当て馬人生、もとい恋のキューピッド人生
「祐希、ごめん」
「輝のバカァ」
目の前で繰り広げられているホモバカップルの抱擁に俺は思わず苦笑いが出た。
俺に被害はないからいいけど
これで当て馬にされたのって一体何回目だったっけなぁ…



俺が覚えている中で一番古い記憶では確か幼稚園の年中の頃、一番仲良かった男友達に好きな人を教えてもらい、その恋を成就させるのを手伝ったのが多分俺が初めて当て馬にされたときだったと思う。

その日から今日まで、男女関わらず俺は今もよく当て馬にされ続けている。
小学生の頃なんて突然クラスの女子数人に呼び出され
『クラスの男子全員の好きな人を教えろ』と脅迫された。
小学生ながらに女子の怖さを知った俺は自分の身が可愛く思わず仲良い友達の何人かの好きな人を教えるとそれが両片想いだったらしく、今度はカップル成立させるために無理矢理女子達に手伝わされた。
そして見事小学生のくせに俺の友達数人は彼女持ちになり、調子に乗った女子共は俺を当て馬にしてじゃんじゃん恋人を作り始め、クラスの9割が恋人がいるという、なんともまぁませたガキ共ばかりな小学生時代だった。

中学生になったら男女のカップルだけじゃなく、ホモっプルやレズっプルにもよく当て馬にされた。
最初は凄く可愛いもんで
『同じ男をいつの間にか好きになって、でも諦められない』という常識とは少しはずれた恋をして落ち込む友達を励ましてたら、その片想い相手も友達の事が好きだったらしく、俺が友達を励ましている姿をたまたま見て勝手に嫉妬をし、放課後に呼び出された。
友達の片想い相手の第一声が
『テメェもあいつの事が好きなのか?もしそうでも、俺は負けねぇからな』と勘違いの宣言をされ
友達の恋が報われそうなことに喜ぶべきなのか
またしても当て馬にされたことに呆れるべきなのか少し戸惑ったのち
とりあえず誤解をとくため真実を話した。
その二日後に見た友達の嬉しそうな顔と『ありがとう』という言葉に当て馬にされたことなんてどーでもよくなり俺は素直に喜ぶことができた。

当て馬にされるのは少しムカつくが、なんだかんだ恋人が出来て幸せそうな奴等を見ているとそんな気持ちも吹き飛び、自分の事では無いはずなのに嬉しい気持ちでいっぱいになる。


「ただいまぁ」
家の扉を開けると同時にドタバタ音をたてながら近付いてくる足音に無意識に笑顔になる。
「徒歩3分しかかからない距離にあるコンビニに行って帰るだけで何時間かかってんだよ。めっちゃ心配したじゃん」
「話せば長くなるんだが一言で言うと、ホモバカップルに当て馬にされた」
コンビニに行くまでは何も問題はなく良かったのだが、コンビニから家に帰る途中でしゃがんでる人を見つけ、俺は何故だか放っておけなく
声をかけると突然顔をあげ『俺って魅力無いですか?』と泣きながら聞かれ
今までの経験と直感で面倒ごとに巻き込まれるなと思ったが気付いたときには既に遅かった。
それから何故かそいつの家に連れてかれ、話を全部聞かされた。
しゃがんで泣いてた人の名前は祐希と言い、どうやら『恋人が何度も浮気して辛いがまだ好きだから別れたくない。でもやっぱり浮気されるのは辛い』という事らしく、
んな事言われても俺にはどーにも出来ねぇよと思っていたとき祐希さんの電話が鳴り出した。
その電話は祐希さんの恋人からだったが『出たくない』という祐希さんの代わりに俺が出ると、不機嫌そうな男の声が聞こえ
そこで初めて祐希さんの恋人が男だと知った俺は『意外と何とかなりそーだな』と悟り、まずは祐希さんと恋人さんとの話し合いの場を設けるために祐希さんの家に来るよう呼んだ。
呼んでから数分で祐希さんの恋人である輝さんはやって来てくれたが、来てすぐの時は俺が祐希さんの浮気相手だと勘違いをして射殺すような視線で睨まれていたが、
事情を話したのち祐希さんの胸の内を俺が代弁し祐希さん本人も自分の気持ちを伝えることで二人は和解し、しかももう浮気しないと輝さんは誓ってくれた。
元々輝さんは、祐希さんに構って欲しいからという理由で浮気をしていたらしく、悲しませるつもりはなかったと凄く反省していた。
そのあとは二人が熱い抱擁をし、なんだかいい雰囲気になったので俺は素早くその場から去り、今度こそ家に帰ってきた。


リビングでコンビニから帰るのが遅くなった理由を一通り話終えると、
俺の腕の中で丸くなって最後まで黙って聞いてくれていた恋人のマサが『うーっ』と唸りだした。
「どーした?」
「『どーした?』じゃないよ!俺がどんだけ心配したと思ってるの!事情はわかったけど、次からはちゃんと電話かメールしてよね。この、お人好しめ。大好きだコンチクショー」






解説
優しいせいで当て馬にされる残念なイケメン。波乱ごとに気付いたら巻き込まれている。
恋人は当て馬された時の、その当て馬にしてきたやつの友達。
要するに当て馬にされたからこそ出来た恋人です。
恋人のマサくんはそんな優しすぎる恋人が嫌だと思いつつ嫌いになれない。むしろもっと惚れてしまっている。


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bkm
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