風紀委員長×眼鏡フェチ
いつもは前から順番に配られるプリントを後ろの席の相手を見ずに渡していた。
だが今日は何故か体を反転させ、後ろに座っているクラスメートにプリント渡そうと振り向いた。
そして何気なく後ろの席のクラスメートの顔を見た瞬間すべての動きが止まり、ただ呆然と後ろの席のクラスメートのある1点に俺は視線を集中させた。
「…っ!み、三宅?」
少しの間じーっと見つめすぎたせいで、後ろの席のクラスメート…谷川が驚いた顔しながら俺に話しかけてきた。
そこでようやく俺は我に帰り
「ごめん。…谷川って眼鏡かけてたんだな…スゲー似合ってる。あっ、これプリント」
と何事もなかったように前へ向き直るが、眼鏡姿の谷川を見てから心臓がバクバクと高鳴るのが治まらない。


昔から俺は『ギャップ』というものが好きで、その中でも群を抜いて眼鏡というアイテムが好きで好きで仕方ない、いわゆる眼鏡っ子フェチ男子というやつだった。
特に、眼鏡っ子のする仕草の中で『長時間眼鏡をかけていたせいで疲れた目を、眼鏡を外し、指で目頭をマッサージする』という仕草が、好きな眼鏡っ子の仕草ランキングで堂々の1位を飾っている。

今までずっと俺は理想の眼鏡っ子を探し求めていたのだが、とうとう俺は見つけてしまった。…そう、理想の眼鏡っ子、谷川を!!!
今日まで俺は『ここは男子高だし理想の眼鏡っ子は大学に入ってから見つけよう』と考えていたのだが、まさかこんな身近に、しかもこんなにも完璧な眼鏡っ子を見つけてしまうとは…
ノンケだが、谷川ほどの完璧な眼鏡っ子のイケメンなら性別の壁を軽く超えられる。
男同士?んなもん、二の次だ。
俺はこんなにも眼鏡が似合うやつは見たことがない。

今まで谷川のことは、同じクラスの超絶イケメンな風紀委員長という印象しかなく、俺はゲイでもバイでも無かった為興味なんて更々無かった。
『イケメンは何処行ってもモテて大変なんだな』っと男子高なのに可愛い系の男子にモテまくりな谷川に少し同情している程度の認知だったが、今日からまさか可愛い系の男子同様に俺みたいな普通顔の男にまで付きまとわれるようになるなんて、
やっぱりイケメンな谷川は大変だなと同情してしまう。
けれどもう遅い。俺は何としてでも谷川を手に入れたい。
そのためにはまず手始めに谷川の事を知ろうと思う。


いつもなら昼休みになると教室から離れ1人で昼食をとっていたが、俺は4時間目の授業の終わりと同時に昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴った途端、後に振り返り谷川に『昼食一緒に食べよう』と、声をかける。
谷川は目を丸くしながら前に座ってる俺を見つめてくるが俺を見つめてるその目にはさっきまでかけられていたあの眼鏡がもうなくなっていた。
俺は少し残念に思いながらも『谷川と一緒が良いんだ』っと、もう一度言うと谷川は顔を俯かせながら
『あぁ…』っと了承の返事をした。



ルンルン気分で谷川の腕を掴み中庭まで引っ張り、中庭に着いた瞬間クルリと谷川に振り返り草の上に座るように指示を出す。
谷川が座ったのを見届けてから俺も谷川の近くに腰を下ろして弁当を広げた。
何を話そうか考えても何も浮かばなかったので、正直に1番気になっていたことを聞いてみる。
「谷川さぁー、授業中に眼鏡かけてたけど目が悪いの?」
「ちょっとだけ…でも少しだけ悪い程度だから、授業の時とか本読む時以外はあまりかけない」
と、いつも全校生徒の前で話す谷川と違い、少し遠慮がちにおずおずと言ってきた。
『ふーん。だから今まで谷川の眼鏡姿を見たことなかったのか』と納得しながら、さっきから何故か俺の顔すら見ようとしない谷川を疑問に思い『もしかして、谷川って俺の事嫌いだった?』と、不安な気持ちを抱えながら聞いてみると谷川は慌てたように俯いてた頭を上げて
「嫌いなわけないよ!むしろ…その、好きだし」
最後の方は声が小さくて聞き取れなかったが、なぜかとても真剣な目で見られ、今谷川は眼鏡をかけてないのにドキドキしてしまう。
多分赤くなってるだろう自分の顔に手をあてながら
「ありがと。俺は谷川のこと好きだよ」と言うとさっきまでの威勢はどうしたのか谷川は顔を真っ赤にさせ、そっぽ向いてしまう。
そんな谷川を見て『もしかして俺って谷川に好かれてる?』という予想が一瞬浮かんだが
『こんな平凡を好きになるなんてありえないか』と思い直し
「谷川ってさぁ、いつもお昼パンなの?」っと話題を変えて、少し気になっていた事を聞くと無言で頷いた。
「パンだけじゃ寂しいし、この卵焼きあげる」
お弁当の中に入れていた卵焼きを1つ箸で掴み、谷川の口の前に持っていく。
自分なりに大胆に相手にアピールしてみるが、好きな相手に『アーン』をするのは結構恥ずかしく、少し手が震えてしまう。
いつから俺ってこんなに乙女になってしまったんだろうと心の中で苦笑いを浮かべていると
谷川は俺と卵焼きを交互に見た後、目をつぶりながら勢い良く卵焼きにかぶりついた。
「不味くない?」
一応俺が自分で作っており、あまり味の保証ができないので心配になってしまう。
「…うん美味しいよ。三宅のお母さんは料理上手なんだな」
そう言って微笑む谷川はキラキラしすぎて見つめ続けていられない。
眼鏡無しの谷川もいろんな意味で俺にとっては危険過ぎる。
「よかったー。この弁当俺の手作りなんだ」
谷川に喜んでもらえたことで、俺も自然と笑顔になり『えへへ』と言うと
「み、三宅の手作りなのか?」
谷川は自分の口に手を当てて、驚いた顔で俺を見る。
「…男の手料理で悪かったな」
そんないかにも嫌そうな仕草をされるとは思ってなかったので不貞腐れながら言うと
『いや、違うんだ!その、三宅の手料理が食べれてすごくうれしくて』と
…やっぱり谷川って俺のこと好きなのか?
「なぁ谷川、間違ってたらごめんな。…もしかして谷川って俺のこと好きなの?」
別に鈍いわけでも鋭いわけでもないが、話をするだけでこんなに顔を真っ赤にするのはどう考えてもおかしい。
「………うん、好き。
ここが男子校だとしても、三宅ってノンケだし、キモイよな…ごめん」
すまなそうに、泣きそうな顔で言う谷川に俺はどう返事をすればいいのか戸惑ってしまう。
「あの…その、何て言えばいいかわからないけど俺も谷川のこと好きだよ」
「いいよ嘘つかなくて、三宅がノンケなの知ってるし」
いや、そりゃ眼鏡姿の谷川を見るまで完全なノンケだったけど、眼鏡姿の谷川を見て俺は性別の壁を越えてもいいと思えるぐらい惚れてしまっている。…つい今さっきからの話だが。
「谷川!あのな俺、実は眼鏡っ子が大好きなんだ」
そういった瞬間さっきまでの落ち込んだ様子なくなり、ただ目を丸くしてまっすぐ俺を見つめてくる。
「谷川が言うように俺はノンケけど、さっき授業中に眼鏡かけてる谷川を見て『欲しい』と思ったんだ」
理由は眼鏡だったけど、今の眼鏡なしの谷川も俺、大好きだよと言うが俺も自分で言ってて恥ずかしくなり、谷川の顔を見ることができなく、今度は俺が顔を俯かせた。
すると前から突然抱きしめられた。
「…うれしい。…俺も三宅のこと大好き」
ビックリして少し顔を上げると目の前にかっこいい谷川の顔があり、思わず動きが固まり徐々に顔が赤くなっていく。
「三宅顔が真っ赤だ。…凄く可愛い」
こんな平凡顔の何処が可愛いのか自分じゃ全くわからない。
むしろ、平凡顔の野郎が可愛いはずがない。
谷川の余計な一言のせいで、さらに顔が赤くなり熱くなる。
「…谷川離して!は、恥ずかしくなってきた…」
ここは学校の中庭だと思い出し、突然恥ずかしくなった俺は谷川に離すよう呼びかけると、抵抗もなくパッと俺の身体を離してくれた。
ようやく解放され新鮮な空気を堪能していると
「放課後、楽しみにしてて」と言い谷川が俺の頭を撫でてきた。









おまけ
「眼鏡!眼鏡!眼鏡!眼鏡ぇ」
「…どお?」
「谷川かっこいい!イケメン!眼鏡っ子!」
「なぁ、…三宅は眼鏡っ子の俺と眼鏡無しの俺、どっちが好「眼鏡っ子!」……」
「眼鏡っ子!」
「……いつか絶対眼鏡の俺より普通の俺の方が好きだって言わせてやる…」
「…でも、谷川ならどっちも大好きかも」
「……………三宅!!!!」






解説
眼鏡っ子好きと眼鏡のおかげで気になってた人と急接近できた話。
これはまた今度内容変えますね。自分で納得出来てないので。

この2人には眼鏡デートとかしていちゃラブしてほしい。
三宅くんは眼鏡がなきゃ谷川ことは何があっても好きになはなかっただろう本物ノンケ。
谷川は平凡な人生に憧れるうちに三宅くんに惚れてしまっていた平凡になりたい願望があるイケメン。
本当は風紀委員長もやりたくなかったし、こんな顔に生まれたくなかった。


prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -