男前×方向音痴
リクエスト



何度思い出しても笑える。
俺が真田さんと初めて会った時

「あの…俺の家って、どこですかね?」
そう言いコンビニ袋片手に頼りなさ気に眉毛をハの字にさせ、真田さんはとても困っていた。


最初俺は記憶喪失を疑い、大丈夫なのかと聞くと、真田さんはすごく恥ずかしそうに顔を赤くして『あっ、いや…あの、ただの迷子…です』と言った。
俺は唖然として、開いた口を閉じることが出来なかった。

最近の小学生でも迷子になることが減ったというのに、目の前にいるこのどう見ても社会人の男が迷子?ありえない…となかなか信じることが出来なかったが、職業柄どんな困っている人でも助けるのが俺の役目なので住所を聞き、案外近かった家までの道のりを口頭で伝えた。

だが数十分後、先ほどより酷い顔をして、今にでも泣きそうな顔でまた俺の勤めている派出所に真田さんはやってきた。

驚きながらも今度こそ俺は失礼ながらも笑ってしまった。

これが警察官の俺と、小説家で方向音痴な真田さんとの出会い。


あの日は結局少しの間派出所を空け、真田さんの家まで俺が送り届けてあげた。

真田さんを送ってあげてる間、何故迷子になったのかと聞くと『元々方向音痴でよく迷子になる。だからいつもはGPS付き携帯を必ず持って家から出るけど、近くのコンビニに牛乳買いに行くだけだからって油断して持って行かなかったら案の定迷子になり、家に帰りつけなくなってしまった。』と。
その時の恥ずかしそうだけど嬉しそうに『お巡りさんのおかげでやっと家に帰れます。ありがとございます』とはにかんだ真田さんに俺はカーッと顔が赤くなるのを感じた。
その時にはもう俺は真田さんに惚れてたのかもしれない。



あれから真田さんはよく派出所に来るようになった。
別に俺に会いに来ているとかそういうのでなく、ただ方向音痴を直そうとして家を出たっきり、自分の家に帰れなくなってしまいここに来る。

そんな真田さんに少し呆れながらも俺は真田さんを毎回家まで送る。
正直一生懸命な真田さんの姿はとても可愛い。
俺より2歳も年上の27歳なのに仕草や行動、オーラが年より幼く思わせ、年上なのを忘れてついつい甘やかしたり年下扱いをしてしまう。

この前なんて、また迷子になった真田さんを家まで送ってる途中『昨日は地図も使わないでコンビニから家に帰って来れた』と嬉しそうに報告する姿が可愛く『そうですか。頑張りましたね。じゃあご褒美です』と言って苺の飴玉をあげ、頭も撫でてしまった。
したあとは『やっちまった。近隣の小学生と同じように扱ってしまった』と後悔したが、真田さんは少し照れ臭そうに『ありがとう』というだけで特にお咎めはなかった。

真田さんの可愛らしさに最近毎日のように癒され、仕事も楽しく感じる。1家に1台真田さんが欲しい。







俺は昔からよく迷子になった。
家を少しでも出れば住み慣れた家にも帰り付けず、親や兄弟に見付けてもらい家に帰る程の方向音痴さ。
そんな俺が1人暮らしをすると言った時は案の定家族も兄弟も友達もみんな反対したがそれを押し切り俺は1人暮らしを始めた。

子供の時は将来の自分はちゃんと1人でも生きていけるのかと不安を抱えていたが、やはり社会人になった今
自立出来なきゃ自分のためにならないし、機械は進化し便利になったのでGPSという、今自分が何処にいるのか
自分の居る場所から目的地までどういう道順で行くのかがわかる物などが開発され、俺は迷子にならなくなった。

元々仕事柄あまり外に行くことが普通の人より少ないのでなんとかなったんだろう。

だけどやはり俺の方向音痴は大人になっても全く直っていなかった。

夜突然、今朝で牛乳がもうなくなった事を思い出した俺は近くのコンビニまで買いに行った。
近くだから迷子になるはずないと高を括ったが案の定迷子になり、俺は近くの派出所へ行き家の場所を聞いた。
お巡りさんのあの『大の大人が迷子?』という驚いた顔は今でも忘れられない…。

あれからお巡りさんに家までの道順を口頭で教えてもらったが、俺は家に帰り着くことが出来ず、泣きそうになりながらもまたお巡りさんの元へ行った。
さすがに今度は笑われてしまって恥ずかしかったが、お巡りさんは俺を家まで送ってくれた。
その時からもう俺は優しいお巡りさんを好きになってたのかもしれない。






解説
お巡りさんと迷子の迷子の真田さんのお話。

お互い好きあってるけど、お互い自分の気持ちを言うつもりはありません。
周りは『早くくっつけばいいのに』『無意識にいちゃいちゃしやがって』と思ってます。
なので本人達が気付いてないだけで勝手に公認カップルになってます。
主に小学生や地元の主婦によくからかわれるお巡りさん。


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