イケメン×健気
「にゃにゃ〜、にゃにゃにゃにゃにゃ〜」
いきなり『にゃ〜』と喋ってるが、俺は別にイタイ奴じゃないからな

ただ
「にゃ〜ん」
目の前にいるこいつ、猫のハルが可愛すぎるから思わず出ちゃうんだよ

「聞いて聞いてハル!今日俺ね、春樹くんと2回も目が合ったんだよ」
ハルに笑いかけて撫でてやると、ハルは変わらない声色で「にゃ〜」と鳴いた。

はぁ〜、ウチの家のハルくんは世界一可愛いくてカッコいい猫さんだなぁと無意識に顔がニヤけてしまうのはきっとしょーがないことだろうと自己完結した。



ハルは元々は野良猫で、3〜4週間前に俺がコンビニから帰ってる途中でたまたま拾った。
拾って直ぐに汚れていたハルを風呂で洗ってやると、風呂から出た頃には黒くてサラサラな毛並みになり、キリリとした目にピンと立った尻尾でよく見ればとてもカッコ良い猫さんだった。
最初の方は爪を立てたり威嚇したりと攻撃的だったが、
今じゃ飼い主をメロメロにさせてしまう魔性のイケメン猫様になった。

「ハル〜ハル〜。カッコいいぞハル〜♪」
とってもカッコいいハルを抱き締めながら言うと、ハルは「うにゃ」と言いながら少し体をバタつかせた。
「ハル〜!!」
にへへと笑ってハルを離すとハルは俺の膝の上に座った。

「そーいえば、最近春樹くんの笑顔の回数が多くなったんだよね。なんかあったんかな?うーん、理由はわかんないけど春樹くんが嬉しそうだと俺も嬉しくなるんだよね。
…あっ、勿論ハルがいてくれるだけでも俺は嬉しいよ」
さっきから出てくる春樹くんとは、俺の片想いの相手でとても爽やかなカッコ良い人。
俺も春樹くんも男でこの恋は叶わないってわかってんだけど、どーしても諦められない。
少し前に諦めようと他の人を好きになろうとしたがどうやっても好きにはなれなかった。
だから無理に諦めようとせず、好きになった人が春樹くんで、それがたまたま男だったんだからしょーがないと開き直り、諦められるまでは勝手に想わせてもらうことにした。

でも、春樹くんにとって俺は気持ち悪い存在だろうからなるべく関わらないように心掛け、視線だっていつも春樹くんに向けてたら怪しがられると思い、1日5回までと自分の中で決めた。
辛くないって言ったら嘘になるけど、今のままでも幸せだし満足している。

「ほらハルゥー、一緒に寝るぞー」
「にゃー」
それに今は、ハルが居るから恋とか関係なく幸せだし。
一度床にハルを下ろし、布団を整えてからハルを呼ぶと、ハルはトコトコと近寄り大人しく布団の中に入ってきた。
そして俺は、ハルを抱き締めながら眠りに着いた。



「ハル〜おはy…」
目を覚まして、ハルに声をかけようとハルを見たが既にそこにはハルの姿はなかった。

「朝はハル、居ないんだった…」
ハルは朝になると居なくなり、夕方になると帰ってきて俺の膝に寝転がる。
まぁ、猫って気紛れな動物って言われてるし帰って来てさえくれればいいやと思いながらも、
朝、ハルと会えないのは少し寂しいなとも思ってしまう。

まぁしょうがないかと思い一回伸びをし、気持ちを切り替えて起き上がり制服に着替えた。
早めに着替えを済ませ、朝食を食べに下に行くと
『今日は帰ってこれない』という置き手紙と共にサンドイッチが置かれていた。

「母さんも父さんも忙しいんだな」
独り言は部屋に響き、なんだか自分の家だが一秒でも長く居たくなくて足早に家から出て学校までの道のりを歩いて行った。




「はよー」
「ん。雅はよー」
唯一の親友とも言える雅に挨拶をすると
早速「なぁなぁ聞いて」と言って、最近出来たばかりの彼女自慢をしてきた。

「はいはい、サヤちゃん可愛いですねー」
俺の棒読みの返事に、だろ?あっ、可愛いからって惚れるなよ!っと言ってくる雅を横目に春樹くんに視線をズラした。
春樹くんはいつも通り友達と楽しそうに話している。
もうそろそろ雅に視線を戻そうとした時、ほんの一瞬だが春樹くんと目があった。

最近よく目が合うようになった。
もしかして春樹くんのことガン見しすぎて
俺が春樹くんの事好きだってバレちゃったんかな?と焦りながらも誰にもバレないよう普通を装い、雅の話に相槌を打った。

そこからは雅の話をちゃんと聞いてやり、雅の話を聞いて俺も恋人欲しいなという気持ちになった。
まだまだ春樹くんを諦められる兆しはないけどな…




今日も春樹くんカッコ良かったよなぁと思いながら家に帰ると
玄関でちょこんとハルがお出迎えをしてくれた。
お出迎えをしてくれたハルに嬉しくなりハルが嫌がるまで撫でてやった後、部屋へ向かうとハルもちょこちょこと着いてきた。
俺は顔を綻ばせながら部屋のドアを閉めず普段着に着替える。

着替えてる間中、ずっとハルにじぃーっと見られていたので
猫のハルには伝わらないが冗談半分で「ハルのエッチィ」っと言うと
ハルはプイッと余所を向いてしまった。
たまたまだろうがタイミングがいいなぁと感心し、下に行っただろうハルを追いかけて俺も部屋を出た。



晩御飯も先ほど食べ終わり、あとはお風呂へ入って寝るだけになった。

「んー、もうそろそろお風呂入ろっかハル。」と腕を伸ばし、伸びをしながら膝に座ってるハルを誘うと
「にゃー」と言って、俺の膝から降り、一人で風呂場に向かった。

さっきもそうだったが、ウチの家のハルくんはもしかして人間の言葉がわかるんじゃ?っと、一人考えながら俺も風呂場へ向かった。



先にハルを風呂場に入れて俺もパパっと服を脱いで入ると、ハルはバスタブの上に座っていた。
「ハール、ここおいでー洗うから」
ハルはバスタブから降りて俺の目の前にやってきた。
目の前にやってきたハルの体を隈無く洗い、お湯の中に入れると足をバタつかせ沈まないようにバスタブに手を掛けた。
その姿を見ながら俺は顔をニヤつかせ、自分もササッと洗い俺も湯船の中に入ると犬かきをしながらハルが俺のところまで来た。
その姿を見て思わずハルをギュッと抱き締めた。

「ハル可愛いすぎー」
満足するまでハルを抱き締め、風呂から出た後はポカポカな余韻を残し、テレビをボーッと見ながら寝っ転がっていると腰辺りにいたハルが俺の顔まで来て、顔をペロペロと舐め始めた。
くすぐったいなと思いながらも好きなようにさせ、舐めているハルを見てふと俺はイタズラ心が湧きプチュッとハルにキスすると
ボワッと何故か目の前に春樹くんが現れた。
って、春樹くんんんんん?!

「ななななななんで?!」
ちゃんと服は来ているが髪が濡れたまんまの春樹くんは「あっ、バレた?」と言いながら、隣に座って来た。
バレたって、はっ?ってか、あれ?ハルは何処?

「ハルは?あと、バレたって?」
「ハルは俺だよ。キスされたら人間の姿に戻っちゃうみたい」
「ハルは春樹くんで、春樹くんはハルってこと?」
「そーいうことだね」
そー言いながら笑った春樹くんに見とれていたが大事なことに気付いた。

「じゃあ今まで俺がハルに言ってた春樹くんのことって…「全部、本人に聞かれちゃってたね」」
モロバレだったってこと?
じゃあハルが春樹くんなら、俺はさっきまで春樹くんと一緒お風呂入ってたってこと?
…どうしよう。恥ずかしくてしにそう

「猫の姿だから言えなかったけど、俺も大好きだよ羽波」
ニコリと笑いながら少しずつ顔をこちらに近付けてくる春樹くん。
「ど、どの感情で?」
「勿論、この感情で」
そー言った瞬間キスされた俺。
放心状態になりながらも
俺、春樹くんにキスされちゃったと頭がお祭り状態になっていた。

「多分、猫だったのは羽波を深く知るための運命だったんだよ」
春樹くんは俺に手を差し伸べながら「俺と付き合ってくれませんか?」と聞いてきた。
答えなんてわかりきってるのにと思いながらもその手を俺は掴んだ








解説
微ファンタジー。人間が動物になったり、動物が人間になる話って素敵ですよね。

呪いという訳ではないのですが、キスしたことで魔法は解けました。
なのでもう春樹くんは猫にはなりません。


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bkm
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