人気者×平凡
街はチョコばかり。
女の子は好きな男の子に愛の言葉を添えてチョコを渡す日がとうとう明日に迫っている今日、僕、森田永汰はお菓子売り場で唸っていた。

「男が男にチョコ渡すなんて…。でも渡したいし、どうせ渡すなら手作りの物がいいし…。あーもう、本当にどうしよう!!!!」
なかなか考えがまとまらずお菓子売り場で挙動不審な動きをしてしまっている。
ただいま思春期真っ只中、女の子ではなく何故か男の子に恋しちゃってます。

明日はバレンタインで、どうせならさりげなく好きな人にチョコでも渡そうかなと思ったが、可愛くもない平凡顔の男の手作りチョコなんて嬉しくないよなと気付いてしまい先ほどからお菓子コーナーから出られない。
チョコの材料に手を伸ばしながらも、あーでもないこーでもないと呟き、うんうん悩む。
延々悩み続けてるのもそろそろ疲れだし、もうどうとでもなれ!という気持ちでチョコの材料を持ちレジへと向かった。



そう意気込んで昨日買って作ったはいいものの、いつのタイミングでこの手作りチョコを渡せば良いのだろうか。
多分、あの人が今日1人きりになる時間なんて授業中ぐらいしかきっとない。

折角作ったのに渡す時間が無いなら作った意味なかったかもと
はぁーっと溜め息をつきながら教室に入ると、僕の席の隣は箱や袋で山積みになっていた。
この隣の席の人こそ僕の好きな人でもある明石雅治の席。
明石の机の上の状態に少し感動しつつ、ふと、この山積みのチョコと一緒に僕のチョコを置けばいいんじゃないかと希望が見えた。
いざ置こうとチョコを取り出そうとしたがタイミング悪く明石が来てしまった。

「はよーっす」
「おぉ、明石はよー」
「雅治くんおはよぉ」
「おっ、モテ男が来たぞ」
教室で各自かたまって話していたクラスメートは明石の登校に皆が反応し挨拶を返す。
「今年も結構もらっちゃった」
そう言って明石は手に持っていた袋をクラスメート達に見せる。

やっぱり明石はモテモテだなー…
あんなにもらってるなら僕のはあげなくても…。
いやいや、折角作ったんだしどうせならあげたいな
隙を見て机か下駄箱に入れるしかないか

「森田」
「ん?」
誰かに僕の名前を呼ばれ、呼ばれた方を見ると、クラスの中心にいたはずの明石が目の前にいた。

「…どうしたの?」
「それ…、誰かからもらったのか?」
僕が明石の席にコッソリと置こうとしていた紙袋を指差した。
少し低めな声色の明石を不思議に思いながらも

「違うって。こんな平凡顔のやつにチョコくれる女子なんていないってば」
「じゃあ、森田が誰かにあげるのか?」
さっきから明石どーしたんだろ?
最初は怒ってるような感じだったのに今は何故か焦ってるような感じがする。

「え?うん。そーだよ」
「もしかして、森田の手作り?」
「手作り…」
明石は少し目を輝かせた後すぐに落ち込んでしまった。

「…本命チョコ?」
明石の質問の意図はわからないが、この流れなら本命と言わず、義理チョコと言えば明石に渡せるんじゃないかと頭に浮かぶ。

「あぁ、これはいつもお世話になってる人に渡そうと思って作ったやつだから本命ってより義理かな」
ホッとしたような顔をして、「そーなんだ」と言い立ち去ろとしていた明石の腕を慌てて掴んだ。

「待って!あの、これ、明石にいつもお世話になってるからどうぞ」と明石に渡そうと持っていた紙袋を渡すと、明石は目をテンにさせながら

「えっ?俺にくれるの?」
「よかったらどーぞ。…でも味は保証しないよ?」
僕の言葉を聞き「おぉ」と言って紙袋を受け取ると明石はそっぽを向いてしまった。

明石にチョコ渡せたよ!!
僕ってばやれば出来るじゃん





解説
趣味はお菓子作りなのできっとチョコは美味しいです。
家族にからかわれながらも頑張って作ったチョコの中の力作だけを明石くんに渡しました。

本当はもっと曖昧な感じで、切ないめにしようかと思ったんですが私の妄想は勝手に甘々に行こうとするので切なくならなかったです。


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bkm
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