ヤンデレ×平凡
僕、野々宮伊織が柳谷昴と初めて会ったのは高校の入学式でだった。
今日から高校生という事で浮つく足取りで入学式会場である体育館に入ると、まだまだ入学式まで時間があるためそれほど席は埋まってはいなかった。

席は自由ということなので、とりあえず後から来た人の邪魔にならないように真ん中らへんの椅子に腰を降ろし、少しの間ボーッとしていると隣からガタッという音がしたので誰かが隣に座ったのだとわかった。
座った人を確認しようと、隣を見ると今までに見たことがない程のイケメンがそこに居た。
息をするのを忘れる位整ってる顔から目が離せないでいると、不意にイケメンさんがこちらに目を向け
僕と目が合うとニコリと笑い「初めてまして」と声をかけてきてくれた。
いつもの僕なら人見知りもしないで「初めまして」と返すが、この時僕はイケメンさんの笑顔に心を射止められそれどころではなかった。

イケメンさんはなかなか返事をしない僕を心配してくれたのか「大丈夫?」っと、気が付いたらあと10cmの距離までイケメンさんの顔が近付いてきていた。
慌てて、自分でもわかるぐらい顔を真っ赤にさせ「大丈夫…です」っと返すとイケメンさんは「良かった」と笑い
「俺は、柳谷昴って言うんだけど君は?」と聞いてきた。
イケメンさんは名前までもカッコイイのかぁーっとしみじみに思いながら
「僕は、野々宮伊織です」と今度はちゃんと返事を返すことが出来た。
それが僕と昴くんの初めての出会い。


あれから1年が経ち、僕達は無事2年生になった。
勿論入学式から昴くんは僕の一番の友達で、それと同時に入学式からずっと昴くんは僕の片想い相手でもあった。

「いーおり、また同じクラスだね」
「また昴くんと同じクラスとか嬉しいな。…あっ、吉永くんとか広瀬くん、あと守口さんも居るね」

案外1年の時に仲の良かった友達が多く喜んでいると
さっきまで明るく僕に話しかけていた昴くんは俯きながらポツリ
「俺よりそいつらが同じクラスの方が伊織は嬉しいの」と聞いてきた。
昴くんが一緒の方が断然嬉しいのに!っと思った僕は誤解を解くため喋り出す。
「昴くんが一緒のクラスの方が、一番嬉しいに決まってるよ!」
僕の返事に満足したのか笑顔で「そーだよね。俺と一緒の方が伊織は嬉しいんだよね…良かった」
っと、それと同時に目の前に居た昴くんが僕の背中に回り込み僕の鼻と口をハンカチで覆った。
何が起こったのか把握出来ないまま、徐々に目の前が真っ暗になり僕は意識を失った。




目を開けると、真っ白い天井があった。
…えっ?此処どこ?
上半身を起こし、回りを見渡すと普通の寝室だが全く見覚えがない。
此処にいる理由を思い出そうとしても、始業式が終わって昴くんと話してる途中からの記憶がなく、何故こんな所に居るのかとパニックになっていると、寝室の扉がガチャリと開かれた。
「伊織起きたんだね」
開かれた扉の前には昴くんが立っていた。
こちらに近付いてきた昴くんは、不思議そうな顔をして「どーしたの?」と聞いてくる。
不思議そうな顔をする昴くんもカッコいいなぁと場違いに見惚れながらも「此処どこ?」と尋ねると
昴くんは満面の笑みで「俺達の家だよ」と爆弾発言を落としてきた。

『俺達の家?』…どーいうこと?なんで?
僕の考えてる事がわかったのか昴くんは
「伊織もしかして今、『どーして?』って考えてる?」
無言でうんうんと頷くと
「なら最初から話さなきゃだね。実は俺達って、中学生の頃に1度だけ会ったことがあるんだよ。まぁ、会ったっていうより、ただ俺が一方的に伊織を見掛けただけなんだけどね。
それから伊織の事が何故か忘れられなくてさ、少しでも伊織と関わりが持ちたくて一緒の高校にしたり、クラスも少し権力を振りかざして同じにしてもらったんだ。
最初の方はただ伊織の目に俺が映ってるだけで満足だったんだけど、最近は他の誰にも伊織を見せたくないし、伊織には俺以外を見て欲しくないって気持ちが出てきたから監禁することにしたんだ」
えへへと言いそうな程明るい声で内容はかなり物騒なことを言う昴くんに近付こうとしたがカシャリと音がするだけで足が全く動かないことに気付いた。
「あー。伊織に逃げられないように足枷つけたんだ。これで、これから一生、ずぅーっとずっと伊織は俺と一緒だね」
さっきから驚くことが沢山あってついて行けてないのに、また昴くんは驚くことを…
僕は内心『はぁー』とため息をつき、僕の足元まで来てる昴くんを真っ直ぐ見つめる。
「どーしたの伊織?俺が怖い?」
真っ直ぐ昴くんを見ている僕の頬を手で包みながら徐々に顔を近付かせてる昴くんに
「昴くん。何か勘違いしてるみたいだけど僕、昴くんのこと好きだよ」
僕の発言に隠しもせず「はっ?」とビックリして徐々に近付いてきていた顔はあと10cmの距離でストップした。

「男同士だし言うつもりなかったんだけど、僕昴くんのこと好きだよ」
だからぁ、監禁されてずっと二人だけで居れるとかむしろ嬉しいんだけどと告げると、まだ昴くんは驚いているらしく目がまんまるのままだ。

「えっ?じゃあ俺等ってもしかして両想いってこと?」
やっとこちらに帰ってきた昴くんの第一声に深く頷き。
「僕、昴くんとずっと一緒に居れるなんて幸せだな」
えへへと笑うと昴くんは無言でギュッと僕を抱き締めた。

「いきなり監禁して伊織に嫌われるかと思ってた。でも、嫌われても何してでも傍に居たかったから…
ねぇ伊織…俺な、本当に伊織の事しか考えられなくておかしくなりそうなんだ。
いっそ、伊織を俺しか見えないし、俺の声しか聞こえない、全てを俺だけの世界にさせたいんだ。
俺以外に伊織を触らせたくないし見せたくない…。
なぁ、これがホントの俺なんだ。それでも伊織は俺の事を好きだと言ってくれるの?」
泣きそうな声ですがるようにギュッと僕を強く抱き締める昴くんに、僕も昴くんの背中に腕を回し強く抱き締め返す。

「僕はね、どんなことがあっても昴くんの事が大好きなんだよ。
こんなに昴くんに想われてたなんて知らなかったからビックリはしたけど、それでもやっぱり僕は昴くんが大好き」
だから僕を絶対に離さないでね…
そう言って真横にある昴くんの頬っぺに軽いキスを落とすと、昴くんは涙腺が決壊したのか「離さない、絶対に離さない」と言いながら僕の肩に顔を埋める。
そんな昴くんにまた僕は愛しいと思い、やっぱり僕は昴くんが大好きだという気持ちが溢れだす。
そして、こんなにも好きな相手に想ってもらえるということが幸せすぎてクラクラしてきた。

ようやく落ち着いた昴くんは顔を上げていつものカッコいい顔を惜しげもなく笑顔にさせ
「伊織を他の誰にも触らせたくないし見させたくないし渡したくもない。…こんな俺だけどずっと一緒にいて」
告げられた言葉に勿論頷く僕に、嬉しそうに今度は昴くんから僕の頬っぺにキスをしてくれた。
唇にしてくれなかった事を少し不満に思ったが
「唇はまたの機会ね」と言われ直ぐに機嫌が直った。






解説
気付いてくれたら嬉しいんですが、昴くんは1度も『好き』『愛してる』という言葉は言ってないです。
ハッキリ言って昴くんはまだ伊織の事好きじゃないです。この段階では完全執着です。
昴くんは『両想い』という発言をしていましたがこれの意味は『お互い一緒にいたいと思っている』ということ。
昴くん本人も自分の気持ちに名前が付けられないがただただ『伊織を離したくない。伊織を俺だけしか見えないようにしたい』と思っている。
これから伊織と一緒に暮らすことで少しずつ恋に発展して行ったらいいなと私は思います。


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bkm
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