主×執事
許されないとしても私は、主である直也様が大好きです。
直也様に拾ってもらって10年。
主にこんな感情を抱いてはいけないとは重々わかってはいるが、なかなかこの感情を消すことが出来ない。

最近は主である直也様と一緒にいるだけで、顔は赤くなり、胸の鼓動は高まり、冷静に物を考えれなくなってしまう。
意識をしてはいけないと思っていても、気が付くと直也様の事しか頭にない状態。
これでは直也様のお世話に支障をきたしてしまう。

今だって直也様が
「なぁ、コータ。これ俺に食わせて」
と可愛く小首を傾げながら言ってくる姿はとてもとても可愛らしい。
直也様が付けてくださった私の名前をいつだってその可愛い唇から音を出し呼びかけてくれるのは正直興奮する。

「直也様‥、あーん」
「んっ、美味いよコータ」
とても可愛らしい笑顔を私に向けてくださる直也様に思わず私は顔を背けてしまう。

「コータ?どうしたの?」
「…いえ、なんでもありません」
「なら、もっと頂戴?」
上目遣いでの直也様のお願いに私の理性は激しくグラつく。
私がいつ直也様に手を出してもおかしくない。

主に対してなんたる無礼か自分自身でも重々承知しているからこそ、この状態はあまりよろしくない。
けれどそれを私が拒否出来るはずもなく『はい』と頷き、ただただ気持ちを押し殺して直也様に接することしか出来ない。




直也様の夕食も終わり、自分の部屋に戻る。
少しベッドに寝転がってうたた寝をしているとコンコンと誰かに戸をノックされた。

「誰ー?加藤さん?仕事ならさっき終わらせ‥直也様!!どうしましたか?」
執事長の加藤さんが仕事の確認で来たのかと思いベッドから扉を見ると、直也様がマクラを抱き抱えながら扉の前に立っていた。

「怖い夢見ちゃった‥、一緒に寝よ?」
「な、直也様?!」
「コータ‥駄目?」
直也様が私の部屋に来てくださってる時点で私はもう容量オーバーでテンパっているというのに、直也様と
い、一緒に寝るって!!??!
「わ、わかりましたので、直也様は自室でお待ちください」
直也様からの命令に背けるはずもなく了承を返したが、私は理性を保てる自信がありません。
はやめに次の就職先を探すべきでしょうか…




直也様の自室の前まで来たものの、そこから一歩も動けない。
ただノックをして入るだけだというのに私の手は震えて言うことを聞いてくれない。
だが私がくよくよしてる間に直也様が再び怖い夢を見てうなされているかもしれないと思うと、今すぐにでも私はこの扉を開けて直也様を助けなくてはならない。

やっと部屋に入る決心をし、トントンと扉を叩くが返事がなく、勝手ながらも「直也様、失礼します」と言い中に入ると、
既に直也様はベッドで眠っていた。

内心安心しながらも直也様に近づき、毛布を掛け直し整えた。
そしてふと視線を彷徨わせると、直也様だけしか入れない部屋が開いているのに気が付いた。

いつもは鍵が二重でかかり、直也様しか入れないので
直也様に拾ってもらってから私もその部屋に一度も入ったことがない。
そんな部屋が開いてるので少し興味が出て、好奇心で部屋に近づき扉を開けた。

暗かった部屋の明かりをつけ私は絶句した。

何故か私の写真が壁一面に張り付められていた。
それも直也様に拾われた年から最近のまでの、際どい写真や、私の笑った顔や怒った顔など様々な写真がある。

「‥なんで、私の写真が‥?」
「うわぁぁぁああ、コータ見ないで!!」
いつの間にか起き、後ろに立っていた直也様に視界を塞がれた。

「あの、…あれって全部、私の写真ですよね?…なんで直也様が?」
私の目に被さっていた直也様の手を退かし直也様に向き直ると、直也様は視線をさ迷わせて私の方を見ようとしない。

「……だっ!だって、コータが可愛いから!!‥」
!?私が可愛い?
そりゃ私だって直也様を可愛いとよく思いますが、男に対して、しかも私なんかを可愛いと言うなんて…

「可愛い‥ですか?」
「うん。いつも押し倒しそうになるの我慢するの大変なんだよ!」
押し倒す?私を?直也様が?
確かに背は私より直也様の方が5cm以上高いですが、
行動や中身が幼く、可愛らしいあの直也様が?

「直也様!目を覚まして下さい!私が可愛いなんt「コータはすんごい可愛いよ。バレちゃったならしょうがないや…
ねぇ、俺コータのことスッゴイ好きだよ。もちろん付き合ってくれるよね?」
主である直也様と私が付き合う…?
直也様の事大好きですが恐れ多くてとてもとても…

「直也様とお付き合いするなんて、その、あの、…私には恐れ多いです!!」
「ふーん。ねぇコータ。コータは主である俺の言うことを聞けないの?」
「いえ!そんな滅相もございません。従わせていただきます」
直也様の発言にNOと言える訳もなく、直也様の前で膝を降り直也様の手の甲にキスを落とす。

「えへへ〜。コータのこと絶対幸せにするからね」
「えっ?あっ、ありがとうございます?」
まぁ、直也様が嬉しそうならなによりです。
少し形は変わってしまいましたが私も直也様とずっと一緒にいれるなんてとても嬉しいことです。







解説
人身売買で売られていたコータを直也様のお父さんが同い年ぐらいの世話係として買い与えた。
コータを初めて見た時点で直也様はコータに一目惚れし、秘密裏にコータの写真を撮って自分に渡すよう執事やその他のメイドに命令していた。
いわばあの部屋はコータ(写真)の部屋。

一応2人とも高校生で学校内では他人のふりをしている。
直也様は偉いところの坊ちゃんなので、それを影ながらに守るのがコータの役目。
だから表立って直也様の近くで守る方が色々と守りにくいため学校内では他人のふりをしている。
だが直也様は今だにそのことを納得しておらず、好きあらばコータを呼び出し、学校内で2人きりになっている。


prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -