不良×コンビニ店員
最近、よく俺のバイト先にとてもカッコいい人が来る。
そして最近気付いたことだが俺はホモだったみたいで、初めてそのカッコいい人が俺のバイト先であるコンビニに来たとき、一目見ただけで惚れてしまった。

今まで女も男も含め好きな人なんて居たことなかったのに、そのカッコいい人を見た瞬間
こう、何ていうの?ビビビキュンッとそのカッコいい人以外見えなくなった。

たまたま知ったが、カッコいい人はここら一帯を取り仕切ってる族の総長らしく、見た目は勿論の事とってもカッコよく、その上喧嘩もすこぶる強い
そして男女限らず超モテモテらしい
そりゃぁ、あんなカッコよくて喧嘩も強い人がモテないわけないだろ!っと何故か本人では無い俺が無駄に喜んだ
それと同時に、男が惚れるほどの男なんだから
俺があの人に惚れてしまったのはしょーがないんだと、自分があの人に惚れたことはおかしな事では無いんだと自分を肯定することが出来た。



「レモンティーが一点。オニギリが二点。お菓子が一点。合計518円になります」
今日も今日とてコンビニに来てくれた、カッコいい人。
内心ガッツポーズをしながら『このお菓子美味しいですよね、うんうん』とカッコいい人に話しかけた。勿論心の中でな!

最近気付いたんだが、俺はカッコいい人を接客するときは仕事用スマイルでは無く、自然の笑顔が出てきてしまうらしい。っと、商品を袋の中に入れながら俺にカッコいい人が族の総長をしてると教えてくれたバイトの先輩が言っていた。

「482円のお返しになります」
出来るだけカッコいい人に良い印象を持ってもらおうと自分での最高級の笑顔を振り撒きながら、自分の左手でカッコいい人の手を支え、右手でお釣りを渡す。
コンビニ店員だからこそ出来るスキンシップにこれほどありがたいと思ったことはない。
カッコいい人はお釣りを受け取って直ぐにコンビニから去り、俺はそれを後ろから見ながら「ありがとうございます。またのお越しくださいませ」と頭を下げた。
明日も来てくれるかな?とドキドキしながら、そのあとの仕事も淡々とこなした。



今日も来てくれたカッコいい人を近くで見ようと本棚を陳列させながらこっそり横目で見ると雑誌を見ていたはずのカッコいい人と目があった。
ヤバッと思い、気まずいながらも社交辞令でペコリと頭を下げると
カッコいい人は見てた雑誌で顔を隠してしまった。

…俺そんなに気持ち悪い顔だったかな?あんなわかりやすく見ないようにされるのは結構傷付くなと思い少しへこんでいると突然『すみませーん』と聞こえ、声のする方を見ると、レジの前に商品を持ったお客さんが立っていた。
慌ててレジへと向かい、早々と待たせていた客の会計を終わらせた。
ふぅっと一息つき、再びカッコいい人を見ると、カッコいい人は徐々にレジへと近付いてきていた。

「飲み物が二点。雑誌が一点。合計680円になります」
間近にカッコいい人がいると思うだけでもう頭がパンクしそうと考えながら商品を袋につめてると、680円ピッタリ出され、その上『レシートはいらない』と言われてしまった。

…俺の唯一のスキンシップ手段がぁぁあぁあ
内心ガッカリして項垂れてると「て、店員さん!」と前から声をかけられ、声のした前を見ると勿論そこには会計をしているカッコいい人が居るわけで
俺がスマイルで「はい、何でしょうか?」と聞くと「これどうぞ」
そう言ってカッコいい人はコンビニから出ていった。
その後ろ姿を呆けながら見届け、カッコいい人がくれた…さっき買っていた飲み物がレジの上にはあった。

「午後ティーのストレート…」
午後ティーを見つめながら、これはプレゼントと思って喜んで良いのか?
疑問に思いながらも好きな人からの初めてのプレゼントだと素直に喜ぶことに決め、勢いをつけて午後ティーの蓋を開けてグビッと一口飲み午後ティーを見つめる。

「ストレートなのに思ってた以上に甘い…」
ストレートだから無糖だと思っていた分驚きが大きかった上に、割と自分の好みでグビグビと飲みきってしまった。
飲みきったあと、せっかくのプレゼントなのに全て飲み干すなんて勿体ないことをしたと気付き落ち込んだが、何も入ってない空っぽのペットボトルだけでもと考え少し気分が浮上した。



おにぎりを陳列する仕事しながらふと、何故昨日俺にカッコいい人は飲み物をくれたのだろうという考えが浮かんだ。
いかにも喉が渇いてますって顔でもしてたのかな?
うーんと考えてると同時に後ろからコンビニ特有の扉の開く音がし、そちらを見ずに手を動かしながら「いらっしゃいませ」と言うと、入ってきた客は真っ直ぐこちらに来た。

もしかしておにぎり買う人かもと思い退くと買う様子はなく、じゃあなんだ?と客を見るとカッコいい人が顔を真っ赤にしていた。
カッコいい人がこんな近くにいる!とドギマギしながらも、仕事中だと意識を戻し
「どーなされましたか?」と笑顔で取り繕ると
無言で俺の腕を掴み上げ、歩き出した。

『仕事中なんだが』という考えより先に『ふふふ触れちゃってる!!!』とさっきまで隠せていたドギマギが今度は隠せない程になり
頭の中であわわわわと混乱してされるがままに着いていくと、あまり人が居ない公園に着いた。

さっきまで俺の腕を掴んでいた手を離しくるりと俺を見た。
すると「気持ち悪いかもしれねぇーですけど、あの、俺………店員さんのこと一目惚れして」っと
「ホ、ホモ?」
俺が呟くと、それを聞き取ったカッコいい人は悲しそうな顔をして

「いや、今まで一目惚れすらなかったですし、男なんて全く」
聞いた俺は、どーしてそんな悲しそうな顔をしたかがわからず声を掛けようとするが先にカッコいい人が喋り出した。

「男を好きになったこと無い…です。でも、店員さんのこと好きになった時点で俺はホモっすよね…。伝えたかっただけなんで…サヨウナラ」
何処かに行こうとするカッコいい人の腕を今度は俺が掴み
「あのっ!大好きです!勿論恋愛感情で」と叫ぶ勢いで告げると
カッコいい人は俺の言った言葉が理解出来ないのか唖然の顔を浮かべている。

「…俺もホモですね」
笑って言うと、突然カッコいい人に抱き締められ驚いたが、俺も無言で抱き締め返した。

最初はホモなんだと自分が気持ち悪いと何度も思った。
だけど毎日コンビニに来るあなたを見ていたら全てがどーでもいいと感じた。
だって好きになってしまったものはもうしょーがないし。
それにどうせ好きでいてもどうにもならないと諦めていたから、見つめているだけで幸せだった。
今日はあれ買ったとか俺も買ってみようとか、他からみたらストーカーみたいで気持ち悪がられるかもしれないけど、俺はそれだけで凄く幸せだった。

「これ新商品で結構美味いんすよ。あとで一緒に食べましょうね」
商品の会計をしていると、目の前に居る客がそう告げ、最後に『外で待ってます』と言ってコンビニから出ていった。
その後ろ姿を見て、
同じ物を一緒に食べれるなんて幸せすぎて俺、どーしたら良いんだろうと顔がニヤけてしまった。






解説
個人的に午後ティーのストレートはミルクティーの次に好きです。

コンビニ店員くんは『男を好きになるなんておかしい。好きになったなんてありえない。好きな訳がない…ない』という思いを吹っ切り今のアレになりました。自分は異端なんだと何度も悩みました。

不良くんは結構単純で好きだと気付いてから毎日コンビニに通い、こっそりコンビニ店員くんのことを見てました。おつりを渡される時のスキンシップや笑顔にいつも胸をドキドキさせられてました。
ちなみにコンビニ店員は大学生。不良くんは高校生です。


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bkm
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