変態×ガチムチ
「せんぱぁい、今日も可愛いですね」
「ひゃあっ…やめ、やめろよ!!」
セリフだけ見ると可愛い子に思えただろうが残念。俺はただのガチムチな学生だよハハッ
いや…ちょっと違うか…
ほんの少しだけ『乙女思考』が入ってるだけのただのガチムチな学生だな
そんで俺の事を『先輩』と呼ぶこいつは、染谷という1個下の後輩なのだが
この染谷は何を思ってんのかわからんが、こんなガチムチな俺を見て『可愛い』と言ってくる変人だ

せっかく顔はカッコ良いのに性格が勿体無さすぎる…
これが世に言う残念なイケメンってやつなんだろうな
染谷のおかげでとても納得できた

って、あぁ…現実逃避しすぎたせいで染谷が調子に乗り始めているじゃないか…
さっきも不意打ちで首を触られて変な声が出たのに、反省せず染谷が脇腹や腰を、触ってくるせいでまた変な声が出てしまう

「なぁ染谷」
「何ですか先輩?」
俺の身体を容赦なくまさぐる染谷腕を掴み、睨み付けながら声をかけると
俺と対照的に満面の笑みで返事を返してきた。

「俺をよぉーく見てみろ」
こんなガチムチ野郎に構うんじゃなくて、お前なら可愛い女の子の方から寄ってくるんだし、女の子ん所に行けよ

「…先輩。じっくり見てもやっぱり可愛いですね」
「あぁー…よし。染谷、俺と話し合おうか」
はい っと、先ほどと変わらず嬉しそうな笑顔で言う染谷にため息をつきたい気持ちになるがそれをグッと抑え

「とりあえず、場所移動するか。俺ん家に来い」と言うと「先輩の家ハァハァ」という染谷の声が聞こえた。
はぁ、全く…俺の家のどこにそんな興奮する要素があんだよ…




俺の家につくと案の定染谷は『ハァハァ』と興奮しながら、『ここが先輩の……すぅーはー』と言い、息を吸ってる姿を見て、家に連れてくるという判断を失敗した事にやっとそこで気付いた。
「玄関で変なことすんな。部屋まで連れてかねぇーぞ」
俺の言葉を聞き、さっきまでの変態行動を素早く止め
大人しく俺に着いて来た。


何故俺がワザワザ染谷を自分の家に連れて来たかというと、話し合うためが第一だが
次に俺から離れてくれるよう、俺の乙女趣味を見て引かれようという考えが思いついたからだ。
俺の部屋は、こんなガチムチな俺に似合わずぬいぐるみや可愛い物で溢れている。
こんな部屋を見れば絶対俺の事を軽蔑するだろうと、
「部屋入れよ」と言い部屋に入らすと、やはり俺の予想通り部屋を見た染谷はビックリした顔し、軽蔑してるのかさっきまでの勢いがなくなり突然黙り込んだ。

おぉ!成功か?と様子を伺おうと染谷の顔を覗き込もうとした瞬間、染谷はバッとこちらを向き
「先輩可愛すぎ」と言った。
染谷の言葉に驚き、俺は「ヘッ?」という間抜けな声をあげてしまった。

いやだって、こんなガチムチのヤローの部屋がぬいぐるみや可愛い物、それにフリフリがそこら中についてるのを見て『キモイ』じゃなく『可愛い』なんて言う予想ができるわけねーだろうが

「お前、頭大丈夫か?ガチムチ野郎の部屋がこんなんとか気持ち悪いに決まってんだろ」
何かの間違いだと思い、否定するように言うが
「先輩の可愛さが溢れんばかりに感じるこの部屋、俺スゲー好きですよ」
…ホントこいつ……。
別に誰かに部屋を見せて『気持ち悪い』なんて言われたことはないが、俺だって客観的に考える力ぐらいある。
この部屋はどう考えても気持ち悪いぞ?
俺的には自分の好きなものしかない気に入ってる部屋だが絶対気持ち悪いに決まってる!

「…はぁ、お前、趣味悪すぎ…なんでこんな乙女趣味の部屋見て、可愛いなんて言えんだよ。ありえねぇだろ」
染谷の発言についていけず、呆れながら言うと
「先輩は自分を卑下にしすぎなんですよ、だって…」
そう言いながら、染谷は俺の前まで来てしゃがんだ

染谷の行動に理解することができず、頭にハテナを浮かべながら染谷を見ていると、突然履いていたズボンを脱がされ、ふくらはぎを鷲掴みにされた。

「この、ほどよく筋肉がついてるふくらはぎに、とても手触りが良く白く柔らかい太もも…凄く最高ですよ先輩の足」
俺のふくらはぎを掴んでる染谷の手は、形を確かめるようにサワサワと動き、
太ももには自分の顔を擦り付け恍惚な顔を浮かべている。
いつもの俺なら、迷わず染谷の行動にキレてるが
スゲー幸せそうな顔されちゃ言おうとした言葉も口から出ない。
それに染谷が無駄にイケメンなせいで、行動自体は気持ち悪いのに何故かそれが絵になり、ただただ俺は顔を赤くさせることしかできない。

「柔らかいところは凄く柔らかくて肌触り良いし、それに…すごく敏感ですよね…」
「ひゃぁっ」
俺の足にくっついてる染谷を上から見下ろしながら、染谷の好きなようにさせてるとスーッと太ももの内側に指を這わせ、俺は思わず声が出た。

「…変態」
俺がそういうと染谷は俺の足からパッと手と顔を離し、下から上目遣いで

「俺、もうそろそろ限界なんですよ。先輩の身体や可愛さにさっきからずっとドキドキムラムラしっぱなしですし、こんなに好きだって言ってるのにYesもNoも返事してくれない。やろうと思えば無理矢理強姦することは出来るけど了承の上が良いから耐えてるんですよ。…この際です。ハッキリさせましょうよ!」
と真剣な顔して俺に言った。
染谷って変態だけどそういうところは俺のことをちゃんと考えてくれてんだと変なところに感心した。

「あー…、ワザとやってるわけじゃねーからドキドキもムラムラも俺にはどうもできねーよ。返事は…、俺もお前のこと好きだよ。恋愛感情で。
それと俺の気持ちを第一に考えてくれててありがとな」
俺の返事がよほど意外だったのか、驚いた顔をしながら染谷は立ち上がった。
それを横目で見ながら、染谷に下ろされたズボンを履きながら『そんな驚くことか?』と見つめてると

「え?先輩…俺の事好きなの?えええっ?」
目を丸くしながら聞いてきた。
俺は、あぁそのことで驚いてるのかと納得し
「ああ。そもそも俺は一度も染谷の事、嫌いなんて言ったことないんだが」
もしかして俺がお前のことを嫌いだと勘違いしてたのか?
と聞くと、染谷は無言で首を縦に振った。

「…わかってるからこそ俺に構ってきてるのかと思ってたわ」
少し身体を触ったぐらいじゃ俺は染谷のこと、怒ったことないんだがなぁ
そりゃ、何回も触られれば恥ずかしいくすぐったいし『やめろ』とは言うが、染谷以外の奴がそんなことしたら俺は容赦無く殴る。
俺なりに結構わかりやすくアピールしてたつもりだったんだが失敗してたのかと落ち込んでいると

「でも先輩!じゃあなんで俺に嫌われようとしてたんですか」と反論してきた。
いや、それは普通に考えて
「お前がイケメンだからだろ」
染谷は美的センスや性格に問題はあるが、なんてったってイケメンだからな
染谷が何もしなたって自動的に相手から近づいてくるようなイケメンだ。
染谷が俺のことを好きだと言ってくれても、染谷のことを好きな俺にとっては、こんな俺みたいな可愛げもないガチムチ野郎よりも
可愛くて柔らかい女の子と幸せになってもらいたいと思うのは普通だろ。

どうせこんなガチムチ野郎への気持ちなんて一時的なものだろうし、俺から離れやすいように色々自分の秘密を暴露したんだけど
それを簡単に染谷が受け入れちまうから俺はもう染谷に隠し事がない状態になったじゃねーか


「俺の先輩への気持ちは本物なので決して一時的なものじゃないって事を覚えといてください」
すべてを染谷に告げ終わると、ずっと黙って聞いていた染谷は力強く念を押してきた。
そして、染谷は大きく息を吸い込み真っ直ぐ俺を見て

「俺は先輩の事、大好きです。どうか付き合って下さい」と言った。
変態だけど、こういうところは真面目なんだよなと思いながら
「染谷が俺に飽きるまでの間よろしくな。一応俺も染谷の事はちゃんと好きだから安心しろ」
染谷は少し複雑そうな顔をしながらも、嬉しそうに『わかりました』と頷いた。

だがやはり不満なのか
「俺が先輩に飽きることなんて絶対にないんで、こちらこそ安心して俺に甘えてきてくださいね」と
また念を押して笑った。
本当に俺みたいなガチムチ野郎が染谷の恋人でいいのか?と不安に思うが、本人がそう言ってんだからその言葉を信じてやってもいいかと俺も笑った。








解説
先輩の趣味は筋トレとお菓子作り。
基本的にオンの時は男らしく、オフの時は乙女。
別にオカマではないし、元々男が好きだったわけでもない。

染谷にアタックされるうちに『これが少女漫画で俺が女なら惚れてるな』と思ってたら本当に惚れてしまっていた。
家族は先輩の乙女趣味を知っている。そしてゲイだと勘違いしてる。
結果的には間違ってないが、そのことに先輩はあまり納得していない。
『俺は染谷だから好きなわけで、男が好きなんじゃねぇ』と否定し、家族にはわかってもらえた。

染谷はただの変態。先輩LOVE。
イケメンだからと許されたことは数多。


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