病弱×心配性
「ゴホッゴホッ」
「だだだ大丈夫かぁぁあ祐希ぃい」
「カナちゃん心配し過ぎだよ。ただ咳しただけなのに」
「祐希の身に何かあったらと思うと俺、心配で心配で…」
ゴホゴホと咳をする祐希の背中を優しくさする。

ようやく祐希の咳が治まり『もう大丈夫か?』と伺うと、祐希はゆるゆるな笑顔を浮かべながら『大丈夫だよ。ありがとー。僕ねカナちゃんに心配されるのって一番嬉しいな』っと恥ずかしげもなく言った。
俺は顔を赤くさせながらもあまり無理はするなよっと祐希にキツく言いその場を去った。




祐希と初めてあった時から祐希は体が弱かった。
ある時は立ってられない程の頭痛や腹痛。
風邪を引いたり、咳が出るのなんて日常茶飯事。
そんな祐希にいつも俺は心配が尽きなかった。


むかし、祐希が風邪を拗らせ入院した時
祐希は真剣な顔をして『カナちゃん。僕、カナちゃんの事好きなんだ』と言い出した。

「俺も祐希の事好きだよ?」
祐希の言いたい事がわからず俺が疑問に思ってると
「違うよ。僕は、恋愛感情でカナちゃんの事好きなの。…弱い僕だけど、僕とずっと一緒に居てくれない?」とプロポーズまがいをされた。
その時の祐希はとても儚く、直ぐにでも何処かへ消えていってしまいそうで俺は怖くて了承した。
恋がなんだとわからない年だったが、ただただ祐希と離れる事が嫌だった。

それからから少しずつ年を取るにつれ、俺は祐希を意識するようになり、お互いを繋ぎとめる『恋人』ではなく、いつの間にか正真正銘お互いが好きだという本当の恋人同士になっていた。

「ゴホッゴホッ「大丈夫k」…大丈夫だよカナちゃん」
俺は付き合う前よりずっとずっとずぅーっと祐希の事が好きになったのと同時に、それと同じくらい心配性になってしまった。





心配性の俺の朝はとても早い。
毎朝5時に起き、起きたら直ぐに着替えて祐希の家に向かう。
祐希の両親は海外に居てなかなか家に帰って来れないが、とても親バカなせいで毎日祐希の携帯には20件以上のメールが来ると言っていた。
それに両親が居なくてもお金持ちな祐希の家にはたくさんの執事やメイドさん達が居るので寂しくないとも言っていた。

「おはよー、祐希。とりあえず、熱計ってる間に今の体の調子がどうだか説明して」
俺はいつものように6時ピッタリに祐希の部屋に入り、祐希を起こす。

「…おはよー、カナちゃん」
「うん、おはよー」
悠長に朝の挨拶をする祐希にもう1度挨拶を返した。

「うーんと頭もお腹も喉も手も足も痛くないし、辛くもないよ。ただ…」
「ただ?!」
訳ありな言い方の祐希に俺は心配して、

「今日は目か?口か?鼻か?耳か?太ももか?ふくらはぎか?どこだ?痛いところは!?」と祐希の体の至るところをペタペタと触っていると、祐希の体を触っていた手を捕まれ
「心が痛い。」と言われた。

俺は対処法がわからずとりあえず急いで119を押そうとしたが
「カナちゃん不足で心が痛いの。だからカナちゃんからちゅーしてくれたら治るよ」と微笑まれた。

「…ちゅーしたら治るんだよな?ちょ、ちょっと待って、心の準備を…」
そー言うと、祐希は「うん」と笑顔で目をつぶって待ち始めた。
覚悟を決めて「ん」と軽く唇を合わせたあと直ぐに離れ、祐希を見ると

「えへへへ、カナちゃん大好き。あっという間に直っちゃった。」と言った。
そんな祐希に「ならよかった…」と返した俺の顔は多分赤かっただろうが、直ぐに部屋から出ていったので祐希には見られてないはず。
まぁ、その代わりメイドさん達に赤い顔を見られてからかわれたのは言うまでもない。




朝食はメイドさんが準備してくれたものを食べ、今日も祐希と2人で登校する。
本当は身体の弱い祐希は車で登校するべきなんだが、祐希本人が『一秒でも長く、カナちゃんと一緒に居たい』と言われ、その日から毎日歩いて登校している。

「カナちゃんはさぁ、僕が死んだらどーする?」
また何処か体調が悪いのか?と思いながら
「俺は、ずっと祐希と一緒に居たいから、祐希が死んだら俺も追っちゃうかもな」と言うと、
「それって、……じゃん」
と少し照れ臭そうに祐希が何か言ったがちゃんと聞き取れなかった。
もう一度聞き直そうとしたが
「ねえねえ放課後は出掛けよう!」と言われてしまい、聞き取れなかった言葉がなんだったか聞くことが出来なかった。


あれからあっという間に放課後になり2人でぶらぶらしたり、普段出来ないことをしたりとお互いとても楽しんだ。
気が付けば徐々に暗くなって行く空に『そろそろ帰るか』と告げ
祐希の家に行き、祐希を送り届けたあと自分も帰ろうとしたが祐希に引き留められ、何故か祐希の家に泊まることになった。

晩御飯も食べ風呂も入り、今日はもう直ぐに寝ようと祐希の部屋に向かうと祐希はいつもより真剣な顔をして寝床に座っていた。

「どーしたの?」
「カナちゃん。目をつぶって左手出して。」
疑問に思いながらも指示に従うと
指に何かがハマったような感触がして、目を開けて見てみると
指輪が左手の薬指についていた。

「これ、どーいうこと?」
ビックリした顔をして祐希を見ると
「僕と結婚してください」と言われた。
は?えっ?結婚?

「本物を買った方が良いんだけど、本物は二十歳越えて、自分の稼いだお金であげたいからもう少し待っててね」
祐希の言葉は自分の思ってる以上に嬉しいみたいで、軽く目を潤ませながら
「あっ、うん。待ってるから」と言うと
「絶対に幸せにさせてみせるから。」と抱き締められた。
そして抱きついたままベッドに寝っころがり
いつの間にか2人して眠ってしまった。

起きると、目の前に祐希の顔があり、俺はその顔を見て、そっと起こさないように祐希の唇に自分の唇をよせた。






解説
生まれた時から病弱な祐希はあまり、生への執着や意識はあまりなかったです。
いつポックリ死んでも構わない。どうせこんな体じゃ長くは保たない。ぐらいには思っていたが、カナちゃんと出会ったことで
生きたい。カナちゃんとずっと一緒に居たい。絶対に死にたくない。カナちゃんを幸せにするのは僕なんだと生きる希望を見つける。
生きる希望を見つけたことで昔よりは病弱な体は治り、日常生活を送ったり少し激しい運動をしても大丈夫なようにはなった。

カナちゃんは本当に一般家庭の、祐希にだけ心配性の普通の男子高校生。
将来の夢は看護士になろうかと密かに思っている。祐希に何かあっても自分で対処出来るようにしたいと知識を蓄えてる。


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bkm
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