不器用×勘違い
「ちっ、お前マジでキモいな」
「ウゼェーんだよ!ぎゃはは」
頭上から僕を貶しながら見下ろし、耳障りな声で暴言を吐いていくクラスメートに僕はただただ何もできず地面に叩き付けられた。
「おいおい何時までおねんねしてんだよ」
不意に聞こえた声の方に顔だけを向けて見てみるとそこには笑いながら足を振り上げてる姿が見え、僕は反射的に目をつぶった。


どーして僕がこんな目に合わなきゃいけないんだよ…
それもこれもあいつが…
ふと浮かんだ顔は僕がこんな状態になった原因である学年一のイケメン長谷部の何を考えてるかわからない顔だった。
あいつは何でもかんでも僕に言い掛かりをつけ、最後はいつも僕を見下して何処かに行くんだ。
そりゃ学年一の秀才である長谷部と中の下である僕じゃ話にならないのなんてわかりきってるはずなのにあいつは何時も僕に一方的に構った後、バカにした顔をしてどこかに行くんだ。
そーいうことを長谷部が毎回僕にしてくるせいで、長谷部に気に入られたい奴等は僕をイジメて長谷部に取り入ろうとしている。
残念ながら、上手くいった奴は居ないみたいだけどな。
っと、余裕そうに考え事をしているが、現実は振り上げられた足に腹を蹴られ息が出来ない程むせている。
心の中だけでもカッコ良く居たかったが、体のあちこちが痛い上に目の前まで真っ暗になってきた。
クラスメートの奴等ってこんな鬼畜な奴ばかりだったのかよ…
気を失うまで暴力振るうとか笑えないから…
そうこう思ってるうちに僕の視界は真っ暗になっていった。




目を冷ますとそこは楽園だった…………という訳ではなく、ただ真っ白い天井があり真っ白い布団に包まれていた。
そこで、あぁ僕気を失って誰かが保健室まで連れてきてくれたんだと理解した。
とりあえず起き上がろうと身体を起こしたが激痛が走りまた寝転んでしまった。
おいなんだよこの痛さ…
シャレにならんて…
やっとこさ起き上がりカーテンを引くとそこには椅子に座ってこちらを見て何時もの無表情を崩し、目を見開いている長谷部が居た。
いやいや驚きたいのは僕の方だからね?
ってかなんで長谷部が保健室居るんだよ、あと今何時だよ。
腹減ってきた…。
確かリンチされてたのが昼休みだったから結局昼飯食べれてないんだよね僕。
長谷部の存在を見ないフリし保健室から出ようと扉へ向かい、扉を開けると僕より背の高い女の人が立っていた。
この人、保健の先生だとわかった瞬間
保健の先生が僕の腕を掴み、長谷部の座ってる椅子の隣に僕を座らせた。
「えーっと山崎くん?」
「あっ、はい!」
突然保健の先生に声を掛けられ、ビックリして若干声が裏返ったのは聞かなかったことにしてくれ。
「少し言いにくいんだけど、その……イジメられてるの?」
あぁ僕の体を見たからか…
あいつら無駄にズル賢いから顔は狙わず体だけ狙ってるから、その身体の傷を見られて僕は保健の先生に心配されてるってことか
なるほどなるほど。それはわかったがなんで先生の「イジメられてるの?」発言に、長谷部はさっきより目見開いて驚いてるわけ?
演技なわけ?なんなわけ?
僕が考えに集中し黙っていると、先生は無言を肯定と受け取り
「誰が大本なの?」と聞かれまた僕は無言になった。
だってさぁ、だってさぁ今まで大本だと信じて疑わなかった長谷部が何故か僕を見ながら怒りをあらわにしてんだよ。
本当にどーいうことなんだよ?
大本がお前だって言うなってこと?
それなら、なんで僕がいじめられてるって聞いてあんなに驚いたんだよ?
また無言の僕に先生は優しく
「いきなり大本言えとか難しいわよね。ごめんなさい。えぇーっと同じクラスの人?」
言いたくないって訳じゃなく、誰が大本だかわからないから答えたくても答えられない状態なんで、いじめてる奴が同じクラスの人かという質問も僕にとって難しい…
とりあえず長谷部は置いといて、大本って訳ではないけど大体僕をいじめてるのは同じクラスの奴等なので素直に頷くと先生は嬉しそうに
「辛いのにありがとね。ちゃんと答えてくれて、先生嬉しいわ」と手を握られた。
そんぐらいで感謝するとか保健の先生って不思議だなっと考えていると、突然隣から割って入ってきた手によって、
先生に握られていた手を離してもらえた。
そこで先生は長谷部を見て思い出したように「あっ!山崎くんあのね、山崎くんをここに連れてきてくれたのって長谷部くんなのよ。お礼言ってね」と言われ、ここ最近で一番驚いた。
マジで長谷部、お前なんなんだ…と不信がっていると
「山崎くん怪我酷いし、折角なら長谷部くんに家まで送ってもらいなさい。長谷部くん良い?」と言い出し、いやいや何勝手に!?と思ってるだけで声には出せず、長谷部も無言で頷き
結局僕は、僕へのいじめの大本?である長谷部に家まで送ってもらうことになった。


先生とは玄関で別れ、僕と長谷部は無言で歩みを進めた。
僕はこいつと何話せば良いわけ?無言とかキツいんだけど…
僕の前を歩いていた長谷部の後ろ姿を見つめていると、突然長谷部は歩みを止め、振り返って僕を見た。
何か言われんのか?と構えてるとポツリと
「お前、誰にいじめられてんの?」
と聞いてきた。
僕は今までずっと長谷部にいじめられてんのかと思ってたんだけどな……っとそこまで考えたとき、ふと
『あれ?僕って長谷部に何されたんだっけ?』と考えが浮かび『うーん』っと考えた。
確か、僕がやろうとしたり言おうとしたことを毎回遮ったり、
いつも何を考えてるのかわからない顔で僕を見ていたことを思い出した。
そして、やろうとしたり言おうとしたことを遮る時は毎回、僕がやろうとしてた事先にやり、僕の仕事を軽くしたり、
いきなり先生に当てられ適当な答えを言おうとしたときに僕の声を遮って正しい答えを言ってくれていたんだと今さら気付いた。
「勘違いなら悪いけど、長谷部ってもしかして僕のこと好きなの?」
その言葉を聞いて長谷部は驚きながらも無言で頷いた。
嫌われてたと思ってたのに、逆に僕は長谷部に好かれてたのだと知り少し機嫌がよくなり
「僕も長谷部の事結構好きだよ。もしよければ友達になってくれない?」
というと残念そうな顔をしたあと急に真面目な顔をした。
いつもの何を考えているのかわからない顔ばかり見ていた僕はただただそんな顔も出来るんだと思ってると
「俺の山崎への好きは友達って意味じゃない」
それを聞いた僕は頭にハテナマークを大量に浮かべた。
友達以外の好きなってなんだよ?
好き…すき…スキ…like…love…もしかしてloveって意味の好き?
でも僕達男同士だしそんなわけないよな?
「…loveって意味…?」
恐る恐る『んな訳ないだろう』と思いながら聞くと
無言で頷かれた…頷かれた。
はっ?いやいや
えっ?なんで?loveって事は、長谷部は僕のこと恋愛感情で好きってこと?
「今はそれ、どーでもいいから。
っで誰がいじめの大本なの?」
僕にとってはどーでもよくないのだけど…
それに大本は僕のこと嫌いじゃなくて、むしろ恋愛感情で好きみたいだし…
「大本はさっき居なくなった」
「?」
やっぱそうなるよねぇ、うん
でも居なくなったもんは居なくなったんだよ…
「もしかして殺s「殺してないから!!」…山崎が人殺ししてたとしても俺、お前のこと愛してるから」
いや、殺してないから…
しかも何その甘い台詞!
僕の方が恥ずかしくなってきたし
「いや…あの、少し言いにくいんだけど…
その、ね!今まで僕、長谷部が僕をいじめてる大本だと思ってた……」
言ったぞ!と思い長谷部の反応を見るとなんともまぁ『なんだそれ?』と言いたげな顔をしていた。
僕が手短にそう思った訳やなんだりを説明すると長谷部は落ち込んだように
「お前から目が離せなくて、気付いたらなんだかんだ全て俺がやっちまってた…すまん」
「いや、いいって!それに結局、長谷部は何も悪くなかったし!勝手に勘違いしてごめんなさい…」
ことも解決し、もうすぐ自分の家が見えてきたのでここまで送ってもらったお礼をして長谷部に別れを告げると、
「じゃあな」と言ったあと僕の耳元に唇を寄せて
「明日から俺本気出すから…覚悟しとけよ?」
とニヤリと笑いながら言い、長谷部はもと来た道へ戻って行った。
その後ろ姿を見ながら「覚悟も何も今のでもうヤバイんだけど…」と一人、自分の家の前で長谷部に呟かれて赤くなった耳を手で覆い、カッコ良すぎるお前に惚れちまったわバーカと心の中で叫び、長谷部が見えなくなるまで見送った。







解説
いじめの大本は大本じゃなかった。不器用な優しさはあまり伝わっていなかったが、結果的には気付いてくれたので今までのアレは無駄ではなかったと思います。
次の日長谷部はイジメてた奴等をこってり絞り上げます。
今まで以上にやろうとする事を先回りしてやったり、なんだりと甘やかし不器用な愛を送りまくります。
早めにくっつくだろうが、くっついてからお互い譲らないところが多くて喧嘩になると思います。
でも喧嘩の内容は大抵長谷部が過保護すぎる故です。


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bkm
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