ストーカー×鈍感
いつものように学校までの道のりを歩いていた俺こと、木村良樹♂はベタにパンをくわえた奴と曲がり角でぶつかってしまった。

「った…」
「…」
ぶつかった時の衝撃は大きく、俺も相手も吹き飛んだ。
いきなりのことでもちろん俺はコケてしまったが、相手はすかさず受け身をとったようで見た限り怪我はない。

「大丈夫か?ごめんな…」
ぶつかった子に声をかけると相手はあわあわしながら顔を真っ赤にさせ、顔を縦に何回も振る。
とても可愛らしい子で、ぶつかった事も忘れ、朝からついてるなと浮かれていたが時計を確認するとだいぶ時間が過ぎていることに気づいた。

「ごめん。学校あるから!本当に、ごめんなー」
「えっ?あっ、ちょっと…!」
相手が何か言いかけていたが、時間も時間なので振り返らず俺は学校へ向かって走った。




「セーフ、間に合った」
『キーンコーンカーンコーン』
「間に合った。じゃねーよ、ギリギリ過ぎるだろ」
素早く同級生がツッコミを入れてくれるのをニヤニヤしながら見る。

「心配してくれるお前が大好きだぞー」
「おいやめろよ。おまっ、キモッ」
同級生に抱き着きふざけあっていると後ろのドアから『ゴスッ』と鈍い音がした。

なんだ?と音のした方向を見て確認すると、さっきぶつかった可愛い子が教室の扉の前に立っていた。

「あっ、さっきの女の子!」
「っ?!!!!僕は男です!」
さっきはちゃんと見れていなかったが確かによくよく見ると俺と同じ柄のズボンを履いている。
こんな可愛い顔して男なんて信じられない…

「あっ、わりぃ。ってか、どうしてここまで?」
「、、これ、」
突然の登場に驚いたが、なぜ俺の教室にやってきたのかと聞くと、はい っと俺の携帯を渡してきた。

「あれ?あっ…もしかして俺さっき落としてた?わざわざありがとな」
「う、うん」
携帯を受け取ろうと手を伸ばすがすんでのところで携帯を後ろに隠されてしまった。
え?と思い、顔を見ると上目遣いをしながらもじもじと何か言いたそうにしていた。

「ん?何?」
「あ、あの二人きりで話したい事が…放課後、いいですか?」

そう言いながら今度こそ俺に携帯を渡してくれた。

「放課後ね。うん、わかった。携帯ホントありがとね」
「はい。それじゃあ」
じゃあねーと言いながら姿が見えなくなるまで見送った。
見えなくなったところで、そーいえば名前聞くの忘れたなと気付いたが、またどうせ放課後に会うんだしその時に聞けばいいやと友達の元へと戻った。



俺、あの子と時間の約束はしたけど場所は決めてないじゃん
と気付いたのは放課後になってからだった。
どーしようかと考えているとポケットに入れていた携帯が着信を知らせるため震え出した。
こんな時に誰だよと思いながらもでる。

「はい?誰ですかー?」
「あっ、僕です。良樹さんの携帯を拾った!!」
ああ!よかった。
どうしようか悩んでる時に電話かかって来るなんて

「今、資料室空いてるので来てもらっていいですか?」
「わかった今から行く」






「ごめんね、待った?」
「大丈夫です。そもそも僕が呼び出したんですし」
いやいやそれでも待たせてごめん
というと少し顔を赤くしながら笑った。
男だとしてもこれは相当可愛いと納得し、そういえば名前知らないんだったと思い出し聞いてみる。

「僕は嘉山咲です。ココの2年です」
「そうだったんだ。じゃあタメだな。気軽に俺の事は名前で呼んでな」
「はい、じゃあ、よ、良樹っで…。あっ、僕の事も咲って呼んでください!!」
「あぁ、わかった。咲、よろしくな」
俺が咲を名前で呼んだ瞬間、何故か咲が叫び出した。
目を見開いて唖然としてると、咲が倒れそうになり反射的に体を寄せ付け倒れ無いようにした。
少しすると気を失ったのか、ガクッと咲の体重がもろに俺に掛かってきた。

いきなりの事で俺は混乱し、何をすればいいか考えてる内に咲は意識を取り戻したのか『うーん』いいながら起き上がった。

「咲?大丈夫?」
「…やべぇ、超美味そ〜」
下唇を舌でペロリと舐め上げ俺を見る。

「お腹空いt「なぁ、キスしていい?ってか、するわ」」
へっ?と驚いてる間に徐々に咲の顔が俺の顔へと近付いてくる。
あと5cmというところで我に返り咲の顔を押し退けた。

「ちっ…、邪魔すんなよな。いいから大人しくキスさせろ。それかヤらせろ。」
さっきから混乱していて頭が正常に動いてくれない。
なんなんだこれは…それにさっきから咲が何かおかしいし…

「し、質問なんだが‥!!」
「ん?ヤるk「違う!…いや、あんさ…お前咲だよな?」
「当たり前だろ、ずっと一緒に居たじゃねーか」
「でも、性格と口調が‥」
目の前の咲らしき人は、『あぁ〜』と納得した顔をした。

「アレも咲だし、俺も咲。要は二重人格って事。おーけー?」
「はっ?…いや、わかったけど二重人格って…」
もしかして暗い過去のせいで二重人格に…?
そりゃあんな可愛い顔だもんな何かあってもおかしくない

「ごめん今のはn「もう一人の咲が、お前の事スゲー好き過ぎて俺が生まれたってわけ」
はっ?俺が好き?

「咲とは一度もあった事ねーよ。だから俺のことを好きになるなんてあり得ねぇだろ」
「お前はあったことなくても、もう一人の咲はお前にあったことがあんの。そんで一目惚れしたんだよ」
もうちょっとネタバラシすんなら、お前は知らないだろうが、もう一人の咲はお前にいつもストーカーしてたぞ。
あとをつけたり、私物を取ったり、携帯番号も勝手に調べてたな…
そりゃー数えたら切りがない程色々やってたよ…良樹は気付いてなかったのか?

驚き過ぎて口が閉じらない。
それじゃまるで咲が俺のストーカーみたいじゃないか…

「はぁ……よく考えてみろ、今日なんて曲がり角でパン咥えたやつにぶつかったんだぜ?マンガだけだろんなもん」
確かに言われてみればその通りだ。
今時漫画でもないシチュエーションが現実に起きるなんてあり得ない。

そういえば、パンツやタオルが俺の分だけ無くなってたのもそういう事だったのか…

「あと、携帯もお前とのキッカケを作るためにワザと鞄からスッとな」
鞄の中にしっかり入れてた筈なのに、そりゃ落とすわけないよな…

「他にも名前教えてないのに良樹の名前を知ってたり、電話番号だって知っていた。…気付いてなかったろ?ホント良樹は鈍くて可愛いなぁ」
「…なんでそんな犯罪な事止めないんだよ」
咲はこちらにゆっくり近づき、ニヤリと笑い俺の顔に手を滑らせた。

「なんでって、そりゃー俺もお前の事が好きだからに決まってんだろ」
可愛い咲と違い、こちらの咲は同じ可愛い顔しているのに見惚れる程カッコ良い。

「はぁ〜、やっと本物に触れられる。…あいつがぐだくだしてるせいでクソ長かったわ…」
俺の尻を触ったり太ももを撫でる咲に驚きながらも抵抗ができない。
ちかくして満足したのかパッと身体を離された。

「言いたいことは言えたし、良樹には触れたし、今日はもう咲に体返すわ。またな」
そう言った瞬間また咲は意識を手放したがそれはほんの一瞬で、直ぐに意識を取り戻した。

「もう一人の咲が全部言っちゃいましたが、ずっと前から好きです。ヤらせてください」
目が覚めたものの、何故か咲はすぐに俺に襲い掛かってきた。

可愛い咲の方が、本能に忠実なようで押し倒される。
はぁはぁと息を乱し興奮しながらも咲はマウントポジションをとろうとするので必死に足をバタつかせ咲を退かす。

咲の体が俺よりも小さいおかげでなんとかなったがまた襲おうとする咲に慄き、肌けたYシャツを押さえながら必死で走って逃げる。

どうせ逃げ切れないと悟ったのは、それから数時間後だった。






解説
可愛い顔してストーカーで二重人格の咲くんから逃げれません。逃がしません。

良樹くんは鈍感です。全く気付いてないです。変だなぁと思っても気のせいかで済ませてました。

今まで何回かストーカーする以外にもアプローチしたのにことごとくスルーされたり気付かれなかったりしてました。


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