お久しぶりです(+ジョカれい)
2012/08/24 00:46

「あぁん?何やってんだジョーカーのやつ。」

ここはバッドエンド王国の片隅。ウルフルンはいつものように何か食べるものはないかと王国内を歩き回っていた。
そんな時、あるひとりの男が窓に向かいながらせっせと髪をいじっているのを目撃したのだ。

「さっきからずぅーっとあの状態オニ。」
「ぅうわぁああ、なんだよアカオーニか。ったくビビらすんじゃねぇぜ。」
「ウルフルン、驚いたオニか?この程度で驚くなんてだらしないオニ〜。」
ガハハと、笑い声が響く。
「うるっせぇよ。で、なんだって。あいつどのくらいあの状態なんだ?」
尋ねれば、首をかしげながら
「ん〜、だいたい30分は経ってるオニな。」
と答える。
「さんじゅっぷん〜〜?あの野郎がかぁ??ありえねぇだろ。」
「でも本当オニよ。何回も頭かきむしってるオニ。」
「はぁ…」
「シャンプー合わないオニかね?」
「あ〜そうかもな…ってんなわけあるか。頭が痒いわけじゃねぇと思うぞ。」
「そうオニ〜?」
「そうだわさ。」
「そうそう。」
「だいたいジョーカーのやつ、今日帰ってきたら急に髪型を気にしだしただわさ。きっと偵察に行った時に何かあったんだわさ。」
「へぇ、あいつ偵察とか行ってやがるのか。…マジョリーナ、お前いつから居たんだ?」
「細かいことは気にしないんだわさ。それよりお前ら、ジョーカーに何があったのか知りたくないかい?もしかしたらとっておきの弱みを握れるかもしれないよイッヒッヒ」
「!!知りたいオニ!ジョーカーの弱み、握るオニ!!」
「そりゃあ興味はあるけどよぉ。どうやるってんだ?まさか過去に戻るなんて出来るわけねぇしよぉ。」
「そんなときのマジョリーナ様だわさ。」

じゃじゃ〜ん、と取り出したのはごく普通の虫眼鏡。
形も大きさも既製品と変わらないものだ。

「??」
「なんだそりゃ。ただの虫メガネじゃねーか。」
「むっ。虫メガネじゃないんだわさ!!これはマジョリーナ様のだぁ〜いはつめい、ノゾキミールなんだわさ。」

マジョリーナが自慢げに胸を張る。

「これはレンズの中に移した物の思考や記憶をのぞき見るための発明なんだわさ。これで見られればどんなに隠したい秘密も筒抜けだわさ。」
「へぇ〜、スゲェじゃねぇか。さっそく見てみようぜぇ。」

ウルッフ〜、と楽しげにレンズを覗き込む。レンズの向こう側には先程までと変わらず髪をいじり続けている青年が写った。

「あぁ、何も見えねぇじゃねぇか。」
「気が早いだわさ。もっとゆっくりするだわさ。」
「オレ様にも見せろオニ〜。」
「んぁあ?あぁ、後でな。」
「約束オニよ〜。」
「あっ、見えてきただわさ!!」

レンズがやたらと霞み始め、一面が真っ白になったと思ったら急にもやが晴れた。そこに映っていたのは紺色の髪をした少女と、ぬいぐるみのような奇妙な生き物だった。

「これ、キュアビューティーじゃねぇか?」
「プリキュア!?やっつけるオニよ!!」
「あんたは少し黙るだわさ!!…しっ、なにか声が聞こえるだわさ。」

確かに耳を澄ますと、微かに声が聞こえる。

『れいかどの、どうしたでござるか?』
『ポップさん…いえ、なんでもありませんよ。』
『本当でござるか?顔色が優れないように思えますが…』
『あら、そう?ちゃんと昨日も就寝時刻ぴったりにお布団に入りましたのに…』
『寝不足、ではなさそうでござるな。何か悩み事があるのであれば我慢せずに出したほうが良いでござるよ。』
『そうかしら……そうね。溜め込んでてはいけませんものね。..では、ポップさん。少し相談に乗ってくださいますか?とてもつまらないことなんですけれども…』
『拙者でよければ、力になるでござる。』
『ふふ、ありがとう。それでは。私のプリンセスフォームについてなんですけれど、この間あかねさんから“ビューティーのプリンセスフォームってなんやプリンセスっちゅうかキングみたいやんなぁ。百獣の王って感じでごっつかっこええで!”と言われてしまいまして…確かにほかの皆さんのと比べるとちょっと猛々しい気がするのですよね。それが気になってしまいましたの。』
『ふむ、百獣の王、、でござるか。』
『ええ、言われるまでは気にならなかったのですけれどもね。私ももうちょっとおしとやかにならないのかしら、と考えてしまいまして。…すみません、このようなつまらないことをお話ししてしまって。』
『つまらなくはないでござるよ。ただ…れいか殿は、ライオンが嫌いでござるか?』
『!!いいえ、決してそんなつもりでは…』
『そうでござるか!ならよかったでござる。拙者は、ライオンである故に、れいか殿がライオン嫌いであったのなら少々寂しく感じてしまうのでござる。。』
『あら、ポップさんはライオンですの。』
『そうでござるよ。故に、常に気高く男らしく生きていくのでござる!!』
『まぁ、かっこいいですわ!』
『…ッ////そ・・・それほどでもないでごz』

ガンッという音と共にぬいぐるみが倒れる。
それを少女が慌てて抱き上げた。

『面目ないでござる…』
『いえ、大丈夫でしたか?』
『うむ・・』
『それにしても…』
『??どうしたでござるか?』
『いえ、ポップさんもライオンなのだとしたら、私たちお揃いですわね。』
『!!そ…そうで…ござるな////』
『フフ、ちょっと元気が出てきましたわ。ポップさんとお揃いなら多少猛々しくてもいいかもしれません。』

元気が出たなら良かったでござる、という声がフェードアウトしていき、また始めの霞がかった状態に戻る。

「これで終わりかぁ?結局何だったんだ??」
「…まだだわさ。」
「ぁあ?まだだぁ?終わりじゃねぇか、どうみたって。」
「ここからジョーカーの思考が見れるんだわさ。」
「んだってぇ?」

そんなやり取りの中で、青年の声でボヤキのような、そんな声が聞こえてきた。

“なんだってあんなに楽しそうなんですかねェ。まったく。腹立たしい”
“そもそもあの妖精はワタシとキュアビューティーとのお楽しみ‐ゲーム‐のときも邪魔してきて、一体なんなのでしょうか。”
“その上キュアビューティーとお揃いですか。いい気なもんですねェ”
“あぁ、腹立たしい。”
“ビューティーとお揃いぐらい、ワタシにだって簡単にできます。”
“まぁ、そのようなくだらないまね、ワタシはしませんけどね。”
“しかし、お揃い…”
“ワタシも結構な髪の量ありますし、出来るかもしれませんねェ。”
“決して。決してキュアビューティーとお揃いにしたいなどではありません。”
“ただ少しあの髪型をどのように保っているのかに興味があるだけなのです。”

レンズの霞が晴れ、やがて写るのは元の景色だけとなった。

「つまり、あれかぁ。」
「きっとお揃いが羨ましかったんだわさ。」
「にしてもあの野郎がなぁ…」
「まぁ、わからなくもないんだわさ。きっと似ているように思えてしまったんだわさ。」
「ああ?どこがだよ、全く似てねぇじゃねぇか。」
「何が見えたオニ〜?オレ様にも見せるオニ〜!!!」
「そうですねェ、お二人だけ楽しんじゃってずるいですよぉ〜。ワタシにも見せてくださぁ〜い☆」
「あぁ?ったくしゃあねぇなぁ。ほらよアカオーニ、ジョーカー…ジョーカー!?!?」
「偉大なぁ〜る3幹部の皆さんがなにやら楽しそ〜な遊びをしている気がしたので来てしまいましたァ〜☆」
「いや、だって髪型は…」
「髪型ぁ〜?なぁんのことです〜??」
「あ、いや、、」
「ところでみなさぁん、バッドエナジーの方は順調なんですよねぇ〜?こぉんなくだらないお遊びをしているくらいですし、ネェ?」

ジョーカーの顔が、不自然に歪む。常人ならば恐怖からトラウマになってしまうような、そんな歪な笑顔。

「あ、いや、あ〜…」
「ど〜ぉしたんですかぁ〜??」
「い、今から今日行く人を決めるところだったんだわさ!!ウルフルン、アカオーニ、相談に行くんだわさ!!」
「お、おぅ!」
「オニ!!」

3人が慌てて奥の間に駆けて行く。その背中を見つめながらジョーカーはふぅ、と短くため息を漏らした。

「まったく、ワタシが気づかないとでも思っていたんですかねぇ。」
そんなわけ無いでしょうに、と独りごちる。

「まぁ、最後以外は聞かせてあげたんだからしっかり働いて欲しいものですね。」
ピエーロ様にすらお話しすることのないであろうこの事実を知ることができたのですから、一生分の報酬を得たと思って頑張ってくださいよォ。



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