後ろを歩いてついてくる。
人の気配を感じながらも俺は耳にイヤホンを付けて外部の音をシャットアウトする。




学校では主席のあいつと、あいつを毛嫌いしている俺は割と有名だ。
そのため再婚してあいつの姓が変わり俺と同じ姓になった時、俺はみんなに心配されたり茶化された。
でもそれも最初だけで、3ヶ月も経てばみんなはその話題に飽き、触れなくなった。
今も俺があいつを嫌ってるのに一緒に暮らしてるということを心配してくれてる友達には『ストレス溜まるようなら俺の家にいつでも泊まりに来ていいからな』と言われているが、それは最終手段にしたいので『その時はよろしくな』と笑顔で答えている。

学校では前と変わらず楽しく過ごせている。

放課後友達と遊んでから家に帰ると家の中は真っ暗だった。
昔は真っ暗な家なんて当たり前だったが、ここ数ヶ月いつも家に帰れば友梨さんがご飯を作って『おかえりなさい』と迎え入れてくれてたので、少し寂しく思える。

荷物を部屋に置き、家着に着替えて下に行くと
今日の分の晩御飯は友梨さんが作り置きしてくれたらしく、テーブルの上にはラップがかかった料理が置いてあった。
あいつの分がないということはすでにあいつは食べ終わったんだろうとキッチンを見ると案の定使い終わった皿が置いてあった。
久々に一人でとる食事にオヤジが再婚する前の家に一人きりの寂しかった生活を思い出す。


晩御飯も食べ終え、あいつの分も一緒に皿を洗い
もうそろそろ風呂に入るかと部屋に戻るとベッドの上に見知らぬ服が畳んで置いてあった。
広げてみると大きさ的に俺のでもオヤジの物でもなかった。
友梨さんが間違えてあいつの服を俺のところに置いたんだなと今は居ない友梨さんに少しため息が出た。

ふと、そーいえば俺が家に帰ってきてから物音一つしないし、もう寝たのかなと思い
そっと隣の部屋との間にある壁に耳をつけると小さい声だが『んっ…はぁ…あっ…』と息遣いの荒い声が聞こえ、慌てて壁から耳を離した。

そりゃあいつも年頃の男だからな…俺も隠れてするし…
と自分で自分を納得させ、バクバクとなる心臓に手を当てて落ち着かせようとするが全く治まらず
何故かあいつが一人でシている姿が鮮明に頭に浮かんでしまう始末。

叫びたくなる気持ちを無理矢理抑え、下着と服を持ち、頭を冷やすためにも急いで風呂場へ向かう。
そして服を脱ごうとした時に見た膨らんでいる下半身に俺は顔を青くした。

「これ…、どーしよ…」



この日から俺とあいつとの関係が変わってしまう?






解説
二人とも片親なので、少しでもお金がかからないように勉強して奨学金やら推薦などを狙ってる。

ネタバレですが裕くんは賢くんのこと好きです。
ガリ勉で友達が居ない裕くんにとって、どんな形でも構ってくれる賢くんは嬉しいものでいつの間に惚れてた。
賢くんに嫌われてるってわかってるのでわざと会話出来るように狙ってる策士。ズリネタはもちろん賢くん。

賢くんは鈍感。
顔はカッコいいしスポーツも出来る才色兼備。本人はそのことに気付いてない。


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bkm
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