イケメン×女装男子2
リクエスト



「インパクトが無いのよねぇ…もっとこうなんていうの?みんなが『見に行かなきゃ!!!』って思うようなそんなやつをしたいのよ…何か良い案無いの?」
そんな委員長の無茶振りから俺達2年C組は『見に行かなきゃ!!!』と思うような事を考えに考えさせられた結果、文化祭では男装や女装をはじめとした、皆が色んなコスプレする色々喫茶をすることになった。



「平井ー!早見の衣装知ってるか?」
「え?知らない。何やんのあいつ?」
「笑うなよ?……あいつメイドだってよ」
「ぶはっ!!!何それウケる。ゼッテェ似合わないって」
だよなと笑う金子とコソコソと話していると『何笑ってんのー?』と張本人がやって来たことでさらに俺達は笑いが堪えられなくなった。
ゴツい早見がメイドとか似合わないって。話題性はあるかもしれないけど目が腐るだけだろ。

「ハハハッ…お前がメイド服着るって話だよ」
「は?なんで知ってんだよ!!」
「ヒーッ…委員長が教えてくれた」
笑いが止まらないどころか涙まで出てきた。
「お前ら笑いすぎなんだよ!!!…ふんだ。お前ら俺のメイド服姿に惚れても知らないからな!!!」
「……だってよ平井くん」
「いやいやありえないでしょ金子くん」
「おーまーえーらーー!!もしかしたら可愛いかもしれないだろ!!希望を捨てるなよ!!」
いつも通り早見イジリに精を出すが、心の底ではメイド服を着る早見を羨ましいと思ってしまっているから、ホント俺は女装に関して末期かもしれない…
でもメイド服いいなぁー。一度でいいから着てみたいなぁー
だけどメイド服持ってても着る機会無いしなぁ…うーん。

「そういえば平井はセーラー服なんだって?…それもヤバイな」
「委員長のチョイス面白すぎだよな。でもほら、俺って早見と違って女装とか似合っちゃう人だから特に問題はない」
「うーわー平井くん自意識過剰ー。きんもぉ」
「んー?なんか言ったかい早見くぅん?」
早見の足を力いっぱいグリグリしつつ聞くと『いやっ…あの…ごめん…イテェ!!!ごめんって』と。
ほら俺って平凡顔だけど女装したらマジでその辺にいる女の子だし?普通に可愛いし?似合う自信ありまくりだよ?

「お前こそ俺の女装に惚れても知らないからな」
「……早見菌が平井にも移っちゃった?大丈夫?だいぶ頭おかしいこと言ってるよ」
「…ん。ごめん。今の発言は俺自身、調子に乗ったなって思った」
「自覚があるならよかった。早見みたいに自覚のないバカが増えたらどうしようかと思ったよ…」
「悪りぃ…」
2人して深刻な顔をして謝りあっていると、『待って…。え?何々?もしかしなくても俺バカにされてるよね?え?え?』と言う早見を華麗に無視し、金子と俺は色々喫茶の装飾品作りに集中した。

そういえばエータくんはどんな格好するんだろうな、聞いてなかったや。



「エータくん、おまたせ」
「全然待ってないから大丈夫だよ」
放課後は学校から数分歩いた所にある公園で待ち合わせをし、いつも一緒に帰っている。
クラスでもなかなか一緒に居れないっていうのに、折角のイベント事も俺が装飾係でエータくんがメニュー係とバラバラな役割のせいでここ最近は放課後しか一緒に居れてない。

「メニュー係ってどういうことするの?」
「んー。試食とか試飲って名目で食べたり飲んだりしてばっかだよ。」
「羨ましい!!!こっちなんて輪っか作ったり花作ったり地味な作業しかしてない!!」
そうかな?あんまり甘い物とか好きじゃないから俺にとっては結構苦行だよ。それにどうせなら金子くんや早見くんみたいにマコトと一緒にお話しながら装飾作りたかったし…

チラリとエータくんを伺うと瞳の奥が僅かにメラメラしていて『嫉妬しているな』とすぐにわかる。
エータくんは俺に隠しているつもりだがとても嫉妬深く、俺が金子や早見とふざけているといつも嫉妬してくる。
そんな姿に嬉しいと思い、もっと嫉妬してくれないかな?と早見に自分から突っかかりに行っているというのは俺だけの秘密。
女装しているからか恋しているからなのか、どちらなのかわからないが確実に俺の思考はどんどん悪い方へと乙女化してしまっている。

「俺もエータくんと一緒に試食とか試飲したかったなー」
メラメラとした目から落ち込んだような目になり『折角同じクラスなのにね…』と言うエータくんに
「そのさー…代わりと言っちゃ何だけど文化祭の日、一緒に回らない?女装するから多分変に思われないだろうし」
「っ!!!一緒に回ろう。俺もマコトと回りたい」
「じゃあ決まり。エータくんと堂々と二人で回れるなんて楽しみだな」
俺もと言い、機嫌の直ったエータくんに、やっぱり嫉妬してるエータくんよりも嬉しそうなエータくんの方がカッコいいし、そっちの方が好きだなと実感する。




自分以外の人に化粧してもらうのは姉ちゃん以外初めてだなと考えながら目を瞑る。
「平井くん肌綺麗!!!なんか手入れしてるの?」
「え?んー特には…」
嘘です。本当は毎日パックやマッサージなどしてます。化粧ノリを良くするための手入れは欠かしてません。

「何も手入れしないでこれとか羨ましい!!!!これだから男子はムカつくのよ!!!」
女子は紫外線が天敵だから汗かくたびに日焼け止めを付け直すなんてめんどくさい思いをしてるのに、男子はなーにも付けないくせに『あっ俺、赤くなるだけで黒くならないんだよね』とか言う奴いるから嫌なのよね

クラスの女子の迫力に押され渇いた笑いだけがでる。
「平井くんも白いけどもしかして…!!」
「……あ、赤くなるだ「これだから男子は!!!!!!」」

化粧が終わる頃には女子がいかに大変なのかという事を詳しく知った。
「目を開けて見なさい。どうよこれが女子の日々の努力の成果よ」
「……これはスゴイ…」
睫毛やアイプチのおかげで目は普通より大きくなり、泣き袋はふっくらとし、頬はほのかに赤くなって、唇はぷるぷるしていて思わずかぶりつきたくなるぐらい柔らかそう。
本当にこれは自分なのかと疑うぐらい可愛くなっている。
女装をする時にしている俺のナチュラルメイクとは違い、手の込んだ、だけどあまりケバくは見えないメイクに今まで語られてきた女子の努力を身を持って知った。

「…これからは女子を尊敬しようと思います」
「よろしい。私は他の奴らのメイクがあるから平井くんは、はよ行きなさい」
思わず敬礼をすると「健闘を祈る」と言って送り出してくれた。



「うわっ…化けたなぁ…女子にしか見えねぇわ。しかも可愛い」
「今のお前とならヤれるわ」
「だろ?惚れんなよ。俺には心に決めた人がいるからな。あと早見は死ね。消えろ。爆ぜろ。」
「ひど!!!」
「お前がキモいこと言うからだろ」
「いやぁ…でもホントに凄い。早見の化粧担当も相当頑張ってくれてたけど、化粧しても男だってわかるし、平井は上手いやつに当たってよかったな」
「よかったけど、女子の裏事情は知りたくなかったよ…」
金子の言うとおり、メイド服の早見は化粧はしているが男だと丸わかり、嫌でも笑えてしまう。

「ってか金子はうさぎの着ぐるみかよ。羨ましい」
「結構これ暑いし見た目は可愛いけど中は拷問だよ」
炎天下の中の着ぐるみの中の様子を想像し、思わず俺は苦い顔をした。
御愁傷様です金子くん…その…頑張ってください。

「そういえば新妻の衣装見た?超カッコよかったぞ!!」
早見の発言に今まで金子に向けていた視線を早見に移す。
「っ!!!何?なんの衣装着てた?」
「えー、どうしよっかなぁ…イタッ!!!ご、ごめんなさいごめんなさい!海賊でした!!!!」
勿体ぶる早見のスネを蹴り、次は鳩尾を狙って殴ろうとしたがその前に謝りながらエータくんの服装を教えてくれた。

「最初から素直に言っとけよ」
だけどそっかぁエータくんは海賊の格好してるのか。絶対カッコいいだろうなぁ…見てみたいなぁ。見に行っていいかなぁ…
でも客引き担当のエータくんが何処にいるかわかんないし、俺も店番しなきゃいけないし、午後にエータくんと一緒に回る時まで我慢しなきゃか…
あ"ぁー…待ち遠しい!!!!!




店番中、クラスメイトに『本当に平井なのか』と驚かれたり、客からは何度もセクハラをされ、自分の女装の完成度の高さに少し鼻が高くなった。

「もう休憩時間でいいよね?行くから!!!!んじゃ!!」
時間になった瞬間教室を飛び出し、エータくんにメールしながら玄関へと向かった。
早くエータくんの海賊の姿が見たいし、俺の姿もエータくんに見て欲しい。
ワクワクする気持ちを抑えて『次の奴が来てないからもう少しかかる』というエータくんからの返事に『おう。待ってる』と返して携帯を両手で持ちながらエータくんを待つ。
少ししてからトントンと肩を叩かれ『エータくん!!!』と思いながら振り向くとうちの学校の制服を着た知らない男が立っていた。

「なんですか?」
「可愛いね。他校の生徒?学校案内してあげるよ」
「いや、別にいいです。いらないです」
「遠慮しなくていいよ。ほら行こうよ」
今日何度目かのナンパに嫌な顔が隠せない。
その上相手に腕を掴まれ振り払おうとするが、手は離れず、逆に強く引っ張られた。

「やめてください」
「いいからいいから。それに1人でここに居るってことは君も俺みたいな奴を待ってたんでしょ?」
「違います!」
「それとも案内より空き教室行く方がいい?君も大胆だね」
訳のわからない発言と男の気持ち悪さにゾワゾワーッと鳥肌が立つ。
無駄に力の強い相手に引きずられる形で居ると肩に誰かの手が置かれ、相手の腕にチョップを食らわす手が見えた。

「イッテェ!!!何すんだよ」
「何すんだよはこっちの台詞だ。人の恋人になにする気だよ」
「…エータくん?」
「ごめんなマコト。遅くなって」
申し訳なさそうに笑うエータくんにホッと身体から力が抜ける。

「お前邪魔なのわかる?さっさとどっか行ってくんない?それとも俺達のイチャイチャ見てたいの?」
「っん!!んはぁ……ダメだよエータくん。周りに人がいるのに…」
突然キスしてくるエータくんに顔が赤くなる。それにここは学校で、2人だけの空間じゃないのにキスするなんて…

「いいじゃん。マコトすごく可愛いし。」
その言葉にハッとする。そういえば俺、今女装してるんだった。
自分の姿を思い出したことで自分に自信を持ち『もぉ、エータくんったら…』と甘い声を出しつつ、エータくんの首に腕を回した。

ナンパ野郎に見せ付けるようにキスしているとナンパ野郎は何処かへ行ったが、あちらこちらから視線を感じ、横目で周りを見ると周りは俺達を見ていた。
慌ててエータくんの胸を叩き唇を離してもらい、視線で周りを見るように言うとエータくんも気付いたのか、ひょいっと俺を抱き上げた。



空き教室に着くとそっと俺を降ろしてくれた。
「マコト大丈夫?周りの目があるのも忘れて突然あんなことしちゃってごめん」
「いや大丈夫。それより助けてくれてありがとう。」
さっきはエータくんの顔しか見えていなかったが、やっと見るエータくんの全身はまるで海賊そのものな格好で、しかもすごく似合っていて思わず顔が真っ赤になる。

「こんな可愛いマコトを男は放って置かないもんな…もっと早く行けばよかった」
「本当に大丈夫だよ。エータくんが助けてくれたし…。それよりエータくんは大丈夫だった?そんなカッコいいんだもん。エータくんこそ皆が放っておかないよ」
『女装するとは知ってたけど、さらにマコトが可愛くなってたから驚いた』『胸元そんな開けて、カッコよすぎだよエータくん』と褒め合い、互いに『マコトが可愛くて!!!!』『エータくんがカッコ良くて!!!!』と言い合い、いつの間にか話が逸れていることに、ふふふと2人で笑い合った。






おまけ
後日学校ではイケメン海賊がセーラー美少女を爽快に掻っ攫って行ったという噂が広まり、その事を聞いた俺達は顔を見合わせて笑い合った。
ことの真相を知るのはきっと俺とエータくんだけ。
幸いにも同じクラスの奴等は俺達の公開キスシーンを見ていなかったおかげで事なきを得た。

そして文化祭で着ていた服は一部を除きもらっていいと知り、俺はセーラー服と、ついでに早見の着ていたメイド服をもらってきた。
その事をエータくんに言うと『きっと可愛いだろうね。楽しみ』と何故か意味あり気に笑っていた。






解説
イチャイチャコスプレイをこのカップル達はこの先すると思います。
あと今回のことでマコトくんは化粧技術を磨き、いつかエータくんに化粧を施して二人で女装デートすると思います。

エータくんは基本紳士的ですが、目は口ほどに物を言うという感じでマコトくんにはエータくんの感情がモロばれしています。


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