大御所生主×新人生主
やっぱいつ聞いてもヤナギさんはトークは上手いし声も良いし、
あーあ俺もヤナギさんみたいな人気な生主になりたい…
まぁ、夢のまた夢の話だけどな
だけどちゃんと俺の放送を聞いてくれてる常連さんが居てくれてるんだし、あまり贅沢言っちゃダメだよな



ヤナギさんの生放送に憧れ、某笑顔動画サイトで俺も生放送始めてみた。
まだまだヒヨッコながらも、放送1回から見てくれてる常連さんが居る。

『アサヒ、いつになったら放送し始めんだよー』
『もうちょっと待ってよー……ん、出来た。りゅう、見れてる?』
『おぉ、見れた見れた』

りゅうは1回目から見てくれてる常連さんの中でも一番仲が良く、リアルではまだ会った事はないが、スカイプでチャットをしたり、通話している程の仲だ。
声が少しガラガラ気味だけど、話は合うし、話してくれる内容は笑えるしで、本人には言ってやらないが結構りゅうのことは好きだ。


『もしもし?』
『お疲れー、アサヒー』
『ありがとー。ってか今日初見さん、5人も来てくれてたよ!』
『はいはい。すごいでちゅねー』
『おまっ…。バカにしてんだろ』
『バカにしてねーよ。ちゃんと褒めてやってんだろ?ほーらアサヒくん良い子でちゅねー』
『うざっ』
りゅうとふざけあいながらも頭の片隅で、友達のりゅうに褒められるのは勿論嬉しいけど、やっぱりヤナギさんに褒めて欲しいなぁっと考えてしまう。

『…ぃ、おい!アサヒ?』
『あっ、ごめん考え事してた。んで、何?』
『だから、今度リアルで会わね?って』
『え?うん、いいよー。俺、暇人だしりゅうの予定に合わせるよ。いつがいい?』
『じゃあ、今週の土曜は?』
『わかったー。…ってかもうヤナギさんの生放送始まっちゃうから切るわ』
『了解。…ほんっと、アサヒってヤナギの事好きだよな』
何を今更…
いつもあんなに俺がヤナギさんへの愛を語ってるのに、りゅうくんはまだ俺のヤナギさんへの愛を疑ってんのか?
確かにヤナギさんも俺も男だが、ヤナギさんは魅力の塊で男の俺まで惚れてしまうほどなんだぞ
『大好きに決まってんだろ』
何故か俺がそう言うとりゅうは黙ってしまった。

何黙ってんだよ?
これからヤナギさんの放送始まるって言ってんのに、黙ったままじゃ切るに切れないだろうが

『おい、りゅう?』
『…えっ?あっ、ごめんボーっとしてた』
『??ヤナギさんの放送始まるから切っていいか?』
『あ、うん。ごめん。じゃあな』
どーしんたんだろ?と思いながらもりゅうのことは頭の隅に追いやり、頭の中をヤナギさんでいっぱいにし、放送に集中した。



昨日もヤナギさんの放送は面白かった。
でもまさかヤナギさんに好きな人が居たなんて少しショックだったけどな…

いつもよりヤナギさん機嫌良く放送をしていた。
その事に常連のリスナーさん達も気付き
『ヤナギ、今日凄く機嫌良いけど、どーしたの?』と聞かれていた。
俺も気になっていたことで、ヤナギさんの言葉を一瞬たりとも聞き漏らさないように耳を大にして聞く。

『好きな子に「大好き」って言われた上に、今俺の放送を聞いてくれてるみたいなんだよね』と嬉しそうに語っていた。

ヤナギさんの嬉しそうな声が少し遠くなる。
今、俺失恋したんだな。
元々男同士だし、ネットの人だし、叶わないとは思っていたし期待すらしてなかったけど、いざヤナギさん本人の口から聞くと心が痛くて仕方ない。
モヤモヤした感情がなかなか消えてくれず、怒りたいのか、泣きたいのかなんなのか自分でもわからない。
だけどヤナギさんにとっては嬉しいことなんだから、ファンの俺は喜んでるヤナギさんを応援して、一緒に喜んであげた方がいいんだきっと
リスナーさん達も俺と同じ気持ちらしく
『悲しいけど、嬉しい』『もう、付き合ってるの?』『頑張れ』等を言っていた。

ヤナギさんの放送が終わった後少し泣いてしまったが、最初からわかっていたことだし俺は現実を受け止め、ヤナギさんのファンを続けることに決めた。
それにヤナギさんの放送が終わった後にりゅうと通話した時
落ち込む俺に気付いたりゅうに事情を説明すると、大笑いしながら無責任にも『大丈夫大丈夫』と言われ、『何が大丈夫なんだよ…!』と俺まで笑い、少し元気が出た。


あれから数日。りゅうと遊ぶ日がとうとうやってきた。
昨日もいつも通りりゅうと会話をし、そのあとすぐに寝たせいか予定より1時間も早く起きてしまった。
なんだかんだ俺はりゅうとリアルで会うことにドキドキしてるんだなと少し笑ってしまう。
準備をゆっくりしても時間がたっぷり余ってしまい、しょーがなく少し早いが家を出て、待ち合わせ場所に向かうことにした。


うわっ、待ち合わせ時間まであと40分もあるじゃん
暇だしどっかお店の中に入ろうかな?っと考えていると、いきなり目の前が真っ暗になった。

はっ?え?何?っと焦っていると
「アサヒだろー?早いな」
『アサヒ』と聞いて、『あぁ、目隠ししてるのはりゅうか』っと納得した。

「ちょっ!りゅう?目の前真っ暗だから手離してよ」
俺がりゅうに訴えかけると「まだ、ダメ」っと言われてしまった。
なんでだよと疑問に思いながらも目を塞がれてるせいで耳が敏感になり、りゅうの声がいつもと違うことに気付いた。

「あれ?りゅうの声、ガラガラじゃない…それにスゲー良い声…
なんか今日のりゅうの声、ヤナギさんにそっくりだね」
冗談半分で、りゅうに告げると
りゅうはやっと目を覆ってた手を退け俺と向き合い

「だって俺がヤナギだし当たり前だろ」っと。
俺は2つの意味で驚き、声すら出なかった。
1つは、りゅうの『俺がヤナギだ』発言ともう1つは
「イケメンかよクソヤロー」
超絶イケメン様が目の前に居たからだ。

りゅうがイケメン過ぎて驚いたが、
はっ?りゅうがヤナギさんってどういことだよ

「ヤナギさんってどういう…」
「だから、俺が、アサヒが愛してやまないヤナギってことだよ」
……マジで?

「うん、マジマジ」
「嘘だろ…?」
信じらない。百歩譲ってこいつがりゅうだということは信じよう
でもりゅうとヤナギが同一人物だということがまだ信じられない。

「ま、まだ信じられない、から!りゅうだという証拠と、ヤナギさんだって証拠を見せてよ」
証拠?と言って、りゅうは悩んだ顔して、閃いたのかこちらを向いて

「りゅうだけしか知らないアサヒの秘密知ってる。
例えば、ヤナギの声を録音したり、その録音した声でオナn「お前は、りゅうだからそれ以上何も言わなくていい。わかった。ありがとう」
あと、ヤナギだって証拠はぁ…一度確かメールくれたよな?『ヤナギさんが大好きで、いつも生放送見てます。』ってやつ」
確かに一度好きという気持ちが抑えきれなくて思わずメール送った。
その内容はヤナギさんしか知らないし、やっぱりりゅうがヤナギさんなんだ。

「え?ってことは、俺の気持ちはヤナギさんに駄々漏れだったってこと…?」
そーじゃん。
俺、ヤナギさんの事どんだけ好きかりゅうに語ってたし、
それに、ヤナギさんについての恥ずかしいことも友達だからってりゅうに隠さず言ってたのは本人に筒抜けだったのかよ…

「アサヒ…」
「な、なんでしょーか…」
「俺はアサヒの事凄く好き。もちろんアサヒと同じ意味の好きって意味でな」
頭に大量のハテナが浮かぶ。
りゅうがヤナギさんで、ヤナギさんがりゅうな時点で頭がパンク寸前なのに、ヤナギさんが俺の事を好き…?

「返事はわかってるから聞かない。…な?だから言っただろ。『大丈夫』って」
あの時の大丈夫にはそんな意味が隠されてるなんてわかるはずないし、
それに返事は聞かないって…

「さーて、リアルでは初めましてだなアサヒ!今日はどこへ行こうか」
まだまだ整理がつかず、混乱しまくりな俺に近付き、自然に腰に手を添えるりゅう
考えるのを俺は放棄したくて仕方がない。




おまけ
「なんでりゅうはボイチェンまでして俺と絡んでたの?」
「確かアサヒの放送1回目が『ヤナギさん大好きな俺が放送を始めてみた』ってタイトルで、どれだけ俺の事が好きだか語ってるのが面白くてボイチェン使ってコンタクト取ってみた」
「………本人にあの放送見られてるとか恥ずかしくて死にそう」
「あれは本当に面白かった。スゲー笑ったわ」
「…ってか、声変えなくてもよかったじゃん」
「声変えなかったら、アサヒ俺の声で感じr「ごめんなさい、声変えててくれてよかったです」…だろ?」






解説
ちなみに本名は柳隆一と今井旭です。
柳さんの方は社会人で旭くんは大学生。

柳さんは息抜き程度に始めたら人気出るし、常連増えるし、楽しいしで、始めて良かったなーぐらいにしか思ってない。
たまたま自分の事が大好きだという旭くんの放送見てからやっと自分の影響力に気付いた。
旭くんに限らず、柳さんに憧れて放送し始めた人は少なくない。

柳さんのようになりたくて放送始めたが、何故か自分の放送を見てくれる人達は少し変わった人ばっかで最初は割と戸惑っていた。
きっと旭くんの放送を聞いてるのはショタ好きの変態ばかり。

二人とも顔出し放送はしたことないし、するつもりはこれからもない。


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