料理人×生徒会長
「……ちっ、あいつら俺に全部仕事押し付けやがってふざけんじゃねぇぞ」
いくらやっても減らない書類に頭を抱えるが
俺がやらなきゃ誰もやらないとわかっているので口では文句を言うが、大人しく手は休ませず仕事を続ける。



全てはこの学園に転校生が来たことから始まった。
転校生はボサボサの髪の毛で分厚い眼鏡をかけた一見オタクっぽい格好だったが、見た目を大いに裏切り中身は明るく元気な普通の高校生で
そんな普通の高校生である転校生にこの学園に通う普通の感覚を持たないお金持ちのお坊ちゃんな俺以外の生徒会連中は全員転校生に惚れてしまった。
転校生である太一は本当に良いやつで、見た目は良いが頭のネジが少ない生徒会役員達の気持ちを知り『あははは、これってモテ期ってやつ?』と男同士ということに嫌悪もせず笑いとばした。
そんな太一にますます惚れ直した役員達は『太一をめぐる、これからの人生がかかった大事な戦いなんだ』と言い、全員仕事をサボって太一にアタック中。

少しでも油断したらライバルに太一を取られるからなかなか離れられないという
あいつらの気持ちは十分にわかる。
わかるが、4人分の仕事を1人でやるのはだいぶ辛いぞ…
それに
「書類持ってきたぞ」
「はっ、随分遅いな」
「あぁすまん。それじゃ帰る」
「まっ、待てよ!」
風紀委員長のウザさが半端じゃねぇんだよ
なんでこいつは俺が来るたびにいちいち絡んできて嫌味言うんだよウゼーよ
まだ生徒会室には仕事残ってんだよ、早く帰らせろ
「…なんだよ」
「…その、1人で仕事やってるから遅いんだろ?」
「だからなんだよ」
「無理、するなよ…。
…べ、別にお前を心配してるんじゃなくて、お前が倒れたら仕事に支障きたすからしょうがなく言ってやってるんだからな。勘違いするなよ」
ツンデレか?ツンデレなのか?
180越えてる強面イケメンがツンデレとか微妙なんですが…。
こいつの相手をするのが大量の書類より一番めんどくせーんだよ…
だから役員達よ、早く帰って来てくれ。






自室に書類を持ち帰りひたすらこなし
『ピンポーン』というチャイムでやっと7時を過ぎていたことに気が付いた。
多分、あの人が来たんだろう。
そう思い急いで玄関へ向かい、扉を開け顔を確認してから部屋に訪ねてきた人物に勢いよく俺は抱き着いた。
「こんばんは宮本さん!」
「…っと。こんばんは光希くん。毎回光希くんが抱き着いてくるから頑張って踏ん張ってたら足腰が鍛えられてきたよ」
思う存分抱き着いてから宮本さんから離れ顔をうかがうと、カッコいい顔を惜しみ無く笑顔にさせており俺も思わず笑顔になる。

宮本さんはこの学園で働く寮の料理人で、
俺が1人で仕事するようになってから寮に食べに行く暇もなく、生徒会の特権であるデリバリーを使っていたときに下っ端である宮本さんが料理を届けに来てくれたことがキッカケで知り合いになり、
1人で仕事をする俺を心配してくれた宮本さんは、サービスとして俺の部屋に来て料理を作ってくれるようになった。
部屋で作ったものなので出来立てホヤホヤのものを食べられるし、料理は美味しいし、いつも笑顔な宮本さんの雰囲気はほんわかしてて癒されるしで
宮本さん無しの生活なんて考えられない程今の俺は宮本さんに依存しきっている。
「光希くんって和食好きでしょ?だから色々挑戦してみたんだけど不味くない?」
「どれもめちゃくちゃ美味しいですよ。宮本さんが俺の為に頑張ってくれたとか……あぁもう大好きです!結婚しましょ!俺しっかり宮本さんを養いますから」
「いいけどそれじゃあ、僕が光希くんのお嫁さんってこと?」
「いえ、俺が宮本さんのお嫁さんになりたいです。ってか、ならせてください。そして毎日俺の為に味噌汁を作ってください」
箸と茶碗を両手に持ちながら宮本さんに逆プロポーズしている俺はきっと端から見たらさぞかしカッコ悪いだろう。
けれど逆プロポーズしてる俺自身は至って真剣なのでそんなことに気にしてる余裕もない。
「光希くんが僕のお嫁さんになってくれるなんて嬉しいよ。僕が光希くんの旦那さんで本当にいいのかい?」
「むしろ宮本さんじゃなきゃ俺、嫌です!まかせてください、宮本さんの為にたくさん働きますから」
「じゃあ、よろしくお願いします」
この先俺は確実に親父の経営する会社の1つを任されるだろうし、これ幸いに俺は次男なので跡継ぎの心配もない。
どんなに他の役員達が仕事を俺に押し付けようが、風紀委員長がウザかろうが今の俺ならなんでもやってやるよ
隣に宮本さんがいる限り俺は頑張り続けられる







解説
王道くんがキッカケで恋した生徒会長の話。王道くんの事は友達として好き。厄介な奴等を嫌な顔せず受け入れてる所など純粋に尊敬し、いい奴だなと思っている。
書類や風紀委員長の対応が大変だけど宮本さんがワザワザ部屋にやって来て料理作ってくれるので『仕事が忙しくてよかった。役得』と思っている。

ぶっちゃけ宮元さんは会長のことを弟のようにしか思ってない。手のかかる可愛い弟のように接している。
でも会長とこれからもずっと一緒に居たいと思っているから徐々に『この気持ちは一体なんなんだろ?』と悩みだす。


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bkm
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