会長×平風紀委員
あっ、今日も書類減ってる…



こんにちは、風紀委員やっております宮井です。
ケンカも勉強も顔も普通だけど、この学園の理事長が父さんのせいで、風紀委員の人員不足のため風紀委員をやらされてます。
あまり仕事は出来ないので風紀委員と言っても、名だけのただの雑用ですがね…

そしてそんな僕に課せられてる仕事の一つに、生徒会室へ書類を運びに行くというものがあるんですが、少し前に転入生が来てから
転入生に惚れた生徒会の役員様方が仕事しなくなったんですよ。
だけど最近、溜まりに溜まっていた書類が少しずつ減ってきたので
『あっ!やってくれてる』って自分のことじゃないのに喜んでいたんです。

だけどたまたま書類を運びに来てる時にあの俺様で有名な会長様だけが書類を片付けてる姿を見てしまいました。
他の役員様方の分も会長様一人がやっているみたいで、目にクマを住まわせながらも眠そうにして机に座り書類を片付けてる姿は流石会長様と尊敬しました。

でも何回もそんな会長様を見た僕は少し可哀想に思えて、何も出来ないながらも一人で頑張ってる会長様のために何かしてあげたいと思い、
次の日から会長様にも委員長にも内緒で簡単なものだけだが書類を手伝い始めました。
他にも、多分書類を片付けてる間は何も食べてないだろう会長様の為に、生徒会室に軽い食べ物や僕の手作りのお菓子を置いときました。
最初の内は軽い食べ物も手作りのお菓子も減らないので、腐らないように2〜3日に1回は入れ換えていたんですが、いつの間にか減るようになり
そのたびにルンルンと書類と一緒に軽い食べ物や手作りのお菓子を持って行きました。



それから数週間、
夜、友達と一緒に食堂へ行くと食堂の中から転入生の騒がしい声が聞こえて来た。
とりあえず僕も平だけど風紀委員ですしと思い、騒ぎの中心へ行くとすでに委員長が来ていて、転入生を黙らせようとしていた。
『特に僕がすることはありませんね』と思いながら中心人物達を見ると、お馴染みの転入生と会長様を含む生徒会役員様方がいた。

会長様にはまだ目の下にクマがあると心配しながらも、騒いでいる転入生の声に聞き耳を立てると
『会長なのにセフレと遊んでばっかでダメなんだぞ!!ちゃんと他の役員達みたいに仕事しろよ!!』と会長様に向かって言っていた。

唖然として開いた口が閉まらない。
転入生は会長様の目の下にあるクマが見えていないんですか?
今だって、寝不足でフラフラするからとイスに掴まりながら立っているのに!
そんな会長様が仕事をやらずにセフレと遊びまくって疲れている風に見えるんですか?あり得ませんよ!!
遊び疲れてるからって、あそこまでなるわけないじゃないですか!

「何を言っ…!?」
一番頑張っているのは会長様だと知ってる僕は、なんも知らずに説教紛いをする転入生にイラつき、思わず転入生に文句を言おうとドスドスと向かうが、さっきまでイスに掴まっていたはずの会長様がいつの間にか僕の後ろに来ており、言葉を止められた。

僕達の様子に気付いた転入生が
『な、なにやってんだよ!!??』と会長様に向かって言っているが、一番それを聞きたいのは僕です。
なんで僕は今、会長様の手に口を塞がれているんですか!?!!

「お前達と話していても時間の無駄だ。俺は、もう帰る」
そう言い放った会長様は僕の口を塞いだまま歩き出す。
抵抗?そんなのしませんよ…。だってしても離してくれなさそうですし…。



連れてこられた場所は会長様の部屋だった。
やっとそこで、僕の口から手を離してくれた会長様は「ここに来た理由、わかるか?」と聞いてきた。

突然言われた会長様の言葉に驚きの言葉が出そうになるがそれを堪え
「いや…。わかりません」と正直に答えると、
会長様は僕から少し離れ、テーブルの上に置いてあった紙を持ち、これはなんでしょう?っと言うように、僕に見せてきたものは少し前に僕が勝手に処理をした書類だった。

「この書類の字、どー見ても俺のものじゃないし、勿論他の役員の字でもないんだ。じゃあこの書類、誰が書いたかわかるか?」
会長様の言葉に正直困惑が隠せない。
それをやったのはまごうことなき僕で、勝手に生徒会の重要な書類を見た上に、手を付けてしまったことを怒られんのかと怖くて仕方がない。

「いや、えっと…その…。す、すいません!!悪気はなかったんです。」
…ただ、会長様の事が心配で…と僕が頭を下げながら言うと上から「ハハハ」と笑う声が聞こえてきた。
笑い声に顔をあげると会長様は何故か笑顔で僕を見ていた。
怒って…ない!?

「今まで手伝ってくれたり、手作りのお菓子もありがとな。とても助かった」
「え?…いや、僕が勝手にやったことなのでお礼なんて…。それに、あの…生徒会役員様方しかやってはいけないものに手をつけてしまったのだし、怒ってくれても構わないんですよ…?」
笑顔の会長に少し戸惑い、もしかして僕が理事長の息子だから怒るに怒れないのでしょうか?と考えていると

「助けてもらったやつを怒るなんて、そんなこと俺はしないぞ?」っと笑いながら言われてしまった。
とりあえず怒られはしないのだと安心したが、安心したことでしっかりと会長様の笑顔を見てしまい、一瞬で僕の顔が赤く染まった。
そんな僕を気にせず会長様は徐々に僕に向かって一歩ずつこちらに進み、僕の目の前までくると立ち止まった。

「正直本当に助かった。最初はまた親衛隊が勝手に生徒会室に入って来て、美味くもないお菓子を置いて行ってるのかと思っていた。
だけどたまたまお前が書類と一緒にお菓子を置いて帰ってるのを見て、なんでこんな事をしてくれるのかずっと気になっていた。」
間近にいる会長様にドキドキが止まらないが、大きく深呼吸をして自分を落ち着かせる。

「なかなか減らない書類をずっと僕は気にかけてました。僕達生徒は生徒会役員様方が頑張ってくれているおかげで楽しく学校行事を行えています。だから書類が減らないということは楽しみにしている行事が行えないんじゃないかと心配でした。
でも少しずつだが書類が減るようになり、僕は本当に嬉しかったです。
そしてそれを会長様一人が処理なさってると知ってから、会長様が少しでもお仕事がしやすいように、楽になるようにと僕に出来ることをお手伝いしたかったんです。」
だから感謝しているのはむしろ僕の方です。僕は少し書類を片付けたり、お菓子を置いといた以外は何もしてません。ずっと頑張っていたのは会長様です。僕達生徒のために本当にありがとうございます。

必死で僕の思いを会長様に伝える。
会長様は僕の思いに驚いているのか目を見開いた。

「ハハ、嬉しいな。俺の頑張りを認めてくれる人がいてくれるだけで俺は頑張った甲斐があったよ。ありがとな、宮井…」
いつもの俺様が嘘のようにさっきから優しい笑顔ばかり向けてくる会長様に驚きながらも、そう言ってもらえたことが嬉しくて僕も笑顔になる。






解説
恋が始まってないように見えて実は始まってます。大丈夫です。
このことがキッカケでもう会長は宮井くんの事を好きになってます。
だけど宮井くんはまだ会長の事を好きではありません。100%尊敬です。

元々二人は顔見知りです。
親の関係で宮井くんが理事長の息子だという事を昔から知っていたし、いつも生徒会室に書類を運んでくれるので
会長は宮井くんの事を『理事長の息子で風紀委員』ぐらいにしか思っていなかった。
宮井くんの方はずっと昔から会長の事を尊敬しています。

この先の展開は表面上は二人は変わらないままだが、毎夜お互いの部屋を行き来し、少しずつ仲を深めていくと思います。


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bkm
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