襟を正してみたって世界はかわらずくだらないままごとを繰り返して動き続けているよ | ナノ




名前は恋愛系のドラマとかそういう類のものを好き好んで見たりしている。僕も一緒に付き合って見ることとかあるんだけど、まあそんなことは置いといて、その好き好んで見る恋愛ものの一番の見せ場であるキスシーンとかでは名前は必ず目を逸らしている。それはまるで、特に興味ないですよとかたまたま今は見てなかっただけですとでも言ってるかのようで、その場面になる途端にふいっと自然に顔を画面からそらすのだ。
今日の洗い物は僕がやっていて、名前はソファでくつろぎながら毎週恒例のドラマを見ていた。ドラマ終盤に入り主人公とヒロインのベッドシーンの時、今日の名前は下に落ちていた僕の読みかけの雑誌を拾いパラパラとめくり始めた。
あまりに脈絡の無い行動におかしくなってしまい、笑いを堪えながら泡を水で流す作業を進める。

おそらく名前は僕にこんなとこ見られているなんて思ってもないだろう。まだドラマのベッドシーンは続いていて、名前もチラリとも画面を見ずに名前にとっては読んでもつまらないような雑誌をただなんとなく見ていた。それは僕からしてみれば決められた動作をただ淡々とこなしているロボットである。

この不可解な行動は多分名前自信無意識にやっていることだと思う。別に名前が処女ではあるまいし、顔に出やすい名前のことだから本当に恥ずかしくてテレビから目を逸らしているということならもっと顔を赤らめて落ち着きがない様子をしているはずだ。僕にそういうことを求めている為にわざわざこんな遠回しなアピールをしているとも考えられない。散々こないだ僕に対してセックスやらセフレやら怒鳴り散らしたことだし、うん。

やっぱり考えられるのは、無意識っていうことになる。

「ねえ」
「んー?あっごめん食器拭くの手伝う?」
「もう終わったよ」

僕が声をかけると、対して目もくれてない雑誌から顔をあげ、ありがとお。と馬鹿っぽくお礼を言ったあとじゃあコーヒーでもいれるね。と僕と入れ替わるように台所に立った。そして、僕がちょうどソファに座る時にはドラマはCMに入っていた。

「テレビ見てないの?」
「今?ずっと見てるよ!蛍くんも一緒に見てたでしょ」
「いや、ベッドシーンの時はわざと目そらしてるように見えたからさぁ」
「は!?」

名前的にはちゃんとテレビを見ていたらしいが、僕が揚げ足を取るようにさっきの不可解な行動を口にすれば名前は顔を赤らめ、急に台所に隠れた。名前が変なところにぶつかったせいで鍋の蓋がガッシャン!と大きな音をたてて床に落ちた。うるさい。と叱れば、ごめんなさい…と台所から真っ赤な顔をひょっこり出して僕の事を見ていた。なにちょっとだけかわいい。

「いや、え、まさか中学生でもあるまいしドラマのお色気シーンなんかで恥ずかしがってるわけないでしょ!蛍くんが適当なこと言ってるだけでしょ!」
「いやいや、だって実際さっきまで僕の雑誌つまらなそうに読んでたし?しかもなんでそんなに赤くなってるのさ、少しは自覚があったかんじ?」
「いやいやいやいや!わざわざ口に出されるのは恥ずかしいでしょうがっ!ばかばかばか!」
「えー恥ずかしいんだ?」
からかうように追い打ちをかければとうるさい!と名前はまた台所に隠れて見えなくなった。

「名前の恥ずかしがってる顔見たいなぁ」
「こっちくんなぁ!悪趣味!外道!」
「なんであんなの恥ずかしがっちゃうわけ?」

だって別に名前ちゃん処女とかじゃないよね?と尋ねればさらに顔を髪から覗く耳がさらに真っ赤になった。戸惑ったように両手で顔を隠しながら「悪魔」と呟いた。ここで僕がからかうと当分口聞いてくれなくなるので、しゃがんで名前を抱き寄せてぽんぽんと撫でてあげる。そうすると名前安心したのか僕の耳元まで顔を近づけてボソボソと呟いた。

「蛍くんって、そういう…その」
「…うん」
「…そういうの、あんまり好きじゃ、ない?」
「……」
「だから、そういう…気持ちに…ならないようにっていうか、」
「…」
「別に毎回変な気分になっちゃうとかそんなんじゃないんだけど…癖付いたのかな…?」
「それさ僕としたいってこと?」

少し顔を見てからかってやろうと思ったら首に腕を回されて、そうなのかもしれない…ごめんと名前は力を込めながら言った。僕に気持ちを悟られないように無意識にあんな不可解な行動とっていた。ということであれば、名前にして対した演技力である。あ、演じてはないか、無意識だから。じゃあやっぱすごく馬鹿。

「別に謝ることじゃなくない?」
「え?」
「何?」
「え、うーん、でもやりたくないと言ったらやりたくないかも」
「なにそれ?僕とは無理ってこと?」
「う、違う、ちょっと恥ずかしいかな…て」
「ふーん」

確かにこうやって迫ってみるとキスすら結構久しぶりな感じがした。名前が変な風に緊張してるから柄にもなく僕まで緊張しているのがわかった。俯いていて目を閉じている名前のでこにキスしてやれば、そんなことでいちいち嬉しそうな目で見てくるから本当に犬コロみたい。

「僕は動物的な気持ちで名前と付き合ってるわけじゃない」
「え?」
「だから、そういうことができるのは名前しか無理。気持ち悪くて」
「あ、う、うん…」
「ちょっと落ち込まないでよ、わかってる?僕は名字名前しか好きじゃないしセックスもできない。一緒に暮らしてるのにこんなこともわからないの?」
「も、もういいから!ストップ!ストップー!」
「別に名前がいいなら毎晩抱いてやってもいいよ」
「ううう、もういいからこの話終わりぃいっ!!」


20130402
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