浮気×健気
リクエスト



どうしてこんなことになったんだろうか…
僕の何がいけなかったのか…
何をすれば正解だったのか…

ぐるぐると答えのない考えが浮かぶだけで、僕は何も出来ず、
ただ呆然と目の前の惨状を見守る。


…あーそうだ、わかった。
僕が真咲の事を好きになっちゃったからいけなかったんだ…






雄介に、中学の時からの友達だと真咲を紹介されたのは高校に入って半年が過ぎようとしていた頃だった。


高校の入学式の日、知り合いが居ない中オロオロしている僕に、席が前だった雄介は『初めましてー。なんて名前?俺は雄介っての。よろしくな』と声をかけてくれた。
その日から雄介と僕は友達になり、くだらない冗談を言い合える仲にまでなった。
そんな明るくてノリのいい雄介の友達ならきっといいやつなんだろうと紹介された真咲を見て僕は言葉を失った。

いやーこいつこの通りイケメンじゃん?もう中学時代からすごいモテモテでさ、俺もイケメンな分類だと思うのにこいつといると全然モテねぇの…と茶化すように真咲の紹介をする雄介の言葉も耳に入らず、ただひたすら真咲に見惚れる。

やっと僕の様子がおかしいと気付いた雄介は不思議な顔し、真咲は『ん?潤くん?どーした?もしかして俺に惚れちゃった?』と意地悪気な顔でニコリと笑った。
この時に僕は、真咲に恋してしまった。



あのあと自分がどう返事を返したのか覚えてないぐらいにテンパり、気付いたら雄介が目の前にいて『おーい、大丈夫かー?』という声で我に返った。
徐々にさっきの事を思い出し、
『冗談でもなく、さっき真咲くんが言ったとおり僕、真咲くんの事好きになっちゃったかも』と雄介に伝えると雄介の表情が固まった。
『あははは…冗談だよね?真咲も潤も男じゃん…え?』と
ハッと口を押さえ、自分は言っちゃいけないことを言ってしまったと俯いた。

湧き上がる感情を抑えきれなくて思わず真咲の事が好きだと雄介に伝えてしまったが、まず僕達は男同士だし、友達がホモなんて絶対気持ち悪いと思われた。
しかもそのホモが中学時代からの友達を好きと言い出したんだからそりゃ引くよな…
やってしまったと俯き、ああこれで友達関係も終わったなと無意識に涙を流してると
『……っ、ごめん。男同士もありだと、思うよ。俺、潤のこと応援するから』と雄介からまさかの返答に、驚いて思わず涙が止まった。




努力の甲斐もあり、2年に上がる時には僕と真咲は付き合いだし
その上、真咲も僕も雄介もみんな同じクラスになれた。
今思うとこの時が一番幸せだったのかもしれない。
雄介とは毎日くだらない話で笑いあったり、真咲とのノロケ話を聞いてもらった。
真咲とはみんなにバレないようこっそり手を繋いで家に帰ったり、お互いドキドキしながらもキスし二人して顔を見合わせて笑った。
初めての時は怖くてしょうがなかったけど、それ以上に真咲と1つになりたくて、真咲に気遣ってもらいながらも繋がりあった。
本当に楽しくて毎日がキラキラしていた。
だけど2年の冬辺りから真咲とのすれ違いが多くなった。

土曜日に遊ぼうと誘っても、その日は予定があると断られ、薄々おかしいなとは気付いていた。
悪い予想が浮かびながらも大丈夫だと自分に言い聞かせ、クリスマスこそは二人きりで過ごせるはずと期待したが、真咲にクリスマスはバイトがあると断られてしまった。
目に見えて落ち込んだ僕を心配した雄介に誘われ、結局クリスマスは二人で街へ遊びに出掛けた。
恋人と過ごせなくて残念だったが、雄介のおかげで楽しいクリスマスを過ごせたと友情のありがたみを実感していた時、ふと視線の先に真咲が女の人と腕を組んでいる姿を僕は見てしまった。

最初は理解出来なかったが徐々に理解し、僕の悪い予想が現実になってしまったことを実感した。
家に帰り一晩中ベッドで泣き、苦しさや切なさやどうしようもなさで胸が締め付けられる。
僕はこの先どうすればいいのか自分自身ではわからず雄介に頼った。
最初は『きっと潤の見間違えだよ』と信じていなかったが僕の必死さに気付き、真面目なトーンで一度話し合った方がいいよと言われた。


雄介に言われた通り真咲との話し合いの場を作り、問い詰めるとすぐに白状した。
そして『俺もうお前のこと好きじゃない』とも言われてしまった。
目の前が真っ暗になり、ただ真咲から離れたくないという一心で『好きじゃなくてもいい。だから真咲のそばに置かせて。別れたくない』とすがりついた。
顔を歪ませる真咲を気せず『お願い』という言葉を僕は泣きながら呟き続けた。
結局真咲折れ、別れないことにはなったがこの日から恋人公認での浮気が始まった。

そのことを雄介に話すと何故か雄介が悲しい顔をして、泣きそうになっていた。
思わず僕は抑えることが出来ず、雄介の前で泣かないと決めていたのに泣いてしまった。
辛くないと言ったら嘘になるが真咲のそばに居れれるならどんな形でもいいと自分の中で割り切った。
そのぐらい僕は未だに真咲のことが好きで好きでたまらない。
一種の魔法のようにも感じる。
どんなことがあっても真咲のことが嫌いになれない強力な魔法。


学校では今までと変わらず3人で過ごした。
真咲は優しい。あんなことがあったら僕を邪険に扱ったりすると思ったがそんなことを真咲はしなかった。

付き合う前の友達の時のように僕に接してくれた。
真咲が僕の名前を呼んだり、ボディータッチをしてくるたびに内心嬉しくてドキドキしていたが、必死でそれを隠しバレないようにした。
時々前みたいにキスや行為をしてくれることがあったが、その行為にはもう愛を感じなくなった。
それでも僕にはそれがとても幸せで、真咲と繋がれているということに涙を流した。



1年間以上こんな関係を続け僕の感覚が麻痺しだしていた頃、突然雄介に告白された。
『初めて潤に会って声かけた時から、ずっと俺はお前のことが好きだった。』軽い気持ちで真咲をお前に紹介したことを実は今もずっと後悔している。あの時潤に真咲を紹介してなかったら、潤は真咲のことを好きにならなかったかもしれないし、
ヘタレずに俺が潤に想いを伝えてたら今頃俺が潤と付き合えてたのかなとか、終わったことなのに、もしかしてっていつも考える。
潤が幸せそうならそれでいいと思ってたけど、この1年間ずっと辛そうな潤見て我慢できなくなった。なぁ…もう真咲と別れて俺と付き合ってくれよ

知らず知らずのうちに涙が出てきて、何も考えず、考えることも出来ず、ただ無意識に首を縦に振り、雄介に唇を寄せていた。
もう人を好きでいるのは疲れた。苦しさや切なさも全てが麻痺して何も感じなくなった。


いつも雄介は僕の事を気にかけてくれていた。
今思えば僕の事が好きだったからなんだと思うと少し胸が痛んだ。
好きな相手からいつもノロケ話されてたなんて辛かっただろうに。
それでも笑って、時には親身になって話を聞いてくれていた。
最初から真咲より雄介のことを好きになればよかったのに。
まだ真咲の事は大好きだし、雄介のことが好きなのかと聞かれると答えられない。
それでもこれからは今までの分今度は僕が雄介幸せに出来たらいいなと思う。

今まで何度も二人で遊びに出掛けていたのに、付き合ってからの初めてのデートはお互いぎこちなく笑ってしまった。
真咲のことで感情が失いつつあった僕は、久々にたくさん笑った。

雄介のおかげで新しい一歩を踏み出せた気がする。

だけどまだ真咲に雄介と付き合い出したことや、別れを告げてないことが心残りで
卒業式の前日、真咲を呼び出し僕から『今まで色々ごめんね。ありがとう別れよう。あとね僕、雄介と付き合い出したんだ』と言うと真咲はビックリした顔をした後一言『そうなんだ』と言ってその場を去った。
真咲の後ろ姿を見送り、一人スッキリした気分になり、ようやくこれで心置き無く雄介と付き合えるようになるとそう思った。


卒業式が終わり、各自記念撮影や
この後の打ち上げについてクラスメイトが盛り上がってる中
僕達もどうするか3人で話し合った結果、真咲の家で打ち上げをすることになった。
スーパーでたくさんあれもこれもと買い物をし、真咲の家に着いてから一旦一休みしようということで真咲の用意してくれたお茶を飲んでから数分、何故か急に睡魔が襲い僕は寝てしまった。



うるさい音に目が覚め、周りを確認すると真咲が何かを蹴っていた。
眠気眼でなんだと確認すると蹴られていたのは寝っ転がっている雄介だった。
なんで?どういこと…とそちらに近付こうとしたが何かに引っ張られ真咲と雄介の元に近付けなかった。
よくよく自分の身体を見てみると手には手錠。首にはベッドと鎖で繋がれている首輪が着いていた。
僕が目覚めたことに真咲が気付き僕を見る。

「おはよ潤。よく眠ってたな。睡眠薬盛ったんだけど副作用とかない?大丈夫?」
いつものように笑う真咲に背筋が凍る。

「な、んで?」
「…なんでって何が?潤はどれについて知りたいの?」
僕との会話中も真咲の足は止まらず雄介の身体を蹴っている。

「ゆー…すけのこと…」
「あーこれ?本当あり得ないよね。俺は友達だと思ってたのに、人の恋人取るとかあり得ないよな。だからもうこいつとは絶交」
そう言いながら今度はしゃがみ雄介の顔を殴る。
すでに雄介の顔は腫れており見るも無残な姿なのに真咲は殴り続ける。

「潤のこと、今は大好きだよ。なのに別れるって言い出すなんて酷いよ。しかもこいつと付き合い出してたとか…まぁでも許してあげる。…許してあげるけどこいつとどこまでしたの?…もしかしてヤらせたりしてないよな?」
いつもの真咲とは違い、怖くて無言で頷くことしかできない。
「ふーん…ならよかった。」
そう言いながらも雄介を殴り続ける手を止めない。さっきから一度も雄介は抵抗をしないし、声も聞こえない。
まさかという考えが浮かぶがここから動けず近付くことができない。



「あともうちょっとで終わるから、このあと一緒に愛し合おうな潤」






解説
高1秋真咲出会い、惚れる→高2努力の甲斐あり、お付き合いスタート→高2冬浮気発覚→高3冬真咲の浮気で感情失いかける→そこで雄介に告白され回復→卒業式前日真咲に別れ話+雄介との関係を話す→卒業真咲に監禁される。

一度は潤の事を好きじゃなくなり、女と浮気をしていたが
どんなに浮気をしてもすがりつく潤を見て『可愛いなぁ。潤は俺が居なきゃダメなのか』という優越感や満足感で歪んだ愛が生まれだした。
なので後半の浮気してた理由は泣いてすがりつく潤見たさ。


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