イケメン×健気3
リクエスト



2時間目の授業がようやく終わり、ふぅと息をついているとトントンと軽く肩を叩かれ振り向くと、そこには春樹くんが立っていた。
「羽波…今、いいか?」

例の1件で俺と春樹くんはお付き合いを始めた訳ですが、見つめるだけの存在だった春樹くんとお付き合いが出来るなんて毎日天にも昇るような思いで、正直俺の心臓は何個あっても足りません。
そして付き合うにあたって俺達はルールを決めた。
今まであまり仲良い様子のなかった俺達が突然一緒にいるのは周りから見たら変に思われるかな?ということで、学校の中では一応今まで通り一定の距離をとることにした。
それなのに声を掛けられるなんて何かあったかなと思い当たることがないか考えるが、全く思い浮かばない。

「休み時間にごめんな。」と小声でコッソリと話し掛ける春樹くんに「大丈夫だよ」と返して俺は椅子から立ち上り、なんだろうとドキドキしながらも春樹くんの後ろを着いていくと、人影のない場所へと連れていかれた。

「えっと…どうしたの?なんかあった春樹く…んっ!」
何故こんな所に自分は連れて来られたのか聞こうと、自分より少し背の高い春樹くんを見上げると突然春樹くんの顔が近付き、口を塞がれた。

「なっ、ななななな!!」
「羽波は可愛いな。ふふ、ごめんね。二人きりだったから思わずしたくなっちゃった」
ニコニコと爽やかに笑う春樹くんを見ながら両手で自分の口元を抑え、先程の感触を思い出しては声にならない声を出す。
嬉しさと恥ずかしさで今の俺の顔はきっと真っ赤になってるだろうなと自分でもわかる。
今すぐにでもこの場を離れたくて仕方がなかったが、春樹くんが思い出したように「って、違う違う。こういうことがしたくて羽波を呼んだんじゃないんだ。その、明日空いてる?」と聞いてきたことで自分も我に返った。

「明日?うん。暇だけど…何かあるの?」
「ならよかった。じゃあさ、明日デートしようよ」
バックに星が見える程爽やかな笑顔で、大好きな春樹くんに誘われて俺は断る訳もなく、直ぐさま了承した。

「よかった。じゃあ10時に駅前ね。…こんなことだけの用事なのにワザワザ呼び出しちゃってごめん。直ぐにでも明日空いてるか聞きたくて…」
「別にいいよ。それに、学校で春樹くんと話せたの嬉しいし」
俺の発言を聞いた瞬間、前からギュッと春樹くんに抱き締められた。

「どうしたの?春樹くん」
「……羽波から離れたくない。ずっと二人でここに居たい。羽波とイチャイチャしてたい。羽波すんごい可愛い…。」
「え?ダメだよちゃんと授業受けなきゃ」
やだとワガママを言う春樹くんもカッコ良くて思わず『じゃあ次の時間はサボって二人でここに居よっか』と言いたくなるのを堪え、「春樹くん教室に行こう?イチャイチャは今日の放課後にいっぱいしようよ」というが「でも…」と愚図る春樹くんのほっぺにチュッと軽いキスをした。
「……放課後、いっぱいイチャイチャしよう?」
「羽波!!!」
さっきよりもさらにギュッと抱き締められたが、「ほら行こう」と言う俺の言葉に「うん」と言って、素直に俺を離してくれた。



宣言通り放課後は思い出すと全身真っ赤になるぐらいイチャイチャした。
春樹くんはずっと俺を抱き締めては甘い言葉を言うし、俺はイチャイチャすると言った手前恥ずかしくても拒否出来なくて全部受け入れるしで、もう頭から湯気が出るほどだった。
家に帰ってきた時は精神的にも肉体的にも疲れていたけど、帰ってすぐに持っている服をひっくり返し、明日何を着て行こうかとうんうん言って、悩みまくった。
結局次の日の朝も悩んだ末に無難な黒のVネックにジーパンという格好となったが、まぁ不格好じゃないし妥協点。
準備が終わってさぁ行こうと時計を見たがまだまだ待ち合わせ時間まで程遠かったが、ドキドキする気持ちが抑えきれず、早いが家を出た。

春樹くんとの初めてのデートに、これは夢なんじゃないかと待ち合わせ場所についてからも何度も頬をつねっては確認した。
何度つねっても痛くて、これは現実なんだと実感するたびに嬉しくて叫びたくなる。
いつも見てるだけだった春樹くんとデートだなんてニヤニヤが止まらない…

「おはよう、羽波!待ち合わせ時間より早めに来たのに、羽波が居てビックリしたよ。来るの早いね」
「春樹くん、おはよう。その…楽しみでいつもより早く家から出ちゃって…」
「……何それ可愛すぎだろクソ…」
「え?」
ヤバっと言いたそうな顔をしてパッと口に両手を当てたあと何もなかったように『んーん、なんでもないよ。じゃあ行こっか』と言い、歩き始めた。
なんだったんだ?と思いながらも置いていかれないように春樹くんの後ろを着いていった。



着いた場所は映画館で、時期的にホラー映画を見たが、男のくせに怖くてずっとガタガタと一人震えてしまった。
春樹くんも怖がってるかなとチラリと隣を見ると真剣に画面を見ているだけで、怖がっている様子は全くなかった。
映画が終わり「怖かったね」と声をかけると「突然出てくるから心臓に悪いよな」という言葉に何回も首を縦に振った。
突然出てくるなんて反則なんだよ!!それで驚かない奴なんている訳が無い。
映画の内容を思い出し、若干涙目になりながらも春樹くんに連れてきてもらってきたお店でお昼を食べつつ、お互いの映画の感想を言い合った。



「羽波は何かしたいことある?」
「したいこと?んー…ないかなぁ…」
「行きたいところがあるんだけど、そこへ行っていい?」
春樹くんの行きたい所か…何処なんだろうと思いながらも頷くと「こっちにあるんだ」と言われて鼻歌混じりに連れて行かれた。

「ここだよ。」
そう言われて連れて来られた場所を見ると、看板にはネコcafeと書いてあった。
なんでここに?っという顔をしたからかニコリと笑って「羽波ってネコ好きなんでしょ?だから連れてきたかったんだ」


「かっわいい〜っ!!」
丸まるネコ。歩くネコ。ネコ!ネコ!ネコ!なネコだらけの空間。
顔がどんどん緩まるのが止まらない。
「春樹くん!春樹くん!あの毛づくろいするネコすっごい可愛いね!」
「そうだね。すっごい可愛い」
ネコの可愛さに先ほどから春樹くんもニコニコしていてさらに俺もニコニコしてしまう。
二人して『可愛いね』『そうだね』と言い合う。

柔らかいネコの毛を堪能していると、突然春樹くんは『ねね。少し目瞑ってて』と言い、それに従うと何か頭に付けられた感触がした。
『もういいよ』という春樹くんの声に目を開けるとキラキラした笑顔で「可愛い」と呟かれた。
付けられた物を手で触るとカチューシャらしきものでふわふわしたものが付いていた。
「?これなに?」
意識を春樹くんに戻すとカシャッという音が聞こえた。
そして撮られた携帯の画面を見せられたことで自分の頭の上に今何が付いているのかを知った。

「ネコの…耳?」
「そう。すごく似合ってるよ。」
そう言いながら優しく喉元を触られ驚きと恥ずかしさで喉がキューと、か細く鳴いた。
そこかしこに本物のネコがいるのに何故か春樹くんはずっと俺をなで続ける。
「俺ばっかじゃなくて春樹くんも!!!!!」
恥ずかしさに耐え切れず自分の頭に付いていたネコ耳を外して春樹くんに付けるとあり得ないほど似合っていた。

「っ〜〜!!!」
「どうかな?」
小首を傾げながら言われ、いつもはカッコイイ春樹くんの可愛い姿に思わずきゅんきゅんする。
「似合ってる…」
「本当?」
そう言って毛づくろをする姿にハルと春樹くんが重なる。
ハルも毛づくろいをする時、顔が終わった後に耳の毛づくろいをしていた。
その姿にハルとの生活を思い出してツキンと胸が痛くなった。
春樹くんはネコにならなくなった日から当たり前だけどハルとの生活も終わってしまった。
数週間だけだが一緒に生活していたハルの存在は大きく、居なくなってからは寂しさや悲しさでなかなか寝付けないこともあった。
だけど最近ようやくハルがいない生活にも慣れてきて、やっとハルが居ないのが当たり前だと思えるようになった。
ハルは家になかなか居ない俺の親の代わりに、その分ずっとハルが俺のそばに居てくれていた。
だからハルが春樹くんだと知った時、嬉しくもあったが悲しくもあった。
ハルは俺の唯一恋愛相談できる相手で、家族だとまで思っていた。
俺にとってハルの喪失感はすごく大きいものだった。

だけどハルは春樹くんで、春樹くんはハルなんだと目の前で変わった姿を見たはずなのに、今ようやくハルが春樹くんだったことを思い知った。
スリスリと擦り寄る春樹くんにハルの時と同じくいっぱい撫でてやると目を細くして満足そうな顔をした。
ハルの居ない生活は寂しいが、春樹くんが居なくなるのはもっと寂しい。
ハルが居たことは確かなことで、ハルとの生活はずっと心の中で、今でも鮮明に覚えている。

「春樹くん、本当のネコみたい」
「まぁ本当のネコだった期間あったからな」
ハルの事を忘れるという訳じゃないが、これからは春樹くんと一緒にハル以上にたくさんの思い出を作っていきたい。






解説
春樹くんは根っこの性格は悪いし口も悪い変態さんなので、羽波くんの前ではいつも猫かぶってます。だけど羽波くんの可愛さにちょいちょい本性が見え隠れしています。

羽波くんにとってハルくんは、相談相手でもあり大事な大事な家族でもありました。なので居なくなったハルに羽波が落ち込んでいることに気付いていたから春樹くんは、羽波くんをネコcafeに連れてきてあげた。

いつか春樹くんと羽波くんが同棲し始めたら『ハル』という名前の黒くて凛々しい毛並みが柔らかいネコ様を飼われると思います。


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