爽やか×ストーカー
女子共がキャーキャーグランドを見ながら騒いでるのを俺は横目で眺める。

キャーキャー騒ぎまくって、お前等ちゃんと授業受けろよ
体育教師が見たら泣くぞと思い、同情の目で体育教師に目を向けると、体育教師はグランドでやっているサッカーの試合に加わっていた。

わざわざ審判を生徒にやらせてお前も一緒に遊んでるのかよと呆れながらも俺は直ぐに体育教師から目を離し、ある人物を見つめる。
いつ見ても王子はカッコイイな……

俺の言う王子とは保田翔。性別は男。年齢は17歳。クラスは2-C。誕生日は6月15日。身長は178cmで体重は64kg。血液型はA型。家族構成は父・母・兄・弟・犬の5人と一匹。
好きな食べ物はアイス。嫌いな食べ物はトマト。部活には入っていないがバイトをしている。運動神経は抜群だが少し頭に問題あり。
王子の事について知らないことの方が断然少ないぐらい俺は、王子の事を知っている。そして愛している。
なんてたって俺は王子の…いや保田翔のストーカーだからな


老若男女に優しい王子は、いつでも笑顔を絶やさない。
それでか俺程のストーカーでは無いが、ストーカーやファンがとても多く、毎日のようにラブレターやプレゼントを渡されている。
それだけならまだいいが王子に迷惑をかけている輩もたまにいる。

王子が好きなら迷惑をかけないようにするのが基本なのに、その王子に迷惑をかけるとは何事だ!
俺なんて王子に迷惑をかけないように、王子が使ったものをひっそりゴミ箱から救出し、自分の家に飾ったり、目の保養にしているというのに
最近のマナーがなってないストーカーやファンばかりでたまったもんじゃない…

マナーの悪さについて考えていると丁度王子がボールをゴールへ蹴り入れ、女子共の歓声がさらに高く大きくなった。
女子共の声の煩さに眉間にシワを寄せつつも王子を見ると仲間とハイタッチをしながら爽やかに笑っていた。

ま、まぶしい…爽やかすぎてこのままでは溶けてしまう!と目を細め、手で目を隠すとトタトタと誰かがこちらに近付く音がし、指の間から覗いてみると目の前には王子が来ていた。
慌てて体操座りをしてなるべく体を丸め込み『どーかした?』と普通を装い明るく聞くと
ニコッと王子はまた爽やかに笑い、俺の前でしゃがんだ。

「今の点入れたと同時に試合終わって俺達のチームが勝ったから、勝利の祝いにハイタッチしよ?」と言って、手を胸の前に出した。
俺と王子は体育のサッカーのチームが一緒だったが、俺はサッカーをしている王子の事を見たいがために貧血という名目で木陰で休んでいたのだが、そんな俺にまで優しいとか流石王子!!

王子に習い、俺も両手を目の前に出すと王子は「やったな」と言いながら手を重ねた。
その重なった手の部分を『もう洗わないぞ』と思い見つめていると、下から俺の顔を覗きこんでいた王子と目があった。
王子が俺を見てたいことに驚き、言葉を出せないでいると

「貧血大丈夫か?俺達が頑張るから井上はゆっくり休んでてな」
と言い離れていく背中を見つめながら、
『こんなに王子と話せたとか幸せすぎて死ねる』と草の上に寝っ転がり、悶えて右へ左へと体を移動させてるうちにいつの間にか眠りについてしまった。



体がゆっさゆっさと揺れてるのに気付き、ゆっくり目を開けると
誰かの顎と少し赤くなっている空が見えた。
前を向いて歩いていた人物は俺が起きたことに気付き、こちらを伺いながら
「あっ井上!起きたか?」と声をかけてきた。

俺の方を見たことで顔をハッキリ確認することが出来たが、その顔はどー見ても王子だった。

「…〜〜っ!?」
いきなりの事で声になら無い声で叫び、王子から距離をとろうとジタバタ動くと王子は「おっと!危ないから動かないで」と言ってさらにギュッと力を込めた。

ギュッ?よくよく自分の体の状態を確認すると王子の手は俺の背中から脇に入り、もう片方は俺の膝の裏にあった。
待って…この格好ってまさかお姫様だっこ…?

「王子!!降ろして!」
慌てて降ろしてもらえるように言うと、
「もしかして『王子』って俺のこと?」と聞いてきて、その意味を理解すると同時に自分の口を自分の手で塞いだ。
ヤバい…俺が裏で『王子』って言ってるの、本人にバレてしまった!どうにかして誤魔化さないと…

「いやえっと、そのー…」
マトモに王子の目も見れず誤魔化そうと色々考えるが、何も良い案が思い付かない。
ごちゃごちゃ考えてるうちに王子が「じゃあさ」と突然言い
「俺が『王子』なら井上は『お姫様』だな」と続けた。

いやいや何処が!?そりゃ今の格好はお姫様だっこだけど、それ以外は全くお姫様要素なんて無いよ!
お姫様だっこだってしてほしくてしてもらってるんじゃないし…
まぁこんな近くに王子が居て嬉しいことには変わりないがな

「男の俺が『お姫様』な訳ないよ。それより早く降ろして」
自分の意志を伝え王子を見るとニッコリ笑いながら
「否定しないってことは、やっぱり『王子』って俺のことなんだね♪降ろしてあげても良いけど、条件があります」
そう言いながら王子は真剣な顔をした。

条件って何だ?と思い、ガクブルしながらも『王子に命令されるなんて…。なんでもさせてもらいます』と考え、王子の次の言葉を待った。

「じゃあさ、1 これから俺にお持ち帰りされる。2 俺と付き合う。
いきなりは井上が可哀想だからどっちか1つ選ばせてあげる」
「な、なんで…?」
「あと5秒以内に答えないとどっちもな。いーち、にぃー、さぁーん…」
「2番で!」
突然の事に理解出来てないが、この質問に答えなければいけないということはわかり、とっさに言うと、王子は少しブー垂れながら

「じゃあ俺と付き合えよな。しょーがないからお持ち帰りは今日はしない」と言った。
どんな顔しても王子はカッコいいと見とれてると、やっと俺のことを降ろしてくれた。
そーいえば「なんで俺、おうj…保田にお姫様だっこされてたわけ?」
疑問を告げると「井上5時間目終わったのに中々起きないから持ち帰ろうと!…ってのは嘘で、先生に言われた。案外俺の家と井上の家って近いんだな」っと。

実は俺の家と王子の家が近いということは前々から知っていた。
なんてたって俺は王子のストーカーですからね。

「って!えっ?付き合う?はっ?」
今更ながら、さっきの王子の言葉が意味を理解し、おかしいことに気付いた。

「付き合うって、買い物とかの意味じゃなくて恋愛?」
ニッコリ笑い頷く王子に俺は混乱が増す。
こんな冴えない地味な俺と付き合うとかなんで?しかも俺、王子のストーカーなんだけど…と思い

「なんで俺なんかと?」と聞くと
「俺のことを見る井上、いつもポワンとさせてて堪んないんだよね」と思い出すように顔を綻ばせて言った。
「とりあえず今、突然のことばかりで全然着いていけないから、友達からというのはダメですかね?」

嬉しいが正直理由聞いても意味がわからない。
王子は一回落ち着いた方がいいだろう。






解説
王子は別に井上くんのこと好きじゃないので、友達からが一番正しい判断だと思います。
王子は『井上くんのポワンとした顔が可愛いから』というのと、ただの興味本位なので恋愛感情自体はゼロ。
でもこれからどんどん恋愛に発展して行きます。

ちなみに王子と友達になれたからといって井上くんのストーカー行為はなくなりません。


prev next

bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -