不良×平凡
16年間平凡に過ごしてきた俺に最悪な出来事が起こりました。



16年間友達も普通。
学力も体力も普通。
ただ彼女は居たことない普通な俺は、やっぱり普通な高校へ行った。
普通の高校にはやはり普通な奴しか居なく、馴染めそうだなと思い過ごして来た一週間。
友達と言える人は少しできた頃、席替えをすることになり、移った席は窓側から2個目の一番後ろの席。

ラッキーと思いながら隣の席が誰だか確認すると、その席は入学当初から一度も学校へ来ていない霧島湊というやつの席だった。

噂では霧島は病弱で、学校へ行きたくても来れないらしい。
もし来たら優しくしようと俺は深く心に決めた。

うん。あの時の俺のバカァ!!




何があったかというと、次の日の朝
いつもどおり教室に入り、自分の席に座ろうと席を見たら、隣の霧島湊の席に伏せて寝ている人がいた。
きっとあの人が病弱である湊君だろうと俺は声をかけた。

「霧島湊君だよね?俺、隣の席の浅野満っていうんだ。よろしく」
「あ゛ぁ?」
俺は叫びたくなった。
…だ、誰だ!霧島湊が病弱だって言ったのは!

こちらを向いた霧島君は病弱と言う言葉とはかけ離れた不良男子だった。

「わ、わりぃ。…満だっけ?俺と仲良くなりてーの?」
「えっ、いy「そんなに言うならしょーがねーなー」
さっきの不機嫌そうな顔とは違い、ニコニコしながら俺を見る霧島君。


平凡な俺は、無駄な親切心を発揮したことで、少し変な不良とお友達になってしまいました。




あれから数週間。
最初はガタブルと怯えていた俺だが
不良な見かけとは違い、とても優しい霧島君に俺はなついた。
っというか、どんどん霧島君に惹かれて好きになってしまっていた。

同性に恋する抵抗や葛藤があったといえばあったんだけど。
あまりにも『好き』という言葉が、俺が霧島君に対して思っている感情にピッタリな言葉でストンと納得してしまった。
いつかは霧島君に告白したいなとは思うが、告白して霧島君に嫌われたらなかなか立ち直れなさそうなので、それは当分先になるだろう。





初めて会った日から霧島君は毎日学校へ来るようになった。
一緒に授業受けていてわかったことだが、不良なのに霧島君は勉強は出来るし、運動神経良いし、性格良いし、とてもカッコイイ。
だからそのせいで最近、俺はクラスの女子に睨まれるようになった。

今さっきだって、霧島君と帰ろうと思って霧島君を待っていたら女子に呼び出され
『お願い。霧島になんで彼女作らないか聞け』って言われた。

俺だって好きな人の好きな人を知りたいけど、聞くのが怖いんだよ…

だけど女子の『お願い』と言ってるくせに命令口調の言葉に断れず俺は頷いてしまっていた。

どうしよう。霧島君に何て聞こう
と考えてると張本人の霧島君が前方に見えてきた。

「満ー!お前何処に行ってたんだよ」
「霧島君がカッコイイからいけないんだよ!もぉー」
八つ当たりも含め、霧島君に構って欲しくて無理難題な文句を言うが
「ん?カッコイイ俺が遅くて満くんは淋しかったのかい?」
それはごめんな。と言って少し意地悪そうに笑うのがまたカッコ良くてたまらない。

「むー、からかいやがって!俺は霧島君がカッコイイから呼び出されて困ってるのにぃー」
「っ!!満、誰に呼び出されたんだ?2組の藤原か?それとも3組の田山か?
…あっ、もしかして同じクラスの渡野辺か?」
「霧島君、それ全員男子だよね?俺なんで男子に呼び出されんの?」
突然慌て出した霧島君にビックリする。
多分今、霧島君と話が噛み合ってない…


「そりゃー、満が可愛いから襲おうと思って呼び出してるに決まってんだろ」
俺を襲う…?食べるって…こと?
俺ってアソパンマンみたいに食べられたの…?

「霧島君、俺ってアソパンマンだったの?」
「いや、満は可愛いからアソパンマンじゃなくてメロンパンなちゃんだな」
良かった、俺ってメロンパンなちゃんだったんだ!!
…って

「ちがーう!」
「さっきからどうしたんだよ?」
「だから俺を呼び出したのは、霧島君の事が好きな女の子達だよ!!」
そうだったそうだった。
危うく何話してるのか忘れるところだった…
いや、半分以上忘れてたけどさ…

「女共に呼ばれたって…、満ケガは?大丈夫か?」
さりげなく俺の心配してくれる辺りやっぱり霧島君はカッコイイ。

「うん、大丈夫。
あー…なんかね、女の子達になんで霧島君は彼女作らないのか聞いてって言われた…」
答えを聞くのは怖いけど、今はそれ以上に女の子達にまた後日何か言われる方が怖かった。

「…満は、…好きな人、いるか?」
何故か真剣な顔をしだした霧島君は、俺に好きな人がいるかを聞いた。
俺が先にその質問を聞いたんだから霧島君から答えてよと思ったが、霧島君の顔を見てふざけちゃいけないんだと思い素直に答えた。

「いるよー。だけど多分無理だから諦めてる」
「は?!おい、それ誰だよ!?俺知らねーぞ!!」
俺の言った言葉に霧島君は怒りながら返事を返した。
いや、霧島君が知ってちゃ意味ないよ…
俺の好きな人は霧島君なんだからさ…

「いいから答えろ。俺の知ってる奴か?
…俺の物を掻っ攫う可能性がある奴なんて絶対叩き潰してやる」
不機嫌そうなオーラ丸出しで、少し後ずさってしまうが
それよりさりげなく、俺は霧島君の物だと宣言され顔が赤くなる。

「知ってる?っと思いますけど…」
「誰だ、言え。今から潰しにいく」
誰だって聞かれても…あなたですよ…
それと、今の発言だと自分で自分を潰すってことになりますよ?

さっきから霧島君が怖くて現実でも心の中でも思わず敬語になってしまう。

霧島君に気持ち悪がられたらどうしようと思い、なかなか口を開けずにいると
霧島君の顔が徐々に近付いてきていた。

気付いた時には既に遅く、『チュッ』っと何かが俺の唇に触れた。いや何かなんてわかってる。
だって霧島君がまた顔…もとい唇を近付けて来てるんだもん

「待っ!霧島君なんでこんなこと?」
俺は霧島君の体を押さえてこれ以上近付けられないようにする。

「っ…、満が好きだからに決まってんだろ!だから満の好きな人に満のファーストキス取られないように俺がt「もう…、俺の好きな人にファーストキス取られたよ」」
「あ゛ぁ?ちきしょー、やっぱり潰すしか」
あらら、まだ霧島君気付いてない?
俺的にはわかりやすく言ったつもりだったのに

「俺が好きなのは湊だよ」
「な、名前呼び…!!」
あれ?名前呼びには食いついてるけど、告白への反応が帰ってこない。
俺の告白ちゃんと聞いてたのかよ?
今、勇気出して言ったのにさ…
もう、しょうがない

「湊!!!!大好き!!!!」
「えっ?はっ?うん、俺も好き。…えっ?」
こんなに大声でハッキリ言ったのにまだ惚ける湊に少しイラつく。

「えっ、今なんて?」
「だーかーらー、俺の好きな人は湊なの!!!!…わかった?」
「…わかった。わかったけど、一旦俺の事殴ってくれ」
そう言う湊を疑問に思いながら軽く殴ると、その殴った手を湊は力強く掴んだ。

「夢…じゃ、ない。…本当に、満は俺の事が好きなんだな?嘘じゃないんだよな?」
「嘘じゃないってば。あと、手痛い」
わりぃと言い手を離してくれたが全く湊は悪びれる様子はなく、むしろニヤニヤと顔が緩んでる。

それを見て『恥ずかしい奴だな』と思いながらも湊の腕を引き、俺は湊の胸板に抱きつくと
湊も今度は優しく俺をギュッと抱き締めてくれた。




最初は怖くて、湊に話しかけた自分を恨んだけど
今はもう、こんなに溢れるぐらい湊が大好きだ。
…はぁ、幸せすぎてこのままじゃ死んじゃいそー…





解説
霧島君は『不良』という肩書きのせいで小中友達が出来なくて、高校からは普通になろうと黒染めしたり笑顔の練習をしたのだが入学式当日に熱出した不憫さん。
そして出会いの日『やべぇ、これは無理だ。もう友達なんて出来ねーよ』と落ち込んでた時に満が声をかけてくれた。だからその時は『友達!は、初めての友達!!』と純粋に嬉しがってたけど、どんどん独占欲やらなんやらが出てきて
しまいには満をズリネタにし始めて、そこでようやく『あっ、好きだわ』と気付いた。

黒髪で不良脱却したつもりだが、強面+オーラ+ピアス+制服の着方でイケメン不良にしか見えないということをまだ霧島君は気付いていない…


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