リンレン(相互記念)
2011/04/22 09:57

見上げれば青い空にピンク色の雲。そこから舞い降りる薄桃色の雪。
ひらひらと踊る様子はなかなかに趣を感じさせるものがある。

けど、今のボクはそれどころではない。
両手には焼きそば、綿あめ、玉こんにゃくにからあげ、フライドポテト、水風船、その他もろもろが入っている袋が持ちきれないほどあり、頭にはお面が3、4個。
正直、動きにくい。

「レーンー。早くしてよねー、もー。」

数メートル進んだ所にいるリンがそうやって急かすけど、そんなに言うなら空いている両手のどちらかで少しでも荷物を持ってもらいたい。
そんなこと言ったら後が怖いから言わないけど。

「あっ!ほら、りんご飴あるよ!!行こっ!!!」
「ちょ、待ってよぉ〜。リン歩くの速すぎ…」
「レンが遅いんでしょー?ほーら、早く早くー!」

そう言って駆け足で行くもんだから、ボクも少し早足になる。
転ばないでよ、と声を掛けたその時だった。

「きゃっ!!」
「リン!?」

言ったそばから倒れた彼女を見て駆け出し、周りで立ち止まる野次馬共を掻き分けながら近づいていく。

「ぃっ……たたたぁ…」
「リン、大丈夫?」
「えへへへ、転んじゃった。」
「えへへへ、じゃないよ!もう。…ケガとか無い?立てる??」
「んー……ちょっと足挫いちゃったかも。でもたぶん大丈夫!」

立ち上がってりんっりんっりんご飴〜なんて歌って歩き出すけど、挫いたほうはびっこをひいている。

「……まったく………」
「?どーしたの?レンー。」
「リン、ちょっとごめんね。」
「ん?…なっ!?」

大量の袋を腕に掛け、リンを抱き上げる。

「あっちに座れそうな所があったから、そこまで我慢してね。」
「ちょっと!!下ろしてよ!!自分で歩く!!!」
「ぅわっととと…暴れないでよー。落としちゃう。」
「え、なっ、やだ!落とさないでよ絶対!!」
「うん、だから暴れないで。」

わかった。という返事と共に大人しくなる。
リンを抱いたまましばらく歩く。
途中で重くない?と聞かれたけど、持たされた荷物のほうが重かった。って答えたら、バッカじゃないの。と軽く叩かれた。
そんなことをして進んで行けば、大きな桜の木の下に、2、3人座れるくらいの石がある場所に着いた。
石の上にリンを座らせて、ケガの様子を見る。

「ちょっと、擦れちゃったね。足首も腫れてきてる。」

膝には軽く擦りむいた痕があり、じわり、と血が滲んできている。
挫いたであろう箇所を見てみると、徐々にではあるが色合いが悪くなってきている。

「ハンカチ、濡らしてくるからここで待ってて。」
「……………一人ヤだ。」
「そんなこと言わないでよ。すぐに戻るから。」
「……じゃあ、1分で戻ってきて。」
「え、それは難しいかも…。まぁ、頑張ってみるね。」
「ん。いってらっしゃい。」
「いってきます。あ、荷物置いていくから。」
「わかったー。」

今来た道を戻りながら水道を探す。
リンが転んだ辺りに出たとき、屋台の裏側に水道が見えた。
ハンカチ二枚を濡らしてから、りんご飴を欲しがっていた事を思い出して屋台を見てみれば、運良く列が全く無かったから、飴を2つ買って急いでリンの元へと帰る。

「おっそい!!」
「ごめんごめん。はい、足だして。」
「ん。」

擦りむいた膝を軽く砂を拭き取る。もう1つのハンカチを腫れている部分に巻きつけて、リンの隣に座る。

「あーあ、つまんない。これじゃ屋台見れないじゃん。」
「そんなこと言わないでよ。これ以上悪くなったら大変じゃん。」
「ぶー。」
「あはは。…あ、そうだ。はい、りんご飴。」

ふてくされるリンにさっき買った飴を渡せば、一気に表情が明るくなる。

「!!!レン買ってきてくれたの!?」
「うん、食べたかったんでしょ?」
「うん!ありがとー!!」

そう言って、早速食べ始める。

「………………?どしたの?レン。」
「いやぁ、本当によく食べるなぁと思って。」
「悪いのー?」
「悪くないよ。花より団子って言葉はリンのためにあるようなもんだから。」
「なにそれー。レンひどーい。」
「あははは、ごめんごめん。」

ごろん、と仰向けになれば目前には桜の花。所々覗く青がその桃色をより鮮やかに際立たせている。

「キレイねー。」

いつの間にか同じ体勢になっていたリンが呟く。

「そうだね。」
「なんか…たまにはこういうお花見も良いね。」
「というか、花見って普通こういうのじゃ……」
「なんか言ったー?」
「え、いや、…なんでもないよっ。」
「ふーん…」
「………」
「……………」
「……ねぇ、リン。」
「なぁに?」
「花見、来れてよかったね。」
「……そうねー。ケガしちゃったけど。綺麗な桜見れたし。」
「うん…」
「また来年も来たいな。」
「そーだね。……うん、来年も来よう。」
「…絶対?」
「絶対。」
「……かならず?」
「必ず。」
「絶対の絶対の、ぜーったい?」
「絶対の絶対の……ってしつこいよ。」

アハハ、と2人同時に笑う。
合わせるように風が吹き抜けていった。

晴春桜花



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