絵師×腐男子
小話



小さい頃お姉ちゃんが隠し持っていた本を見て、僕は一瞬で魅了された。
女の人は居ない、男だけしかいないその本は、今まで少年漫画しか読んだことのない僕にとって衝撃的で、それと同時に魅惑的で
イケナイ物を見ている気がしてドキドキした。

お姉ちゃんは一過性のものだったらしく、すぐに飽きてしまったが
あの日、こっそり見たお姉ちゃんのBL本に心奪われたその日から、僕は腐男子になってしまった。



男がBL好きなんて現実ではもちろん、ネットの世界でもあまり受け入れてもらえない。
最近では『腐男子受け』『腐男子攻め』などで認知?されるようにはなったがやはりどこか距離を置かれてしまうし、『腐男子ってことはホモなの?男好き?リアルホモくれ』と茶化される。

そういうこともあって僕はネットの中では女の振りをしている。
っと言っても、ただ性別を書かないでプロフィールに『BLが大好きな高校生です』と書いてあるだけでみんなが勝手に女だと勘違いしてくれる。

そのおかげでネット上にたくさんの腐友ができた。
お互いに冗談を言い合ったり、好きな事について語り合うのは楽しく、時間を忘れるほどだった。
相手は自分の事を女の子だと勘違いしてることに少し罪悪感が湧くが、それでも気兼ねなく語り合えるのはやっぱり腐女子だと勘違いしてくれてるおかげなので絶対性別をバラす気はない。

だけど、繋がりたいと思う人と繋がれないのはもどかしい。
BL好きな男という以外僕には特出したものがない。
絵は描けないし、文章も書けない。専ら見る専門。
そのせいで『あっ、この人と仲良くなりたいな』『この人と話し合いそう』と思ってフォローしてもフォロバしてくれない。
相手の自由なんだから仕方ないと思っても胸にモヤモヤしたものが残る。

僕に絵や文章の才能があったり、腐男子だってバラせば向こうは食いついてくれるんだろうけど、才能なんてないし腐男子だってバラす気もない。
だからモヤモヤを取り除くためにフォローを外す。








学校からの帰り道の電車の中で、面白い子に出会った。
高校生らしいその子はネカマをしていて、しかも文章の内容やTLを見る限り腐男子というやつらしい。

腐男子のネカマなんていい話のネタになるなと観察していたが、腐男子くんはあるアカウントを見て悲しそうにため息をついた。
そしてその姿を見て、俺は胸を締め付けられた。

何故そんな思いをしたのかわからなかったが、家に帰ってすぐ、さっきの腐男子くんの垢を探した。

簡単に見つけられたが、腐男子くんが誰かと会話しているのを見るたび
またあの時の胸が締め付けられる思いをした。

どうにかして俺を見てほしいという思いが出てくるが、そもそも俺が一方的に見掛けただけで腐男子くんは俺の存在すら知らない。
自分の持っている垢でフォローしてもいいが、如何せんその垢では行動しにくい。
だけど俺を知ってほしくて、俺を見てほしくて、腐男子くんとの関係を繋ぐための垢を新しく作成した。

他のやつなんかより俺だけを見てほしい。俺に気付いてほしい。






腐男子のネカマ?
男なのにBL好きなことでネット上で距離を置かれたり、茶化されるので腐女子の振りをしている。誰にも自分が男だと知らないし知らせていない。
絵描くの下手くそ。文章は少し妄想吐く程度で書くけどその程度。高校生。


絵師。なんでも描く。
上手いなんてもんじゃない。神をも超越してる。
たまたま電車の中で見た高校生のTwitterを見て『ネカマのしかも腐男子かよ』と気になり、自宅に帰ってから垢を探す。
本垢ではもちろんフォロー出来ないので、腐男子くんのTwitterを見るためだけの垢を作る。そのため腐男子くんしかフォローしてない。
つぶやきも1日5回ぐらいしかしない。美術系の大学生。


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bkm
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