チャラ男×平凡
「吉乃はぁ、今日も可愛いねー」
「はは、僕なんかが可愛くなんてないけどありがとう。咲人は相変わらずカッコ良いよ」
僕の事を可愛いなんて言う物好きはきっと咲人だけだな、っと思いながら返事を返すと、咲人はムスッとして、
「んーん、俺の吉乃がぁ可愛くないわけがないのぉ」と反論してきた。
自分の顔が可愛くもカッコ良くも無く、至って普通だというのはとうに自覚済みなので、とりあえず咲人に
「咲人だけには僕が可愛く見えるなら、一生僕は咲人の物で居られるね」と笑うと
「へへ、もしもぉ吉乃が不細工だったとしてもー、俺はずっと吉乃のことが好きだからぁ安心してねぇ」
いかにも嬉しそうに言う咲人に僕も嬉しくなる。
この人を好きになれて僕は本当に幸せだな。





咲人の見た目は、10人中10人が見たら迷わずチャラ男と答える程チャラい見た目と、見た目を裏切らないユルい独特な喋り方をしている。
何故そんなチャラい咲人と地味よりな平凡君である僕が一緒に居るかというと、恋人同士だから。

咲人が僕に告白をしてきて、チャラ男だが学校1のイケメンの咲人が、男の僕に告白なんてあり得ないし、絶対裏があると高を括って『罰ゲームですよね?えっと…ごめんなさい』というと、目の前に居た咲人が無言でポロポロと泣き始めた。
焦りながら『どうしたんですか?』と聞くと、『罰ゲームじゃないよぉ。本気なのぉ』ともっと泣き出してしまい、そこでやっと真剣な告白だったのに、勝手に僕が罰ゲームだと決めつけ、断るという失礼な行為をしてしまったと気付いた。
慌てて『ただの僕の勘違いです!僕で良いならこちらこそお願いします』というと、今までボロボロ泣いていた咲人はまだ『ヒック…うっ』と軽く泣きながらも、僕の返事を聞いて二へへと満面の笑みを浮かべ、
『今は俺の事が好きじゃなくてもぉ、直ぐに俺の事を好きにさせるからねぇ』と言った。
そんな咲人にキュンと胸が高鳴り、それから数日も経たずに咲人の宣言通り、僕は咲人の事を好きになった。



これが僕達の成り立ち。
咲人と付き合い始めたことで睨まれたり虐められたりするだろうと覚悟を決めていたのだが何もなく、むしろ『やっと咲人くんと付き合いだしたんだね。見た目は軽そうだけど、中身は凄い健気なのよ』やら『咲人は良い奴だから、どうか捨てないでやってくれな』と僕達の仲を応援?してくれた。
みんなの反応に疑問に思った僕は咲人に何故かと聞くと
『あー、それはねぇ俺が吉乃の事をぉみんなに相談してたからだと思う』
咲人の言葉まとめると、僕のことを好きになってしまった咲人は、自分はノーマルなはずなのに男の僕を好きになってしまったことを悩み、どうしようか考えても答えが出ず、友達に相談した。
それから僕に告白するまでに咲人の友達や知り合い、それに咲人のことが好きだった人まで咲人の本気の恋を応援するようになり、僕と付き合い出したことを自分のことのように喜んでくれているらしい。
一通り咲人に説明してもらった後、ふと何故咲人は僕のことを好きなったのかが気になった。

いい機会だし、今聞いてみようと僕は口を開き
「咲人はどうして僕のこと好きなったの?」と聞くと、考えるようにうーんっと言ったあと、ただ一言「一目惚れぇ」と笑った。
…いやいや咲人くん、こんな平凡顔のしかも男の僕になんで一目惚れをしたのだよ…
君、ノーマルだったんでしょ?
ジト目で咲人を見ると、また笑いながら
「吉乃はぁ覚えてないかもだけどぉ、高1の冬ん時に吉乃がぁ公園のブランコに座ってぇ肉まん食べてたの。その姿に俺は惚れたのぉ」
「あー…。そういえば冬に肉まん買って寒空の下で食うのが美味いからってしてたわ。でもなんでそんな姿の僕を?」
大抵の一目惚れって、見た目なら顔が好みだったからとか、中身なら『雨の日に濡れてる捨て犬を拾う優しい姿見て』とかじゃないの?
まぁ、僕だしそんな事をしたことも、そんな場面に出くわしたこともないけどね

「なんかねぇ、ハフハフさせながら肉まん食べてる吉乃の隣でぇ俺もハフハフさせながら肉まんを食べたかったのぉ」
肉まん食べてる僕に一目惚れしたんじゃなく、それは肉まんに一目惚れしたんじゃないのかと聞くと
「肉まんに一目惚れなんてしないよぉ、吉乃はお馬鹿さんだなぁ」と僕の頭を撫でてきた。
普通なら馬鹿と言われて黙ってなどいないが、咲人に頭を撫でられ照れており、そんな場合ではなかった。
それに愛おしそうに言ってるので、きっと悪口で言ったわけではないので、怒りも全く湧いてこなかった。

「もし肉まんに一目惚れしたならその辺で買えばいいけどぉ、俺はぁ肉まんを美味しそうに食べる吉乃の隣でぇどうしても一緒に肉まんが食べたいと思ったのぉ」
「…僕、普通な事しかしてなかったよね?」
そーだねと言いながら笑う咲人は
「でもねぇ、俺はその時あの子と色んな事を一緒にしたいしぃ見てみたいって思ったんだぁ。初めて会った上に、名前も知らなかった吉乃にだよぉ」
これって世に言う一目惚れってやつだよねぇと言うと同時に此方を見やり、
「今もこうやってぇ寒空の下じゃないけど2人で隣に座りながらぁ、1つの肉まんを半分こにして食べれてぇ俺はすごく幸せなんだよぉ」と僕の手に収まっている少し冷めた肉まんを一口かじった。
そんな咲人の一連の発言や行動は、既に咲人にメロメロにされてる僕には嬉しくて堪らないことで、嬉しさに赤く染まった顔を上に上げることができなくなりながらも
自分の嬉しい気持ちをどうにか伝えるために、咲人の手に収まっていた肉まんを今度は僕が一口かじり
「咲人だけじゃなくて僕も、一緒にこうやってるだけですごく幸せだ」と言うと咲人は笑いながら
「吉乃と俺ぇ、端から見るとただのバカップルだねぇ」
公共の場なのになんともまぁ恥ずかしいことをしてしまったと気付き、今更遅いが顔を手で隠すと
「可愛い吉乃顔が見えなくなっちゃうからぁ顔から手離してぇ」とプンプン言ってる咲人の声が聞こえ、チラリと指と指の隙間から咲人の様子を伺うと、徐々に近付いてきており、何が起こるのかわからない恐怖でギュッと目一杯目を瞑ると咲人は僕の顔を覆ってる手を少しズラシ、僕のおデコにキスをした。
そしてまた少し僕の手をズラシ、右まぶた、左まぶた、鼻の頭、頬っぺたと僕の手を剥がしながら徐々に顔中にキスを落とした。
手がすべて剥がれると、最後に唇にチュッと触れるだけのキスした後に
「どんなバカップルなことをしてもぉそんなの気にしない位ぃ、俺はぁ吉乃の事大好きだよぉ」
恥ずかしいがとても嬉しい言葉をくれる。
「僕も咲人のこと大好きだけど、まだ恥ずかしいからコッチ見ないで」と告げると、僕の後ろに回り込み
後ろからぼくを抱きしめた。
「多分ねぇ、俺は吉乃に捨てられたら絶対にぃ死んじゃうよ。だからぁ何処にも行かないでね」
咲人の突然の言葉に少しビックリしながらも、まだ赤い頬をさせたまま
「あはは、そんなこと僕は絶対しないよ。咲人こそ浮気なんかして僕から離れていかないでね」
見た目も喋り方もゆるゆるな咲人だけど、咲人の僕に対する愛だけは本当に真剣なもので、愛されてることをしっかりと実感することができる。
最初はまぁ、あんな見た目だし一度も喋った事もなかったのにいきなり告白され、直ぐには信じることはできなかったけど、真剣だということに途中から気づき、自分の勘違いに焦り思わず了承してしまったが、徐々に男とか女とか関係なく咲人のことを好きになっていた。
僕が咲人の事を好きになったことで咲人の一方的な片想いから見事両想いになり、咲人は告白の時のように泣きながらもとても喜んでくれた。
僕を後ろから抱きしめている咲人の手を不意に掴みとり、絡めるように恋人繋ぎをすると、ビックリしたような顔で咲人は後ろから僕を覗き見てきた。

「吉乃ぉ?どーしたの?」
「咲人の事を好きになれて良かった」
自分で言った言葉に恥ずかしがりながらも、しっかりと伝えられたことに満足していると
「俺をもっとメロメロにさせてぇ、吉乃は何したいのさぁ」と、後ろから抱きしめてる咲人が僕の首に顔を埋めた。
「あははは、咲人照れてくれてんの?」
「もぉ、何がおかしぃーのぉ?…大好きな子にそんなこと言われてぇ冷静で居られるわけないよぉ」
それは僕も一緒だよ。
今だって何気ないように咲人は僕のことを『大好きな子』と言ったが、それだけで僕の顔を赤くさせてしまってるのだから。
とりあえず、僕が耳まで赤くさせしまっているのがバレないよう、もう少し咲人には僕の首に顔を埋めてもらおう










おまけ
「咲人…」
「…何ぃ?」
「好き。愛してる。いくら言っても言い足りないぐらい大好き…」
「………」
「ずっとそばに居て。ずっと僕を見てて」
「………」
「僕の事を離さないでね」
「ねぇ吉乃ぉ、俺は可愛い吉乃を見たいから俺の目を隠してるぅ手を離してぇ」
「…僕、可愛くないからダメ」
「…んしょ……ほらぁ、顔を真っ赤にしながらもぉ頑張って俺に愛を告げてくれてる吉乃はぁスッゴい可愛いよぉ」
どうやら、耳まで赤くさせてしまっているのを隠すために考えた作戦は、全部自分の本当の気持ちなので
言ってる自分までも恥ずかしくなり、この作戦は失敗に終わった。

そりゃー最初はチャラ男だしイケメンだし男だしで色々焦ったけど、今は…
『あなたを好きになれて、僕は幸せだ』







解説
メロメロって死語ですっけ?
ボキャブラリーがないので同じ言葉の使い回しだなと常々思います。文章力や日本語力の無さ実感します。辛いです。

季節的には秋です。まだ寒くはないが暑くもないので寒くなったら咲人くんの念願の寒空の下で2人で肉まんをハフハフ食べるという願いが叶います。
何気ない姿を見て『この人と色んな事をしたい』と思うのはそれはきっと一目惚れなんだと私は思います。


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